のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

果物は必需品?贅沢品?(のらやま通信250/1509)

2016年04月28日 | 農のあれこれ

 果物食べていますか?1日200g果物を食べようという運動があるが果物の世代別摂取量は年々減少している。摂取量が多いとされる60代以上でも平均160gほどだが、これからを担う若い世代の果物の摂取量は極めて低いものとなっている。20代~40代の平均摂取量は1日64gほどしかないのだ。さらにこの世代は全く摂取しない0gの割合が5割もいる。また農家の7割は60歳以上だ。果物をめぐる現状は、高齢者が生産して高齢者が食べる時代になっている。若い世代には今までのやり方ではなく、別のアプローチが不可欠な状況となっている。
 そんな中、若い世代の一員でしかも果樹農家である私がこれからどうしていくべきかを考えるキッカケとなるかもしれないと、去る7月23日に農水省主催の「くだものフォーラム」に参加してきた。このフォーラムでは、基調講演として上記のくだものにまつわる現状と果樹農業振興基本方針について、栄養学における果物摂取による健康効果についてあり、生産者2名と高級果物専門店の千疋屋総本店、カットフルーツ販売の弘法屋の事例発表、及びパネルディスカッションがあった。
 まず果物の摂取が少なくっている理由は、価格が高い、低所得、ジャンクフード等不健康な食品の選択肢が多いということがあげられる。また子供の場合、保護者の摂取状況や家庭での入手可能性の影響が大きくなる。果物はどうしても嗜好品だ。さらには贅沢品となっているのではなかろうか。極論すれば、果物はなくても困らないもの。果物が必需品であるかどうか3000人を対象に調査したところ、大人では3割ほどしか必要であると答えていない。子どもにとって必需品であるかどうかの調査では5割は必要だと答えている。大人と子どもでの差、これは頭の中では子どもに果物を食べさせた方が良いと思っている大人は多いということになる。これを改善するにはどうしたらよいのか。食育という言葉を初めて聞いてからだいぶ経ったが、単純にカラダにいいから、美味しいからと伝えるだけでなく、生産者の気持ち、さらには生産地から消費者までの流通の大変さを伝えることも大切である。食育だけやっていれば良いというものでもなく、食環境の整備も必要となっている。低価格化を実現するための仕組み作りや家庭菜園、産地やフードシステムの向上が必要だと考えられている。これらは日本だけの課題ではなく世界中で課題となっている。
●千疋屋のおはなし
 難しい話はここまでにして、あの西郷さんも足しげくスイカを買いに通っていた千疋屋総本店について話そう。創業181年目の千疋屋は現在の埼玉県越谷市にあった千疋村から由来している。京橋千疋屋や銀座千疋屋をのれん分けしたが現在資本関係はないという。平成17年に日本橋三井タワーに日本橋本店をオープンし、1Fのメインストアをフルーツミュージアムと呼び、2Fのフルーツパーラーでは6000円で2時間食べ放題だが連日盛況だという。千疋屋の取り組みは、年間100日の産地周りで産地との連携の強化、糖度選別の強化、エチレンガス発生を防ぐ鮮度保持シート、保証カードがあげられる。普通の八百屋ではあり得ない手間を二重にも三重にもかけているのだ。
千疋屋では国内産が90%を占めている。日本における果物の需要は40%が国内産、60%が輸入品であるから千疋屋における国内産の需要は大きい。シャインマスカットの需要が高まってきているように種無し、皮ごと食べられる、手軽な果実が人気だという。果物は糖度と酸味のバランスが重要だが、輸入品のグレープフルーツのような酸味のある果物は敬遠されてきている。さらにお馴染みのバナナの消費は伸びてきていて、房単位から1本単位へと販売形態が変化してきる。
また売上の30%は外国人だという。日本の果物は日本国内だけでなく、外国での需要が高まってきている。現に中東から月間数千万円のオファーがあり、特にメロンやマンゴーが人気だという。本当に消費者が求めるものを作れば、どんなに高い値段だとしても買ってくれる市場は確実にあるというのが千疋屋の考え方だ。
●果物はワクワクするもの
 これから日本の果物は国内だけでなく国外にアピールするチャンスが幾度ともある。5年後には東京五輪で多くの外国人が日本にやってくる。外国へアピールするのには絶好のチャンスだ。しかしどうだろう、ホテルの朝食にフルーツは確実にあるが、パインやグレープフルーツ、オレンジ、バナナ等外国産のものが多く並ぶ。このような身近なところから変えていかなければならないだろう。また美味しい果物をただ輸出するだけでなく、保存方法や食べごろ、食べ方、さらには生産者の思いまでをも輸出する必要がある。
果物は嗜好品だからこそ、ワクワクするものだ。これから生産者としても美味しい果物を作ってワクワクを届けていきたいと思う。日本の果樹農業を絶やさないために。これからの日本のために。    (co-sk)

(2015年9月)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