■1月20日、「平均律第1巻」1番の新しいアナリーゼ講座を開催■
~ 特別講座≪Bachが「序文」で何を言いたかったのか≫~
2017.10.6 中村洋子
★9月16日の「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」
最終講座から、3週間近くたちました。
当日、東京に台風が接近していましたが、飛行機や新幹線で、遠くから
お出で頂きました方も多く、大変うれしく思っております。
★最終講座は4時間半と長時間でした。
Bachに対する尊敬と愛情を共通項とする、親密な講座となりました。
それまでの講座、即ち、変奏曲3曲ずつのアナリーゼに加え、
「ゴルトベルク変奏曲」の変奏技法は、実は、「平均律第1巻」と、
それを凝縮した「インヴェンションとシンフォニア」から、
一本の線でつながっている、ということをお話しました。
★「Goldberg-Variationen」アナリーゼ講座は、
昨年2016年4月から10回にわたり、全30変奏曲を勉強しましたが、
その間、私は、Bärenrieterベーレンライターから出版されています
「平均律第1巻」楽譜に添付する「解説書」を、執筆しておりました。
★特に、Bachが自ら書き記した「序文」について、Bachがそこで
何を言いたかったかを、解明し得たと思っております。
★その「序文」は、謎解きのような文章で、そのまま訳しただけでは、
Bachが主張したかったことが、直接伝わってきません。
核となる論点は、≪「ド レ ミ」の長3度≫、≪「レ ミ ファ」の短3度≫
という、Bachが畳み掛けるように記している用語を、
どう解釈するかに尽きます。
★それにつきましては、近く刊行されます
≪日本語解説付き・Bärenreiter「平均律第1巻」≫楽譜に添付の
≪解説書≫を、是非お読みください。
★「ゴルトベルク変奏曲」が「平均律」、 「インヴェンション」と、
一本の線でつながっている、と申しましたが、その理由は、
「ゴルトベルク変奏曲」を、一言で表現しますと、
≪「ソ ラ シ」の長3度≫である、と言えるからです。
★≪「ド レ ミ」の長3度≫、≪「レ ミ ファ」の短3度≫が
指し示している「平均律第1巻」1~6番 Prelude & Fugaの
延長線上が、
「ゴルトベルク変奏曲」の主題Ariaの冒頭≪「ソ ラ シ」の長3度≫
だからなのです。
★このため、本来は「平均律第1巻」を皆さまにご説明した後、
「ゴルトベルク変奏曲」の講座を開催するという
順番であったかもしれません。
しかし、平均律第1巻の完成後に、Bachが次に書こうとしていた
「ゴルトベルク変奏曲」を、先に学ぶことにより、逆に、
平均律第1巻の実像が、明確に眼前に迫ってきた、
とも言えましょう。
★皆さまのおかげで、「ゴルトベルク変奏曲」講座は、好評のうちに
終えることができました。
主催者のアカデミアミュージック様から、さらに講座を継続して欲しい、
という要望を頂きました。
★私は過去に、東京、横浜で「平均律第1巻」の全曲アナリーゼ講座を
開きました。
東京では、まずBachの自筆譜がこんなにも素晴らしいものである、
その自筆譜を勉強しさえすれば、Bachの音楽の真髄に到達しうる
という私自身の発見と感動を、お伝えしました。
★横浜では、天才Chopinショパンが、Bachの平均律をどう解釈し、
自分の作品に投影していったかを、詳しくお話いたしました。
★ここでもう一度、今度は
1)Bachの「序文」で、 Bachが主張したかったこと、
2)平均律曲集の構造とは何か、
3)平均律を演奏する際や、鑑賞する際、
「序文」でBachが言いたかったことを、どう咀嚼するか・・・
などを探求する講座を、開くことにしました。
★まず、平均律第1巻の核心となる「第1~第6番」を、
6回に分けて勉強します。
第1回は、2017年1月20日(土)午後2時~6時。
神田のエッサム本社ビル「こだまホール」です。
★第1回では、9月の「ゴルトベルク変奏曲」最終講座のように、
「第1番 Prelude & Fuga」を和声や対位法の観点から、
どなたでもお分かりになるよう説明し、その後、特別講座として、
≪ Bachは「序文」で何を言いたかったか≫を、詳しく解説します。
★私の近日刊行されます平均律1巻の「解説書」の中で、
曲の構造について、特に詳しく書きましたのは、
「第7番 変ホ長調 Es-Dur」です。
★ Bachが「序文」で、鋭く光りを当てている曲は、
「第1~6番」ですが、その6曲1セットが終わった次の「第7番」、
これをどのように開始し、第7番以降の扉を開いていくか・・・
という視点から見ますと、非常に重要な曲といえます。
★この「第7番」のプレリュードは、何故か、
≪長大な二重フーガ≫となっています。
これは、「ゴルトベルク変奏曲」の第10番Fugettaの発想と、
同じなのです。
★Bachがなぜ、そのような変則的な構造にしたのかを
理解できますと、
Bachが平均律1番全24曲や、
「ゴルトベルク変奏曲」全30曲とAriaを、
どのような大きなアウトラインで描いたか、
それがよく分かってきます。
★平均律第1巻「第7番」を深く理解することが出来ますと、
逆に、第1~6番までが、非常に弾きやすくなる、
鑑賞の際、どこをどう聴くべきかが分かり、
その演奏家の Bachへの理解度を判別する尺度とも
なるのです。
★私の平均律「解説書」刊行の記念講座として、
KAWAI 名古屋「平均律第1巻」アナリーゼ講座で、
「第7番」を取り上げます。
日時 : 2017年 10月 25日(水) 10:00 ~ 12:30
会場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」
http://shop.kawai.jp/nagoya/lecture/nakamura.html
http://shop.kawai.jp/nagoya/lecture/pdf/lecture20171025_nakamura.pdf
★9月の「ゴルトベルク変奏曲」最終講座では、この曲が後世の作曲家に
与えた影響として、 Maurice Ravel モーリス・ラヴェル(1875-1937) の
「Ma Mère l'Oye マ・メール・ロワ」について、
実際にピアノで音を出しながら、ご説明しました。
★作曲家の直観ですが、
Ravelが「Ma Mère l'Oye マ・メール・ロワ」を作曲した際、
「ゴルトベルク変奏曲」が念頭にあったのであろうと、
思います。
★「Ma Mère l'Oye マ・メール・ロワ」は、
やはり、夜の幻想の中の音楽である、と言えましょう。
「ゴルトベルク変奏曲」は、巷間言われるように、
貴族の不眠を癒すためは、後世の推測でしかないでしょう。
★この28、29、30変奏曲を、言葉で表現しますと、
28、29は超新星がスパークしているような猛烈なエネルギー、
30変奏曲の夜明けを思わせるような、懐かしく、
穏やかなクォドリベットに収斂していく様は、
「Ma Mère l'Oye マ・メール・ロワ」最終曲の
「妖精の庭」のイメージと、似ています。
★また、「Ma Mère l'Oye マ・メール・ロワ」第1曲と、
「ゴルトベルク変奏曲」の主題Ariaが、
舞曲としての共通点をもつことは、言うまでもないでしょう。
★普通では、お気づきになることは難しいでしょうが、
Ravelも"地下水脈"で、 Bachという"小川"に
つながっている、ということができます。
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