HAL 中村清治
ベッドの上で目覚めた長脛康夫は眼を開けて天井を見た。
見慣れた官邸の天井だった。
しかし今日は何故かいつもと違うように見える。
睡眠から覚醒へ移るあのはんば覚めたはんば夢遊の時間のせいかと思ったが、その
時間が過ぎて完全に目覚めてもなにか不自然な感覚は去らなかった。
やがて長脛はその不自然な感覚は天井のせいではなく、彼自身の肉体が訴えている
ものであることにに気がついた。
背中が重苦しく突っ張って傷み、腹の筋肉もこわばり手足の力が失せてさっぱり力
が入らない。
先日のゴルフが今ごろになって響いて来たのかなと思った。
あの時はついつい熱が入りすぎて少しばかり無理をしてしまった。
俺ももっと身を入れて健康管理をしないと、うまくない。
ヤスみたいにガンになった時は日本とアメリカとでは反響がだいぶ違うから、僅か
の兆候でも政治的生命は終わりになる。
三選をかちとるためにもタバコの吸いすぎとゴルフのやりすぎには注意しよう。
毛布をのけて起上がろうとした彼は、自分の手がとんでもなく細くなっているのに
気がついた。
その手はまるで萎びたゴルフのクラブに剛毛が生えたようなしろものだった。
毛布をはねのけることさえままならぬのである。
しかも身を起こすことも不可能だった。
背中が突っ張り腹もこわばって三十度程しか体が起こせない。
声を上げて家族を呼ぼうとしたが彼の口からは歯ぎしりのような情けない音しか出
てこなかった。
やむなくベッドの上で反転してうつ伏せになろうとしたが、これがまた困難で、左
右に身を揺すり反動をつけてうつ伏せになろうと試みた。
その試みは成功したように見えたが、うつ伏せになったとたん彼はベッドからはみ
出し床に落下した。
したたかに腹と手足を床に打ちつけて彼は悲鳴を上げた。
しかしその悲鳴もやはり歯ぎしりのような哀れなものであった。
凄まじい苦痛が全身を駆けめぐり涙で視界が歪んだ。
やがて苦痛が遠のき手足に感覚が戻って来ると、彼は手と足を一本ずつ動かしてみ
た。
六本の手足は全て無事で折れたものはないようであった。
六本?
長脛は自分の手足を確認しようとしたが彼の眼は肉体のごく一部しか見ることがで
きなかった。
萎びたクラブのような剛毛の生えた手と何かわからぬが細長い触覚のようなものが
眼の前にぶら下がっていた。
彼は恐る恐る体の向きを変えてみた。
六本の手足は脳の命令に従って不器用に動いて、彼は寝室の壁の方に向き直った。
その壁に掛かっている鏡が見えた。
鏡には不気味な怪物が映っていて彼を睨んでいる。
細長い黒茶色の胴は楕円形かつ扁平で脂ぎったぬめぬめとした光沢を放ち、その胴
を細い脚が支えている。
薄い翅のようなものがその胴にたたみこまれていて、頭部には長い触覚が震えてい
る。
ゴキブリに良く似ているが途轍もなく巨大なしろものだった。
鏡の中に一緒に映っているベッドと比較しても、長さは一メートル七十五センチく
らいはありそうだった。
恐怖に震える手足で後ずさると鏡の中の巨大な蟲も遠ざかった。
ここにいたっては長脛も認めざるを得なかった。
一夜明けると大きな蟲に変身していたのだ。
昨夜のことを思いだそうと試みた。
昨日の夕方に彼の派閥の懇談会があり、その後官邸に戻って家族と夕食をとり、夜
は寝室で秘書が届けた各種の報告書を読みながらコニャックを飲んだ。
ベッドに入ったのは十二時少し過ぎで、すぐ寝入ってしまった。
それまでの記憶ははっきりしており、こんなあやしげなしろものに変身するような
兆候は一切なかった。
だいたい私のような国家的英雄、国際的政治家がなぜ蟲ごときものに変身せにゃな
らんのか。
ウルトラマンやスーパーマンにへんしーんするのならまだ許せるが、一国の代表、
元首につぐ地位の者がゴキブリにへんしーんではテレビのアニメからも声がかから
ないではないか。
私が蟲に変身したことが知れたら人々は私をどのように扱うだろうか。
もうロンにもヤスと呼んで貰えぬかもしれぬ。
もうこんな悪夢はおしまいにしておこう、今日は閣議の後で国会の衆院予算委員会
に出席せねばならぬし、午後は靖国問題の打ち合せその他びっしりと予定が詰って
いる。
