のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

食卓から地球を冷そう(のらやま通信232/1403)

2016年04月28日 | 農のあれこれ


植物は空気中のCO2を吸収して育ちます。しかし、その木を燃やすと、木に吸収されたCO2が再び空気中に放出されます。また、そのまま地中に埋めても微生物に分解されて、CO2に戻ってしまいます。そこで、木を炭にして炭素を固定します。炭は地中に埋めても分解されず、CO2に戻りません。つまりCO2が排出されません。炭を埋めた畑で栽培された野菜。それが地球温暖化の原因とされる空気中の二酸化炭素を削減し、地球を冷すことが期待されるクールベジタブル、つまり『クルベジ』です。
京都に出かけるついでがあったものですから、こんなクルベジの社会実験をすでに始めているお隣の亀岡に立ち寄ってみました。
亀岡では放置されて困っている竹林を地域の未利用バイオマスとしてとらえ、バイオマスの回収→炭化→たい肥との混合→農地施用カーボンクレジット 取引→クルベジ® 販売という流れをつくっています。竹の伐採、炭化は地元の民間事業者に任せ、市農業公社が竹炭と混合した堆肥を製造し、炭の投入実績を管理するため散布まで行います。協賛企業5社からは栽培地看板や商品ラベル等についてクレジット取り引きしています。
 
販売は地元のスーパーマーケットで扱ってもらっています。店の入り口の正面に「クルベジ」コーナーが置かれ、5分ほど観察していたのですが、その間でも何組かのお客さんが足を止め品定めをしていました。残念ながら購入した場面には立ち合いませんでしたが、マスコミで取り上げられ、小売店の努力や広報等によりその存在はある程度は認知されているようでした。ほかのノーブランドの野菜の価格と比較しても、特に高いというわけでもないようです。もしかすると、ほかの野菜コーナーと離れた場所の特設コーナーであることが、かえってほかの野菜と比較できずに、購入を躊躇してしまっているのではないかという印象も持ちました。
 
JR亀岡駅から徒歩で10分ほどのところにはクルベジ農法による市民農園が開設され、地元の農業者による農業体験塾のようなものも行われているようです。農作業にはまだ早い時期でしたから露地畑はまだ休んでいましたが、ビニールハウスの前には竹炭の入っているであろうローンバッグが置かれていました。
亀岡の事例は、大学研究機関と行政だけでなく、地元事業者・農業者や民間企業との協力を得ながら、社会実験がうまく離陸しているようです。あとは消費者がその価値を認識し、購入行動まで成熟すれば実験が成功。さらに社会運動という形に醸成されれば温室効果ガス削減の一歩にという期待が膨らみます。そのためにも柏市での社会実験が重要な役割を担うことになると再認識させられました。
 
わが家で行われた1月のナシの剪定枝の炭化試験の結果が少し前に報告されました。わが家の畑から排出される剪定枝は約9t。炭化した炭の量が約3t。そのうち難分解性炭素量が約1t。難分解性炭素とは炭から揮発分(有機質)やミネラル(灰分)を差し引いたもので、安定的に貯留可能な炭素・元素状炭素という意味のようです。
わが家のナシ畑から、計算上とはいえ、毎年1tもの炭素を固定化できるというのは予想以上の量でした。樹木は当然、竹やもみ殻よりも炭素の抽出率が高い値のようで、産地として取り組むようになればさらに大きな数値となって社会にアピールできるかもしれません。

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