ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

日本人と中国人 - 5 ( 孔子第75代目の直系子孫 )

2020-02-14 18:03:39 | 徒然の記
 3年前に、孔子第75代目の直系子孫である、孔健(コン・ジェン)氏の著書『中国人からみた日本人』を、読みました。平成4年の出版でしたから、汪洋氏の著書の丁度10年前の本です。
 
 怒りのため、頭から湯気を出しながら読み、ブログを綴った記憶がありましたので、その一部を転記いたします。汪洋氏との違いが、一目瞭然です。
 
 「自分のことは二の次で、所属する組織と集団の利益を優先する日本人は、」「3人集まれば、帰属する組織としての会社を作る。」「日本人は、集団が決定したことには絶対服従し、異議を出さない。」「この意識が、経済大国日本を作ったのだろうから、」「つぶさに分析できれば、我々にとっても大いに有益なことになるのだろう。」「しかし、果たしてニホンムラ意識で、」「人間としての生活が維持していけるのか、」「私は大いに興味がある。」
 
 山東大学の日本語学科で学び、来日してからは上智大学大学院に在学していたというのに、いったい氏は日本の何を勉強していたのでしょう。来日当時27才だった氏には、日本が見えなかったのでしょうか。10年経てば、同じ留学生でも日本の見方が変わるのか、それとも汪洋氏が特別の人間なのか、今でも私には分かりません。
 
 孔子第75代目の直系子孫と言えば、中国の名家でしょうし、博学のはずですが、こんな偏見しか述べません。
 
 「日本では昔から、官尊民卑の気風があり、」「強者や上司に対しては敬意を表するが、」「庶民や弱者の悲しみと、それゆえの非合理さを、理解できない。」「小役人思考の日本人は、一般に官僚的な気風が強い。」「自分よりレベルが高く、パワフルなものには弱いが、」「自分よりレベルの低い、弱い立場にある人間には、」「踏ん反り返る癖がある。」「これは、農耕民族の気質とも関係があるのだろう。」
 
 自分自身のことを言っているのではないかと、問い返したくなりますが、これが日本に留学経験のある者の意見かと、驚いてしまいます。あとで聞くところによりますと、中国には、孔子の直系と称する人間があちこちにいるそうですから、孔健(コン・ジェン)氏は、由緒正しい子孫ではないのかもしれません。
 
 「戦時中日本人は、" 鬼畜米英 " の指導を受けていた。 」「しかし原爆投下後、アメリカは瞬く間に、日本人の尊敬の対象となった。」「今もなおアメリカは、日本人の最も親密な友人である。」「政府の方針は180度大転換し、日本国民も、憎んでいた敵国のアメリカを、」「手本に値する偉大な兄貴だと見直した。」
 
 しかし言っていることは、まんざら嘘ではありません。戦前戦後の日本を、悪意をもって語れば、こう言う言い方ができないではありません。いかがわしい孔子の子孫だとしても、全くの無知ではなさそうです。
 
 「一見すると、日本人は無理に頭を下げ、」「腹の中で、何か仕返しをしようとしているように見える。」「しかし事実はそうでない。」「日本人には、絶対的信念がなく、」「現実に適応し、権威に服従しているのだ。」「昔は中国を尊敬していたのに、今はそうでない。」「清朝が、西方諸国から侮辱された史実を見て、」「日本人の眼中には、強大な欧米諸国の科学技術や芸術しか見えなくなった。」
 
 「つまり日本人は単純で、強い者の意見に従順で、」「知らず知らずのうちに盲従してしまう。」「日本人が盲従する権威は、だいたい相手の地位、金銭、勢力、才能などから来る。」

 よくもここまで、言いたい放題を抜かしたなと、ついつい反応する私も刺々しくなります。息子たちも、訪問される方々も、次の王氏の言葉と比較しては如何でしょう。
 
 「中国の鎖国時代を過ごした、僕のような人間は、」「映画を通して、初めて、今の日本で暮らす、普通の人々の姿を目にし、」「初めて、日本の文化を垣間見たのである。」「侵略と軍人の色で塗りつぶされた、日本人のイメージを、」「根底から塗り替えられ、大変な衝撃を受けたのである。」
 
 「同じ時期に入ったアメリカ映画と比べても、日本映画の方が、」「異質なものをほとんど感じないほど、馴染みやすく、」「親しみやすかったのである。」「後に僕は、日本で、多くの優れた日本映画を見ることができた。」「感謝の一語に尽きる。」「と言うのは、なかなか本音を出さない、日本人の現実の生活では、」「知ることのできない日本人の気持ちを、映画は僕に教えてくれたからだ。」
 
 どう言うことを教わったのか、氏は具体的に語りませんが、孔氏のような偏見ではないだろうと思わされる、不思議な安心感があります。こうして私が、氏を信頼するのは、氏が愛国者だと分かっているからです。日本を理解し、好意を抱いていても、氏は確固とした祖国への愛を持っています。たとえ大嫌いな中国政府と、政府に盲従する中国人だとしても、もし今後、彼らと付き合うことがあったら、汪洋氏のように接しようと思います。確固とした愛国心を持ちながら、中国人を理解する・・と言うことです。
 