こんな小学生の変身願望のおつきあいをしている時間はないのだ。
さあ、つぶらな眼をぱっちりと見開いて悪夢を追い払い朝の身支度を整えよう、そ
ろそろ家内が起こしにくる頃だ。
しかしいくら眼を見開いても悪夢は終わらなかった。
依然として鏡に映るおのが姿は巨大な醜い蟲のままだった。
長脛の心に本物の恐怖が沸き起こり渦巻いた。
もしこれが夢幻でなく事実としたら、いや、これは紛れもない事実だが、国会に出
席どころではない。
ゴキブリが国会で所信表明演説をしたところで聞いてくれるものはいないだろう。
ゴキブリが注目を集めるのはゴキブリホイホイのコマーシャル位だ。
第一閣議に出席しても私を長脛と認めるものは誰もいないだろう。
閣僚どころか家内でさえ、この化け物が亭主であるとは認めないであろう。
早く元の姿に戻らなければ、しかしどうすれば人間に戻れるのか。
両手を揃えて左から右へ大きく円を描き、へんしーんと叫べば戻るかも知れぬ。
試してみた。
無駄だった。
へんしーんで駄目ならと、ちぇいんぐ、ななことびまーす、お前は既に死んでいる
、はてはあたたたたーっ、ひでぶー、ドンザラウエケマンヤカサスワキクンモワキ
グイシャスウォンイビタビリ、RAPE GIRL、なはははははははははははは
はははははははは、ハハニソウダンシテカラオヘンジイタシマス、オカスユミコ、
ついにはアブダカダブラー(懐かしいですねえ、徹子さん)、と知っているあらゆ
る変身コマンドや呪文その他のコマンドを試したがどれも役にたたなかった。
それにしても私の好みはいかにもロリコンっぽいなあ、これも日頃愛用しているロ
リコンソフトのせいかもしれぬ、PSKやNSIはそろそろ卒業して第五中業の勉
強でもしよう。角はいらなくなったが核は必要だからな。
彼が日本の将来とアダルトパソコンゲームの将来に思いを致していた時、寝室のド
アがノックされ夫人が入って来た。
いつまで待っても彼が朝食のテーブルに姿を現さないので叩き起こしに来たのだ。
「あなた、早く食事をなさらないと閣議に遅刻しますよ、先日みたいにわたくしが
言い訳するのはもう厭ですからね。
あの時は、主人は国鉄改革案に熱中していてつい時間のたつのを忘れまして、と言
いましたっけね。
まさかファイナルロリータに熱中していてつい時間のたつのを忘れまして、とは言
えませんものね、それにしてもあんな厭らしいもののどこが良いんでしょうねえ。
」
夫人はこの長ったらしいせりふを一息で喋った。
(その厭らしいところが良いんだ)と言い返したかったが生憎彼の口からは歯ぎし
りのような息のもれる音しか出てこなかった。
夫人は彼の姿が見えないことに気付き、視線を床に落とした。
次の瞬間山を揺がし海も裂けるような奇っ怪な大音響が官邸を振動させた。
(山を揺がし海も裂けるようなとは果たしてどのような音響であるのか、作者も耳
にした経験がないので良くはわかりませんが、多分あなたが他に女をつくりそれが
バレタ時の妻君の音声がそれに相当するのではないかと思われます。)
長脛もその大音響に仰天したが同時に他の人にこの姿を見られたくないという意志
が作用して、必死になって夫人に向かって話しかけた。
「おまえ、私だ、私だよ、康夫だ、お前の亭主だ、忘れたのか。」
忘れたのかというのはいくらなんでも無理な話で、馬鹿でかいゴキブリにお前の亭
主だと言われれば大抵の夫人は眼を回すだろう。
幸い彼の言葉は人類の言語とはならず、ただしゅうしゅうと息のもれるような音が
大半を占めていたが、それでも意志の力とは恐ろしいもので(というよりは作者の
いい加減な設定と作法のために)僅かながらも日本語の単語が夫人にも聞き取れた
。
ゴキブリが日本語を話すのをきいた夫人は失神することを一時中止して改めてその
むしけらを見やった。
それに力付けられ長脛は掻き口説いた。
「良く見てくれ、私だよ、わからないのか、姿形は変ってもあなたの声は忘れぬと
言ったではないか。
こんな情けない姿にはなったが私が私であることに変りはない。」
この頃になると彼も新しい発声装置にようやく慣れて何とか言葉らしいものが発音
できるようになってきた。
「あなた?
