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「ゲド戦記」をやっと観た。
この映画、評判が著しく悪かった。
そりゃもう公開時は滅多打ちもいいところだった。
「息子はダメだ」
「息子はろくなもんじゃない」
「息子に父は越えられない」
「このバカ息子!」
……とまぁ、ひどい有様だった。
宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗氏の初監督作品。
興収100億円が目標だったが、結果は76.5億円。
それでも2006年邦画のナンバーワンなのだが、興収的に失敗には違いない。
で、やっと観た。
評判が悪かったので、まったく期待していなかった。
そうとう目線が下がっていたのかな?
結果は意外にも、非常に面白かった。
やばい、面白かったのだ。
途中、少し泣いたし。
むしろどうしようかと思ってしまったよ。
僕は世間の感覚とずれているのか?と。
そもそもこういう世界観が好きだっていうのはある。
魔法使いとか、竜とか、そういうの。
いわゆるファンタジー。
で、この映画では魔法使いも竜も両方かっこいいのだ。
だから、しびれてしまったのかも知れない。
確かにお話はなんのことやら分からん。
登場人物の背景もなんだかよく分からん。
要するに疑問だらけだ。
評判が悪かったのも当然だ。
子供なんかなんのことかまったく分からずポカ~ンだろう。
でも、何となく分かる感じが僕は嫌いじゃない。
で、とにかくいい点は、テーマが至極明確なことだ。
テーマだけはセリフでこれでもかと語られる。
うん、悪くない、悪くないぞ。
なんであの子は竜なんだ、とか、そもそも竜はなんなんだ、とかまったく分からないんだけど、その不透明感がファンタジーだったりするわけで、すべてが合理的に説明されるにつれてどんどんつまらなくなってきた「某メガネをかけた魔法使い少年の物語」とか「某光る剣を振り回す3部作の過去を描いた新3部作」とは違い、「明確に説明されないからなんかスゴそうに感じちゃう」ってのが、僕は嫌いじゃないのだ。
要するにハッタリだ。
ハッタリは悪くない。
ファンタジーなんてそもそもハッタリだらけだ。
そういう意味で「ロード・オブ・ザ・リング3部作」は偉大。
あれもよく考えたら細かな設定はなんのことやら分からん。
もうハッタリだらけ。
だが、テーマは明確だ。
わけの分からない設定の中で、分かりやすくベタなテーマを描く、それがファンタジーの王道だ。
リアルな設定で描いたらクサくてとても観てられないとか、そんなヤツぁいないよと思われちゃうベタなテーマを、真正面から描くための装置……それがそもそもファンタジーのファンタジーたるゆえんだったりする。
うん、「ゲド戦記」悪くないぞ。
もしかしてホントにいい映画なんじゃないか?
のちに評価が高まる名作だったりして。
十数年後、もし宮崎吾朗監督が父をも凌ぐものすごい大御所になっていたら、「処女作『ゲド戦記』だけどさ~、当時から僕はいいと言ってたんだよね~。昔書いたブログが証拠だよ」と、みんなに自慢しようっと。
そうならなかったときは、記憶から消すだけだ。
星5つ。★★★★★
いや、さすがにそれはないか。
4つぐらいにしておこう。★★★★
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