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古い本 その21 Heissig 1969

2020年08月25日 | 化石

 次の本はK. Heissig の「Die Rhinocerotidae (Mammalia) aus der oberoligozänen Spaltenfüllung von Gaimersheim bei Ingolstadt in Bayern und ihre phylogenetische Stellung」(バイエルンのインゴルシュタット市近郊のガイメルスハイムの漸新世後期の裂罅充填からのサイ科(哺乳類)とその系統学的位置)というもの。縦31センチ幅22センチ。Bayerische Akademie der Wissenschaften (バイエルン科学アカデミー)の論文集の数学・自然科学編の別刷である。

19-1 Heissig 1969 表紙

 古本屋さんで購入したものだが、いつごろだったのか、またいくらだったのか記録も書き込みもない。それどころか、アンカット製本で、小口はカットしてないから私も読んでいないことがわかる。漸新世後期ということとサイの仲間ということで買ったのだろうが、漸新世の化石が裂罅充填堆積物から出てくるという事からして、日本では考えられないから、この本が役に立つ可能性は少ない。51年前の論文。
 「Gaimersheim bei Ingolstadt in Bayern」という町は、ミュンヘンの北方80kmほどのところにある。盆地の中の平原だが北部に山地がある。ジュラ紀の石灰岩が分布しているから、その中の洞窟堆積物なのだろう。本文が133ページ、図版が5枚の大作。5つの章からなる。A 一般論 B サイの歯列の形態的な特徴とその意味 C分類 D 評価 E まとめ。
 標本は白ジュラ(始祖鳥のゾルンホーフェン石板岩と同じ。フランス産ジュラ・ワインの白のことではない。)と呼ばれるドロマイト層の裂罅の中から発見されていて、非常に短い地質学的時間を表しているという。その年代は漸新世後期に当たるChattian(2780万年前から2300万年前)であるという。
 Cの分類的な記述では、Caenopusの仲間のRonzotherium filholi 他。新亜種Ronzotherium filholi elongatumを提唱している。また、Aceratherium gaimersheimensis n. sp.を扱っている。文中に多くの線画が入っている。

19-2  Heissig 1969 Abb. 18 Ronzotherium filholi elongatum 上顎前臼歯のスケッチ

19-3  Heissig 1969 Abb. 26 Ronzotherium filholi filholfi 下顎のスケッチ

 歯のスケッチは少々拡大しすぎたために線が少ないような印象。顎の方は今ひとつのできばえ。
 Ronzotherium は1854年に記載された属で。「Ronzon」はベルギーの地名。ヨーロッパで3種がイギリス・フランスなどから報告されている他、中国からも2種の記録がある。時代は始新世から漸新世。そのうち、R. filholi はドイツ・スイス・チェコから発見されている。
 図版はコロタイプ印刷の写真で、きれいなのだが、配列をもう少し整理して欲しかった。

19-4  Heissig 1969 Tafel 5. Aceratherium (Mesaceratherium) gaimersheimense
上は上顎臼歯P2-M3. 右端は下顎歯列(一部)など。

 上の写真は一枚の図版の上半分ぐらいを示したが、歯列が縦横になっている。
 Kurt Heissig (1941年生まれ)はドイツの古生物学者。ミュンヘンの Ludwig-Maximilians-Universität で第三紀奇蹄類の研究を行った。

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