まさか・・・・・・」
「そのまさかなんだよ。
朝眼が覚めたらいつの間にかこんな姿になっていたんだ。
でも私であることに違いはない。
秘書や警備員に見られないようになんとかしてくれ。」
夫人はまだ信じられないように巨大な蟲が日本語を話すのを眺めていたが、寝室の
ドアがせわしなく叩かれるのを聞いて慌ててドアをロックした。
「なんでもありませんのよ。
ちょっと脚を滑らしただけよ。
主人もすぐに行きます。」
秘書の大川の声が言った。
「しかし・・・・・・
お怪我はございませんか。」
「大丈夫、なんともありません。
すぐ行きますから。」
不承不承大川たちは引き上げていったようである。
「それににしても」
と夫人は床のばかでかいゴキブリを見ながら言った。
「これがあなたとは・・・・・・
なんという情けない格好・・・・・・
親の因果が子に報い、変り果てたるこの姿・・・・・・」
「縁日の呼び込みをやってないで何か着るものをとってくれないか。」
「着るものとおっしゃってもその体では合うものがあるかどうか。」
「そうか・・・・・・
では仕方がない、このままで行こう。」
「行こうとはどこへ?」
「無論国会へだ。」
「えーっ、そのみっともない、いえその体でですか?」
「そうだ、いかんか?」
「いけないことはありませんが、しかしその格好では・・・・・・」
「ゴキブリの姿で何が悪い。
我国は四民平等、士農工商××○○○ゴキブリSF作家の差別のない国だ。
少なくともタテマエはそうなっとる。
トルコの、いや今は特殊浴場と言うのだったかな、看板にだって、暴力団関係者と
ゴキブリの入浴はお断りしますとは書いてないぞ。」
「トルコと、いえ、特殊浴場と国会とは違います。」
「似たようなものだ。
なにもつけない男と女がニャンニャンするかわりにバッジをつけた男どもがワンワ
ンいってるだけの違いだ。」
「そんな無茶な。
第一大川さんや閣僚には何といって説明するのですか。」
「うーむ、それは・・・・・・
いや、やはりありのままを話そう。
姿は変れど私であることを納得してもらおう。」
「そんなに簡単に納得するでしょうかねえ。」
「おまえだってこれが私であることを認めているじゃないか。」
夫人は首を捻りながらも彼の言うことにも一理あると思った。
確かにこんな醜い蟲を夫と認めるのは厭ではあったが、しかしいつの間にかそれを
長脛として認めているのだった。
寝室に入った大川は腰を抜かしそうになった。
夫人の傍らには巨大なゴキブリが長い触覚を大川に向けて揺り動かしているのであ
る。
そいつが人語を話すのを聞いて大川は完全に腰を抜かした。
そのむしけらが言うのである。
「大川君、今日は遅れそうだからすぐ出かけよう。」
「な、何者だ、いや何蟲だ、お前は。」
「何蟲ではない。
私だ、長脛だ。」
「そんな阿呆な。
一国の総理たる者はむしけらなんかじゃない。」
「蟲を馬鹿にするな。
一寸の虫にも五分の魂、六尺の虫には三尺の魂があるぞ。
BUGS BE AMBITIOUS 天は自ら助くる蟲を助く。
蟲こそ無私の立場で国民に奉仕する最良の存在である。
ソウリ虫と言うではないか。」
「それはゾウリ虫です。」
このやりとりで大川にもその蟲が長脛であることが納得できた。
なんとなればそのゴキブリの話し方が長脛の話し方そのものであったからである。
いい加減な設定と怪しげな論法でハチャメチャに断定する話法は、正に長脛独自の
ものであった。
(と同時に作者の得意技でもありますが・・・・・・)
巨大な蟲と人間の大川という奇妙なコンビが国会の一室に入ると、居並ぶ閣僚たち
が一斉に息を呑む音が響いた。
蔵相の陀鱠侈駝が喚いた。
「大川君、その化け物は何だ。
なんだってそんなものを神聖な国会に連れてきたんだ。」
「連れてきたんじゃありません。
私が連れてこられたんです。
それにこれは、いえ、この方は長脛です。」
「なにを馬鹿なことを。
そのゴキブリの化け物が長脛さんだと。」
「馬鹿なことではない。
私は長脛だ。」
閣僚たちはてんでに喚き始めた。
「ゴキブリが口をきいたぞ。」
「あの中に人間が入っているんだろう。」
「ぬいぐるみはテディベアかパンダかコアラと相場が決まっている。
ゴキブリのぬいぐるみなんてあるものか。」
「いや、最近は珍獣ブームだから新井素子あたりは喜ぶかもしれんぞ。」
「いくらブームだからってゴキブリのぬいぐるみを抱いて頬ずりする女の子などい
るものか。」
「いやわからぬぞ、近ごろの女の子は目立ちたがりやだから。」
大変な騒ぎになった。
長脛は声を張り上げた。
「諸君、聞いてくれたまえ。
私は正真正銘の長脛である。
どういうものか今朝眼が覚めたら蟲に変身していた。
理由はわからない。
しかし私が本物の長脛であることは証明できる。
誰か今週の合言葉を聞いてくれないか。」
外相の罅鐶餅が言った。
「ライトセーバー!」
間髪を入れず長脛が答えた。
「エケマスタロクデエントラクタフ!」
今度は内角官房長官の強盗田が言った。
「キータクラー!」
すかさず長脛は答えた。
「ドリムノート!」
閣僚たちがまたざわめいた。
「ムムッ正解だ。」
「我国の最高機密であるあの暗号を知っているとは・・・・・・」
「これはやはり長脛氏か。」
幹事長の蚊寝丸が長老らしく慎重に言った。
「まてまて、念の為にもうひとつ聞いてみよう。
先々週のパスワードじゃ。
オカスユミコ!」
「ウゴカスコシ!」
「ムムッ、されば
RAPE GIRL!」
「USE ROPE!」
大川は腹の中で呟いた。
(なにが最高機密の暗号だ。
自分達の趣味のロリコンゲームのコマンドじゃないか。
だいたい世界第二のGNPを誇る我が日本国の閣僚が、やれアリスだ、ななこSO
Sだ、ロリータⅡだとスケベソフトに熱を上げて、閣僚会議のパスワードにまでロ
リコンソフトのコマンドを使うようじゃ、日本国の前途は暗いなあ。)
そう、長脛だけではなく閣僚の全員がアダルトソフトの熱心な愛好家なのであった
。
従って閣僚会議のパスワードも先々週は「天使たちの午後」と「ロリータⅡ」から
、先週は「ななこSOS」と「ロリータ シンドローム」から、今週は「アリス」
と「ウィングマン」から、それぞれとられていて、会議に先立って閣僚たちはその
パスワードで彼らの秘密の趣味をお互いに確認し合うのであった。!
