■「エリーゼのために」 の7小節目 「 ミ ド シ」は誤り、「レ ド シ」 が正しい■
~KAWAI名古屋 「第 7回 Invention アナリーゼ講座 」のご案内~
2012,2,26 中村洋子 Yoko Nakamura
★2月29日 ( 水 ) は、KAWAI名古屋での、
「 第 7回 Invention インヴェンション・アナリーゼ講座 」 です。
http://shop.kawai.co.jp/nagoya/lecture/nakamura.html
★今回は、表参道講座で、大変に好評でした、
Johann Sebastian Bach バッハ ( 1685~1750 ) と、
Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827) の
「 Für Elise エリーゼのために 」 a-Moll WoO 59 との関係も、
お話する予定です。
「 Für Elise 」 については、当ブログで、既に2回ほど書いております。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20110918
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20110927
★先日、次のようなご質問をいただきました。
≪ 「 エリーゼのために 」 の 7小節目上声 16分休符の後は、
「 e1 」 か、 「 d1 」 なのか、どちらでしょうか? ≫
現在の日本では、 「 e1 」 の 「 ミ ド シ 」 が多いようです。
★私は、 Beethoven の自筆譜ファクシミリ
Zweiseitiger Entwurf Beethovens ( Beethoven - Archiv , Bonn )、
( これは 4 page中、 2 pageしか残っていませんが ・・・) と、
それを、VERLAG BEETHOVEN-HAUS BONN が、実用譜とした版、
さらに、G.Henle Verlag の楽譜を、いつも見ておりますので、
「 e1 」 がいまだに、広まっていることには、驚いております。
★正しいのは 「 d1 」 ですが、それが、 「 e1 」 となっているのは、
日本の大手出版社の、最もよく売れているピアノピースに、
「 e1 」 と、印刷されているからです。
この情報時代に、このようなミスが大手を振って、
いまだに、まかり通っていることの不思議さに驚きます。
日本で出版されている楽譜については、このように、
ミスが散見されることがあり、すべてを信用することは、
危険です ( 海外の楽譜も、大同小異ではありますが )。
★このミスが、どうして起きたのかについては、
アナリーゼ講座で、解説いたします。
「 e1 」 としたほうが、常識的な発想では、一見小奇麗なのです。
「 d1 」 にしますと、より深い感情を表現できます。
しかし、演奏は格段に難しくなるのです。
★皆さまも、 「 エリーゼのために 」 の楽譜をお持ちでしたら、
是非、お確かめください。
もし 「 誤った e1 」 が、採用されていましたら、その楽譜に限らず、
その楽譜のシリーズの、他の作曲家の作品についても、
盲信はしない方がいいと、思います。
★日本の大手出版社の、この誤ったピアノピースが、
最もよく売れているのは、他の楽譜と比べ、
数百円安いということが、主な理由のようです。
★安価さゆえに、そのピアノピースを選ぶことは、
大作曲家が、その曲で意図した “ 宝物 ” に、触れることなく、
終わってしまうことに、なります。
私は、それがとても、残念であり、
“ もったいない ” ことであると、思います。
★さらに、 74小節目の右手 3拍目の和音も、
「 d1 e1 gis1 」 が正しく、 「 d1 f1 gis1 」 は、間違いです。
1拍目の和音は、 「 d1 f1 gis1 」 ですが、
3拍目の和音は、真ん中の音が 「 e1 」 となります。
★すなわち、1拍目は、左手バスの 「 H音 」 を含めますと、
「 H1 d1 f1 gis1 」 の減七の和音、
3拍目は 「 H d1 e1 gis1 」 の属七の和音となり、
和音の種類が、異なるのです。
★3拍目を、1拍目と同じ 「 d1 f1 gis1 」 にしますと、
同じ減七の和音が、二度続くことになります。
明らかに、Beethoven ベートーヴェンの自筆譜と、
齟齬が生じます。
★このような、どなたでもご存じの名曲でも、
信頼できない楽譜が、横行しているのです。
※copyright © Yoko Nakamura
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