ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

ロシア転覆、中国破綻、隆盛日本 - 2

2020-02-01 19:12:01 | 徒然の記

 200ページに、「ドイツと日本の違い」というタイトルがあります。これまで色々な本を読みましたが、氏の意見はユニークで、興味深く感じました。一方でそのユニークさが、単純すぎ、返って軽薄さにつながっている感を受けました。

 「第二次世界大戦後、ドイツは、フランス、イギリスなどと、」「関係は良好です。」「それに対して日本は、隣国の中国や韓国との関係は、」「ドイツとフランスのように、良好とは言えません。」「いまだに日本と中国、韓国の間で、」「戦後賠償や歴史認識、従軍慰安婦の問題がくすぶっています。」

 氏の本が出版される前年の平成26年に、朝日新聞が、ペテン師吉田清治の記事は誤報であったと訂正し、大騒ぎとなり、社長が責任を取って辞めました。「従軍慰安婦」という言葉も、誤報だと明らかになり、単に「慰安婦」と変わりました。保守を任ずる評論家なら、印刷前の原稿を修正するとか、間に合わなければ、正誤表を入れるべきかすべきでしょうに、氏は、そのまま従軍慰安婦と使っています。本題とは関係ありませんが、大切なことを、黙ってやり過ごす杜撰さが、私は気にかかりました。

 「日本とドイツの違いは、どこにあるのでしょうか。」「その大きな違いは、周りの国が、近代国家であるか否かです。」

 私のような無知な庶民なら、単純明快な意見に惹かされたと思いますが、日本で知識人と呼ばれる人たちが、果たして何人、氏の意見に同意したでのしょう。

 「近代国家というのは、国際条約をきちんと守る国家を指します。」「ドイツの周りの国家は、明らかに近代国家です。」「フランスもイギリスも、一度結んだ国際条約は、」「どんなに状況が変化しようとも、守り抜くのです。」「時が経ち、結んだ条約に不都合が生じた場合、」「必ず相手国との間で、協議・承認の上で、」「変更手続きをします。」

 「しかし中国も韓国も、一方的に国際条約を無視するのです。」

 こうして氏は、中国と韓国の非近代性を説明します。氏の主張を、そのまま紹介します。

 「中国と日本は、国交条約を結び、戦後賠償につき、」「中国は放棄したのにもかかわらず、」「最近、商船三井が戦後賠償を求められ、」「40億円も支払ったことがありました。」「日中平和条約は、毛沢東が決定しサインをしたものです。」「この条約を無視するということは、」「今の中国共産党は、毛沢東を無視したと同じことになります。「こんな理不尽なことは、ありません。」

 「そして、韓国も然りです。」「日韓平和条約を、韓国と締結した時、」「日本は韓国に5億ドルを支払い、」「これで戦後賠償は、両国間で解決したのです。」「当時の日本の外貨準備高が 約18億ドルでしたから、」「5億ドルというのは、非常に重い負担でした。」

 「しかも日本軍は、慰安婦を強制連行していません。」「20万人も軍が連行したと、騒いでいますが、そのような事実はありません。」「もっと言えば、彼女たちの給与は、」「日本陸軍の中将より高く、いい暮らしをしていました。」「それをいまだに、従軍慰安婦に謝罪しろ、賠償しろというのは、」「余りに国際ルールを無視していると、言わざるを得ません。」「そんな国家は、ヨーロッパにはありません。」

 氏の意見のほとんどは、私が日頃述べている内容と重なります。それなのにどこかしっくりとせず、氏の説明に納得できません。箇条書きにしますと、次の通りです。

 1.  ドイツ、フランス、イギリスを、近代国家だという話には、誇張がある。彼らは、ヨーロッパ内では、互いのルールを守ったが、アジアやアフリカや中近東において、他民族との約束を守っていない。まずもって、対等の条約を結ばない。

 2.  中国も韓国も、ヨーロッパ諸国との条約は遵守している。その点において、国際ルール無視の国という断定は、当らない。彼らが無視しているのは、日本との条約だけだ。

 となれば、1.も2.も、氏の意見では説明がつかなくなります。ヨーロッパが近代国家だと断定する前に、彼らが白人優位の思想を持ち、アジア・アフリカ等の有色人種を蔑視し、侵略・支配した歴史を語らなくては、正しい説明になりません。同様に、中国と朝鮮については、中華思想と儒教の差別思想を抜きにして、日本蔑視の言動が解明できません。

 著作の最初からでなく、最後の200ページから書評を始めたのは、息子たちに分かりやすくするためです。経済指標やグラフや数字が並びますと、説明の巧みさに惑わされますが、数字に無関係な事実の話になりますと、矛盾が見えてきます。嘘はなく、ほとんどの話が事実ですが、説明の一部にある、誇張と単純化、あるいは、省略している説明が問題なのです。

 「ドイツは、隣国の交戦国に対して、」「一マルク、1ユーロも、賠償を支払っていません。」「個人に対しては、補償をしました。」「ホローコストでユダヤ人が虐殺され、遺族に対しては補償しています。」「フランスやイギリス、ポーランド、チェコスロバキアに対しても、」「賠償は、一切払っていません。」「ドイツ人は、ユダヤ人という民族の撲滅をやったわけですが、」「日本は、民族の撲滅をやったわけではありません。」「そこが、日本とドイツの大きな違いです。」

 日本は、フィリッピン、インドネシア、マレーシアに戦後賠償金を支払い、韓国には5億ドルという大金を払っています。中国には、賠償と言う形でなく、円借款、無償援助と言う形で、何兆円もの資金提供をしてきました。ですから、氏の説明通り、「これが日本とドイツの大きな違い」なのです。今では多くの日本人が、この話を知っていますし、中国人や韓国人も、知っているはずです。

 「それなのに、令和の時代になっても、中国や韓国は、相変わらず日本を攻撃する。」・・・問題はここにあります。氏の説明は事実なのに、なぜ国内にも、国際社会にも浸透していかないのか。これが問題なのです。

 どこまで、問題の核心に迫れるのか。次回は、もう少し丁寧に、氏の叙述を追ってみたいと思います。

コメント
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