余りの阿呆らしさに秘書たちは日本国の未来に大いなる暗雲を見ていたのであった
。
秘書たちの嘆きをよそに閣僚たちはそれぞれごひいきの美少女たち、たとえば長嶋
エミーであるとか、あるいはアリス、あおいさん、ななこ、白石由美子などのハー
ドプリントをお互いに見せ合い自慢し合っていたのである。
「いかがかな、これで私が長脛本人に間違いないことは証明できたと思うが。」
幹事長の蚊寝丸が言った。
「むむ、確かに貴公は長脛康夫。
したが、なんとなされたその姿、親の因果が子に報い・・・」
「その台詞はすでに今朝がた家内に聞かされています。
なぜ私が蟲に変身したのかわかりません。
なんとなくクリスタルにいや、なんとなくゴキブリにへんしーんしてしまったので
す。」
「限りなく無限に近く悲しい話ですな。」
閣僚会議は奇妙な雰囲気の中で進められた。
なにせ議長がでっかいゴキブリなのである。
雰囲気も怪しげになろうというものだ。
陀鱠侈駝は考えていた。
親分である蝦廏穢豬が脳性移行型先端壊疽、通称ノイズ(NOISE)で倒れてか
らはや二年になる。
この病気は脳がその先端部より壊疽を起こし次第に各部へ移行して行き、やがては
死に至るという恐るべきウイルスによる伝染性の病気であり、進行は遅いが快癒は
不可能で死亡率九十パーセントという難病である。
治療法も確立されておらず、ただピーナッツエキスの点滴のみが唯一の対症療法で
あり、患者は激しい苦痛と恐怖のうちに死んでゆく。
その恐ろしさはエイズの比ではないのである。
原因はいまだ確定されていないが、一説には東アジアの一部にすむ小さな猿の一種
にレモンピープルという猿がいてペットとして好評を博しているが、この体内のノ
イズウイルスが人間に感染して起こるのではないかといわれており、人間の間での
伝染は主としてパソコンの“ある種”のソフトウェアをユーザーが貸し借りする際
に感染するのではないかといわれている。
蝦廏穢豬はその“ある種”のソフトウェアの熱心な愛好者であったといわれている
が、彼が倒れてからはその強大な派閥もだいぶガタがきて、子分の陀鱠侈駝の率い
る鯵鯖会が次第に派閥内の実権を握りつつあった。
陀鱠侈駝自身も痔憂黽咒党のニューリーダーといわれており、現在の長脛の後継者
の一人として罅鐶餅らと覇権をきそっていた。
ここで長脛が蟲に変身したのは千載一遇の好機である。
ゴキブリが内閣総理大臣の重責にたえうるであろうか。。
断じてそんなことはありえぬ。
一国の総理がむしけらではむしけらのように踏みつけられていた国民が承知すまい
。
外国の政府も相手がゴキブリでは貿易赤字の解消も北方四島の返還もあったもので
はない。今こそ彼陀鱠侈駝が立つべき時ではあるまいか。
罅鐶餅も同じような事を考えていた。
人間が蟲に変身するなどということが有り得るのだろうか。
そういえば蟲に変身した男の事を書いた外国の作家がいたが、可不可はともかく事
実彼の眼の前の巨大なゴキブリは日本語を話すのである。
これぞ天の恵、むしけらに変身した長脛に総裁選で票を投ずる者はいまい。
ここは一番、今年の総裁選に賭るべきではないだろうか。
それぞれの思惑が渦巻いて閣僚会議は早々と終了した。
子分たちへは早速檄が飛んだ。
長脛氏ゴキブリに変身すの報はたちまちにして国会内に私語の嵐を巻き起こした。
痔黽党のライバル(と彼ら自身は考えていたが強大な痔黽党から見ればライバルな
どとはおこがましい限りだった。)の瀉怪党のグループががん首を集めて話合って
いた。
委員長の異嗜碼弛が唾を飛ばしながら力説していた。
「長脛氏が蟲に変身したというのが真実なら、これは我が党にとって二度と得がた
いチャンスだ。
この期を逸したら我が日本瀉怪党が政権を握る機会は無いだろう。
即刻内角不信任案を提出すべきだ。」
「しかしそれは長脛氏が蟲に変身したというのが事実であるというのが前提でしょ
う。
もし単なるデマに過ぎなかったら、それに踊らされて不信任案など提出したら我が
党は世界の笑い物になりますぞ。」
書記長の鴕娜琶が言った。