 次回は、慎重な氏が、珍しく政治を語った文章を紹介いたします。できれば、それで書評が終わりになればと、考えています。
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日本人と中国人 - 4 ( カラオケ文化論 )

2020-02-14 13:14:40 | 徒然の記

 皇統に関するブログに一区切りをつけましたので、再び汪洋氏に戻ります。

 「日本人はあまり自己主張をしないと、よく言われる。」「僕に言わせれば、それは普通の社会生活では、」「あまり主張できないからだ。」「大半の日本人は、シッカリした自己を持っていることは間違いない。」「言葉で率直な表現をすると嫌われるから、形を変えて表現している。」

 ここでもまた氏は、予想もしない切り口で説明を始めます。

 「カラオケが、日本が発祥地であることに、すごく納得がいく。」「僕に言わせれば、これも自己主張の一つの形態である。」「確かにいい歌を聞いているうちに、歌いたくなったり、」「思わず口ずさんだりする。」「いわば、ごく自然の生理的反応であろう。」「しかしそれだけだったら、何も音響設備やマイクは、要らないはずだ。」

 何を言い出すのだろうと、思わず引き込まれてしまう書き出しです。

 「目を瞑ってしみじみと歌う人もいれば、マイクを握ると同時に、踊り出す人もいる。」「こっそりと練習してきて、プロ同然に歌い、」「周囲をあっと言わせる人もいるかと思えば、」「開き直ったように、下手なまま、自由自在に歌う人もいる。」

 よく観察しているなあと、感心したくなる叙述です。会社勤めをしていた頃、みんなでカラオケに行った時の様子が、まざまざと思い出されました。

 「それぞれ、自分の思いや感じ方を唄に込めて、」「あるいは生活態度を丸出しにして、歌っている。」「普段できないが故に、胸に溜まった自己を、」「形を変えて主張しているわけだ。」「カラオケのできるところは、間違いなく日本人が、」「自己表現を実現する場所であり、」「自己主張をする場所なのだ。」

 そんな大袈裟な場所であるとは思いませんが、まんざら当たっていない訳でもありません。私は歌が下手なので自分では歌わず、もっぱら聞き役でしたから、氏の説明にうなづかされます。けれども面白いのは、次の文章です。信じられない、中国人の一面を教えられました。

 「しかし中国でも、カラオケは大繁盛ではないか。」「事実である。」「あれほど昼夜と言わず、自己主張を続けている中国人が、」「なんでまたカラオケを ?  という方がいるかもしれない。」「人によっては色々な説があるが、僕はあえて、」「それは、中国では、なかなか自己主張できないものが、」「二つあるからだ、と言いたい。」「一つは、愛情。もう一つは、政治。」

 政治は納得しますが、愛情もそうだとは、思ってもいないことでした。あの厚顔な彼らが・・・と、今でも信じられません。

 「この二つを主張するには、酒の力だけではどうにもならない。」「それ以上の、強力な力を借りる必要があるからだ。」「それが、カラオケだった。」「日本から来たカラオケという、強力な武器を手にすると、」「水を得た魚のように、中国人は、夜毎、」「愛情や、政治の主張をし出したのである。」

 「愛情が主張できないって ?  冗談じゃない。」「中国人は、公園のベンチでさえ、堂々と主張しているではないか、」「と、そんな反論が飛んできそうだ。」「でも、うんざりするほど自己主張している人間が、」「愛しているという、たった一言、」「欧米では、挨拶のように使われているこのたった一言を、」「口にできる中国人が、どれほどいるだろうか。」

 しかし氏は政治について語らず、ここで突然、例の比較表を持ち出してきます。面白いので転記します。

《  自己主張の弱い人に対する、「中国的評価」と「日本的評価」の比較》

 1.  自己主張をしようとしない人に対して

  •  中国的評価・・お人好しだ

  •  日本的評価・・控えめで、感じがいい

 2. 自己主張を、遠回りにする人に対して

  •  中国的評価・・周りくどくて、こちらまでがこんがらがる

  •  日本的評価・・柔らかくて、受け入れやすい

 3. 自己主張が、論理的な人に対して

  •  中国的評価・・筋が通って、分かりやすい

  •  日本的評価・・理屈っぽくて、堅苦しい

 4. 自己主張を、曖昧な言葉で言う人に対して

  •  中国的評価・・思考の明晰さが、足りない

  •  日本的評価・・気持ちが伝わり、よくわかる

 5. 自己主張を、以心伝心で伝えようとする人に対して

  •  中国的評価・・ついていけないから、困る

  •  日本的評価・・日本的で、素晴らしい

 6. 自己主張を、低姿勢で話す人に対して

  •  中国的評価・・自信のない、表れだ

  •  日本的評価・・謙虚で、上品である

 次回は、同じ中国人留学生でも、汪洋氏が他人とどのように違うかにつき、過去のブログとの比較で述べようと思います。

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