田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ジャンキーのいきつくさきは? /三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-08 14:54:24 | Weblog
第十九章 麻薬汚染

6

夜気にみみをすます。
バイ人のものと思われる靴音が伝わってくる。
サル彦ジィにシコマレタ。
日光忍者の聴覚だ。
微妙な音のちがいも聴きもらさない。
 
もう追いかけてくるものはいない。
安堵の胸をなでおろしている。
歩きだしている。

キリコは足音も立てずに走りつづけた。
商売がうまくいかなかった。
また、街頭で客を探している。
コリナイヤツ。
道行く人にそれとなく声をかけている。
客を物色するバイ人。
ひとからひとへと移動をはじめた。

そこに追尾してきたキリコがいた。
バイ人はギョッとする。
凍てつく。

まちがいない。
追いかけてきた男だ。
まちがいなく人間ではあるが。
化け物のような男だ。
「どうしてバイ人なんかになったのよ」
「金のためだろうが」
「麻薬やったために、破滅するひのとかんがえたことないの」
キリコの脳裡には唄子の悲痛な顔がうかんでいた。
「金になれば、なんでもするの」
「ああするね。ひとの生き血だって吸う」
「吸血鬼みたいね」
「おれが、それだ」
低俗な痩せた小男がにわかに膨らんだ。
なんて、軽薄なことばだ。金になればなんでもする。
もうこの世に深みなぞない。
人生の意義なんてかんがえるのは。
ウザイ。
人生に意味などもとめない。
未来は真っ暗だ。
いまだけ楽しければ。
それでいい。
そして快楽だけを。
欲しがる。

待っているものは破滅。
酒の谷唄子のように。


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大麻は麻薬の入り口? /三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-06-08 07:50:51 | Weblog
第十九章 麻薬汚染

5

美智子の警備に不安を抱く必要はない。
バンパイァバスターズがついている。
その手があったかと、キリコの配慮に感心する。

どこをどう走ったのか?
いくつもの路地から路地へ。
キリコと走りつづけた。
かすかなバイ人のにおいを追いかけた。
靴底がなにかを踏んだ。
爪先がなにかにつきあたった。
ふいに血のにおいがした。
追いかけていたバイ人のにおいではない。
バイ人のにおいを追うことに集中していた。
いまそこにある血臭に気づかなかった。

「ちがう。この男ではない」
「バイ人を追いかけていたひとよ」
「わたしの仲間ではない。刑事が地まわりよ」
キリコが走りながら救急車を呼んだ。

「麻薬との戦いには、終りはないの――。
闇との闘いに終わりがないように。
だからわたし、麻薬ガールズになる。
兄弟みんないっしょに同じ仕事、同じ場所で働けるから」
「麻薬はぼくらにとって、
いちばんの脅威だ。最近では、大麻を吸うものが増えている。
なんとなくファッション感覚ではじめた大麻が、
ひとを破滅においやる。それでもやめられない。麻薬は悪魔の産物だ」
「隼人。だれかいる」
「こんばんは」
路地の曲がり角。
街灯のかげにひとがいた。
「あんたね。男を襲ったのは。血のにおいがする」
「キリコ先に行け」






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