「書記長の言われる通りです。
人間が蟲に変身するなど有り得ないことです。
委員長、慎重に判断されて下さい。」
国会の質疑で鋭い舌鋒で知られる汚甥弟も言った。
「うむ、確かにデマに過ぎぬということも大いに有りうる。
しかし万一真実ならばだ、試みる価値は有ると思う。
従って一応の準備だけはしておくべきだと思う。」
というわけで瀉怪党は不信任案提出の準備を始めた。
一方もうひとつの有力野党である、猴蟇豬党も委員長の蛇閨入を囲んで相談してい
た。
蛇閨入が言った。
「長脛君がゴキブリになったというのは本当かねえ。」
書記長の鵺悩が答えた。
「どうですかねえ、あれはなかなかのくわせものですからあまりまともにとらない
ほうが・・・・・・」
「うん、いつぞやもわしは間男になったなぞと抜かしおって。」
「あれは非道い、国会で一国の総理が間男するとは怪しからんと追及すると、私は
真男、すなわち真の男になったのだとしゃあしゃあとしてほざくんですからね。」
かくして与党野党それぞれが思惑を胸に秘めて衆院予算委員会が開始された。
衆院の扉が開かれて巨大なゴキブリが姿を現すと居並ぶ議員たちがどよめいた。
異嗜碼弛は驚きながらもしてやったりと笑みを浮かべた。
賭は当たったのである。
不信任案をかくも素早く用意していたのは我が党だけであろう。
これで瀉怪党の前途は洋洋たるものである。
まず最初に狂惨党の仮猫書記長が質問に立った。
「議長、まず最初に伺いたい。
総理はどこに居られるのですか。
この重要な予算委員会にいかなる理由があって予告もなく欠席されるのか、これは
衆院と各野党を侮辱するものである。
また何の為にそんな汚らしいむしけらを神聖なる議院に連れ込んだのか、伺いたい
。」
汚らしいむしけらとよばれて長脛は怒り心頭に発した。
「汚らわしいむしけらとは何事か。
私は長脛だ。
ちゃんと出席しておりますぞ。」
「ややっ、あの噂は本当だったのか。
しかしいかになんでもそのむしけらを長脛氏とは認めがたい。
何故にこのような手の込んだ悪戯をするのか、私には国会と国民を愚弄するものと
しか思えない。」
「愚弄などするつもりはない。
今朝起きたらこの姿になっていただけのことです。
姿形は変っても中身は長脛康夫に間違いない。」
「いい加減に馬鹿な真似はやめてそのぬいぐるみを脱ぎなさい。」
「ぬいぐるみなどではない。
長脛本人だといっているのに。
よろしい。
では内閣総理大臣しか知らない極秘情報をお知らせしよう。
さすれば長脛だということが納得して頂けるだろう。
仮猫さん、あなたは先週の水曜日午後三時ごろ国会内の控え室で密やかに裏ソフト
にふけっておられましたな。
そのソフトの名前は“天使たちの午後遅く”。
内容は口に出すのも憚られるが、口に出さないと分らないから口に出します。
中年のひひ爺いが、顔は菊池桃子のごとく体は飛鳥(勿論国産STOL機ではなく
女子プロの方でありますが)のごときロリータ美少女と、怪しくも楽しい一時を過
ごすという羨ましい、いや怪しからん内容であります。
これは我が内笑、すなわち内閣笑査室の誇る超小型特殊探査装置による極秘情報で
ありますが、仮猫さん、いかがかな。」
「け、怪しからん、個人的秘密を情報機関に探らせるとは。
国民の権利を犯すものだ。
しかも国会内で他党の議員の個室をスパイするなど、戦前の特高警察なみのファッ
シスト的行為である。
この破廉恥な行為に対しての謝罪と厳重な調査を要求する。」
「勘違いしないでいただきたい。
内笑、すなわち内閣笑査室はその名のとおり笑いを調査する、つまりジョークのネ
タを探す内閣直属の私的機関であります。
駄洒落のネタを得るために我々が組織した個人的調査機関であります。
それよりいかがですか、どんぴしゃでしょうが。」
「む、むー」
「これで私が長脛本人であることは納得していただけたでしょうな。」
「そ、それは・・・・・・」
というわけでなんとなくゴキブリが首唱の座に居座ってしまうということになった
。
(あんまりにもいい加減ですって?
そのとおりまったくいい加減なのです、私の書くものは。)
国会で長脛と各野党のやりとりの間にも“日本国首相ゴキブリに変身す”のニュー
スは内外の報道機関によって日本全国は勿論全世界に流されていた。
そのニュースがホワイトハウスにもたらされたとき、アメリカ合衆国大統領レーダ
ン氏はサンシー夫人と夕食を取り終えて、愛犬のゴーロクの蚤取りをしていた。
彼は呟いていた。
「うむ、ゴーロクもだいぶ蚤が多いな。
こいつは紀州犬だから蚤も日本の産だな。
あまり増えるとまた日米摩擦の種になる。
日本は自動車だけでなく蚤まで輸出するのか、蚤くらいは水平分業でアメリカ製に
すべきだとな。
だから日本国の蚤よ、お国を思うならあまり増えるなよ。」
レーダン氏の独り言はさらに続いていたが、電話のベルによって遮られた。
受話器を取った彼の顔はたちまち引き締まった。
「なに、まさか。
いや、しかし。
とても信じられん。
そうか今行く。」
彼は受話器を置くと夫人に言った。
「ヤスが蟲に変身したそうだ。」
「あら、すてきね。
午後のドレスはすみれ色のにしましょうか、それにしても最近ホワイトハウスにも
蚤が増えたわね。」
レーダン氏はため息をつき、オーバルルームへ向かった。
オーバルルームではロバート・マクファーレン補佐官が待機していた。
「ボブ、説明してくれ、蟲に変身したとは一体どういうことなんだ。」
「文字どおり一夜にして長脛氏が巨大な蟲に変ったのです。」
「そんなばかな。」
「しかし事実のようです。
トーキョーからの全ての情報がそれを裏付けています。
長脛氏はゴキブリの姿で国会に現れ、」
マクファーレン補佐官は時計に眼をやり、言葉を続けた。
「東部標準時午後八時五十分現在、日本時間では午前十時五十分ですが、衆院予算
委員会に出席しています。」
レーダンは眼をむいた。
「ゴキブリの姿で?」
「そうです。」
「ヤスはサミットにもその姿で出席するつもりかな。」
「そんなことより大統領、どうされますか。」
「どうとは?」
「我国の対応です。
むしけらを日本国の首相として認めて良いものかどうか。」
レーダンは首を捻った。
「どうしてその蟲がヤスであると確認したのだ?」
「日本国の最高機密であるパスワードを知っていたそうです。」
「ふーむ、しかし蟲が日本語を喋るものかね。」
「はい、それが喋ったのだそうです。」
レーダン氏は益々首を捻り、あまり捻ったのでとうとう首が百八十度回転して真後
ろを向いてしまった。
マクファーレン補佐官は学者風の知的なマスクを引き攣らせて言った。
「大統領、エクゾシストみたいな真似はよしてください。
気持ち悪いです。」
「いやすまん、私はリンダ・ブレアとジョディ・フォスターのファンでな。」
「閣下もロリコンですな。
私もジョディの“白い家の少女”は大好きで、いえ、まあ、そんなことはどうでも
いいんですが。」
「私の好きなのは一姫二太郎三サンシーだ。」
かくてホワイトハウスでロリコン談議が交わされている時、海を隔てたクレムリン
ではソ連邦共産党書記長ドルバチョフ氏が電話に向かって不機嫌な顔で怒鳴ってい
た。
「今何時だと思っているのだ、夜中の三時だぞ、昼間の激務で疲れきっているわし
をなんの権利があって叩き起こすのだ。」
電話の向こうのKGB高級将校が声を震わせて言った。
「は、はい、閣下のご安眠を妨害致しまして誠に申し訳ありませんが、あまりにも
異常な報告が入っておりますので・・・・・・」
「異常な報告?
レーダンが豚死したのか、スケベソフトのやりすぎでNOISEになったのだな。
」
「いえ、閣下、残念ながらレーダンはぴんぴんしております。
それに頓死のとんは豚ではなく頓であります。」
「うるさい、馬鹿者め。
何故にこのソ連邦共産党書記長ドルバチョフが頓死なぞという難しい日本語を知っ
ていなければならぬのだ。
それより報告とやらを早く話せ。」
「はっ、東京よりの情報では本日国会に現れた日本の長脛首相は蟲に変身していた
ということであります。」
「なにを寝言をいっとるのだ。
長脛が蟲になった?
いい加減にせんとシベリヤ送りだぞ。」
「ははっ、しかしアメリカ国務省も確認しておりますし、また各国の報道陣もその
ニュースを流し続けておりますが。」
「なに、我国のではなく外国の報道陣が確認しているのか、それでは確かに事実な
のだろうな。」
というわけでドルバチョフ氏も何やら画策を始めたのである。
北京。
酊大平氏 「あなたなにばかいうあるかそれウッソー。」
李後念氏 「ホントー。」
京城。
全吶喊氏 「日本人は皆ゴキブリ同然、ハングル世代の恨みはらさいでか。
いざや、とっかーん。」
平壤。
金月成氏 「倅や、今こそ待ち望んでいた時が来たぞ。
憎っくき東洋鬼めが蟲になった。
この機を逃さず三十八度線を越えて進撃しようぞ。」
金鯖日氏 「おとっつぁん、三十八度線の向こうは日本じゃなくて韓国だよ。」
月 「そんなことどっちゃでもええわい。
はよ戦争の支度せんかい。」
鯖 「もうできてます、旨い、安い、早い、我が朝鮮民主主義人民共和国人民軍。
!」
月 「それにしても長ったらしい名前だな。」
鯖 「自分で付けたんでしょうが。」
物騒なことになりましたがお話変わってまた日本国。
狂惨党や猴蟇豬党、民捨党の質疑が怪しげな雰囲気の中にもなんとか終わり、瀉怪
党の異嗜碼弛委員長が火蓋を切った。
「皆さん!
皆さんはいつの間にかこのむしけらを日本国首相として認めておられるようですが
、私共日本瀉怪党はゴキブリなどを内閣総理大臣として認知することには断固とし
て反対致します。
たとえこの蟲が長脛氏本人に間違いないとしても、それとゴキブリが公職、それも
首相という我国で最も重要な地位に有るということとは全く別の問題であります。
一国の総理がむしけらであるとしたら、対外的な聞こえもいかがでありましょうか
。
またこの蟲の知能や判断力は以前の長脛氏のままであるという保証はあるのでしょ
うか。
経験は?
外国首脳との個人的関係は?
健康は?
このように考えますとたとえこの蟲が長脛氏であるとしても、内閣総理大臣として
は誠に不適当であると言えると思います。
従って我が日本瀉怪党はここに内閣不信任案を提出致します。」
この動議を聞いて衆院はどよめいた。
そして異嗜碼弛氏の演説に対して与党側の席の中でも頷く姿が目についたのである
。
議長の指名もまたず長脛が言った。
「私としては経験も判断力もその他全て以前のままであると確信しております。」
「それはあなたがそう言うだけで何の証拠もありませんぞ。」
議場は混乱し議長は声を枯らして静粛を呼びかけたが効果はなかった。
混乱の極に達した国会は徒らに時間を浪費するのみであった。
某年某月某日大安吉日お日柄も良ろしいその日、朝鮮民主主義人民共和国人民軍は
雪崩をうって三十八度線を越え大韓民国に攻め入った。
しかし迎え撃つ韓国軍は一人として居なかった。
皆釜山へ向けて出発してしまっていたからである。
首都京城のテレビの歌謡番組で韓国の人気歌手が歌っていた。
「釜山港へいそげ、そこには船が待っている。
その船で行こう、東の島へ。」
そのとおり全韓国軍は軍艦はもとより商船漁船連絡船、はては新幹線山手線東北線
名松線淋巴腺扁桃腺前立腺バルトリン腺カウパー腺消火栓六花仙総裁選前哨戦大乱
戦、それでも足りなくて手漕ぎボートに筏、丸木船、ついにはプラモの船まで持出
してひんがしなる秋津島へ向かっていた。
酷寒のオホーツク海の底に巨体を潜めていた水上排水量一万トンのデルタ級Ⅱ型S
LBM原潜はモスクワからの指令を受け深度二百五十メートル速度十五ノットで南
下を始めた。
レーダン氏は冷暖房完備のオーバルルームで南北朝鮮およびソ連の動向の報告を受
け、直ちに第七艦隊の出動を命じた。
満載時排水量九万三千四百トンの原子力空母カール・ビンソンは全長三百三十三メ
ートルの巨体にF14Aトムキャット二個中隊、A7攻撃機二個中隊、その他A6
給油機、EA6B電子戦機、E2B/C空中早期警戒機などを搭載した戦時体制で
東太平洋の波を蹴立てて北上、一路日本へ向かった。
AEGISシステム、ハープーン艦対艦ミサイル、スタンダードMRミサイル、ア
スロッなどを装備したタイコンデロガ級防空巡洋艦、トマホーク艦載巡航ミサイル
、スタンダード艦対空ミサイルなどを装備したスプルアンス級ミサイル駆逐艦、ロ
スアンゼルス級攻撃型原潜など多数の艦船がそれに従っていた。
北京。
酊大平氏 「みなにほんむかうある。
わたしもにほんいくある。
あなたてはいよろしか?」
李後念氏 「よろしくないある。
ふねないあるよ。」
酊・「なければなんでもよろし。
たらいあるか?
北京ホテルのせんたくようならある?
ではたらいでゆくよろし。
これがほんとのたらいまわしあるよ。」
というわけで酊さんはたらいで東シナ海を渡り始めた。
続々と集る各国の動静は統合幕僚会議の席に着いた陸海空三幕僚長と防衛庁長官を
苛立たせていた。
本来なら国防会議が開かれて首相が議長として統括するはずなのであるるが、肝心
の首相がゴキブリに変身して不信任案で揉めており、内閣はしっちゃかめっちゃか
の状態なのである。
蝌蝪長官は蒼白な顔を俯けて低い声で言った。
「えらいことになった。
第七艦隊は出動するわ、ソ連の原潜は動きだすわ、韓国は全ての艦船を動員して対
馬海峡を渡ってくるわ、中国の酊大平はたらい船まで持出すわ、どうなってるんだ
。」
海上幕僚長が言った。
「イギリスは空母インポッシブルをフォークランドから急遽回航している模様です
。」
「なに、垂直離着陸機ビーグルを乗せたあのインポが!」
陸上幕僚長が発言した。
「フランスはアーリアンロケットの発射準備を完了したという情報が入っています
。」
蝌蝪長官は頭を抱えた。
「あれは軍事用ではないはずだが。」
「ハレー彗星を観測するついでに水爆も乗せたようです。
すいせいもすいばくも似たようなもんですから。」
「無茶を言うな、彗星と水爆が似たようなものなら、河合その子とエイリアンはい
とこになるぞ。」
防衛庁のみならず日本全国、いや全世界が混乱の大波に押し流されていた。
日本が沈没したというデマが流れ、それに対して日本以外全部沈没したというそれ
に輪を掛けたデマが飛んだ。
長脛は官邸の自室で腕を組み沈思していた。
もっともゴキブリ姿では腕を組むのはかなり困難で、無理に腕を組むと顎が床に着
いてしまった。
彼は呟いた。
「もうこうなったら今日直ちにサミットを開催する以外に世界を救う道はない。
東京サミットを開催してわしの花道にしよう。」
世界を救うことと花道とはいかなる関係にあるのか、誰にも(無論作者にも)わか
らなかったが、そこはハチャハチャ小説の良いところ、一枚原稿用紙をめくれば、
いや、一回パソコンのキーを打てば、サミットだろうがワールドシリーズだろうが
、はたまたロリコンソフトであろうがお望みしだい。
たちまちにしていい加減かつ出鱈目にサミットが開催されることになってしまった
。
(再々お断りしているようにいい加減かつ出鱈目な進展は、作者のTMすなわちト
レードマークでありますので、あまりお気にかけられぬようお願い致します。)
しかし会議は最初から険悪な雰囲気で開始された。
もっとも日本的な情緒を味わえるところという各国の首脳の注文で、サミットは東
京都台東区日本堤すなわち旧名ヨシワラで開かれることになったが、各国首脳の好
みが微妙にあるいは大幅に食い違ったのである。
大英帝国首相、鉛の女、別名おてんばキャッチャー女史は強硬に主張した。
「ワタシはゼッタイに要求します。
ホクサイのマクラエのような男でなければノー!」
困り果てた外務省の職員はやけくそで言った。
「ホクサイのマクラエなんてあるものか。
なんでもいいから適当にみつくろって馬みたいなのを連れて来い。」
アメリカ合衆国大統領レーダン氏は工藤夕貴と高部知子(の本物)をよべと言い張
った。やむをえずホンモノに因果を含めて連れて来たのである。
(作者の内心の吐露、-なんという羨ましいこっちゃ、レーダンめの変りになりた
い。-)
ソビエト社会主義共和国連邦書記長ドルバチョフ氏は最高の無理難題をふっかけた
。
「わしはかねがね日本国の裏ソフトに絶大な興味を抱いていた。
サミットに参加するにあたってはぜひともあのソフトに登場する美少女ロリちゃん
に接待してもらいたい。
でなければ会議に出席はいやいやよ。」
これにはベテランぞろいの職員たちもまいった。
ソフトのキャラクターであるからにして実在の人間ではない。
連れて来いと言われても困るのである。
しかしサミット開催は至上命令である。
日頃貿易摩擦がどうの東西緩和がこうのとシチ難しいことばかり考えているからそ
う簡単にはいいアイデアは浮かばない。
中に一人柔らかいのがいて、キャラクターに良く似た女の子をそれらしくよそおわ
せて誤魔化そうということになった。
場末のキャバレーからバニーガールが連れてこられてアリスとバニーちゃんを演じ
、名門覗裸湯狸学園の女生徒があわれいけにえになってヨシワラの中を歩き回り、
RAPE GIRLのコマンドで犯されることになった。
かくてサミットはキンニクマンと工藤夕貴とバニーちゃんとセーラー服の美少女ロ
リちゃんが婚前一体いや混然一体となってにぎにぎしくかつまた厭らしく開催され
たのである。
レーダン氏はソビエトの原潜の行動を非難し、ドルバチョフ氏はアメリカ第七艦隊
の出撃を攻撃し、いかなるわけかサミットに紛れ込んだ全吶喊氏は浪速節を唸り、
ようようたらい船が日本に着いて会議に駆込んだ酊氏はそれに合わせてどしょうす
くいを踊りだす始末であった。
これではいつになっても埒があかぬとみてとったドルバチョフ氏は全ての原潜とミ
サイルに攻撃命令を発した。
レーダン氏も第七艦隊と戦略空軍に攻撃を命じた。
アーリアンロケットとSS20が空を飛び交い、レオパルドⅡ戦車がキャタピラを
唸らせて殺到した。
弾頭が核物質であったなら世界はたちどころに死滅するところであったが、幸いな
ことに各首脳ともそこまでアホではなかったので、核弾頭の代りに各国の名産が装
備されていて、アメリカのパイ、ソビエトのキャビア、イギリスのローストビーフ
、フランスのトリュフォ、中国のペキンダック、韓国のキムチ、そして我が日本国
のお茶づけのりが各国の頭上から雨と降った。
サミット会場でもレーダン氏がドルバチョフ氏に特大のパイを投げ、昔映画で鍛え
た腕でみごとに命中させると、ドル氏も負けじと大皿のキャビアをレー氏の頭から
ぶちまけた。キャッチャー女史はおてんばぶりを発揮してローストビーフで長脛氏
のゴキブリドタマをかちわるとお返しに長氏は永山園のお茶づけのりをキャ女史の
豊満な胸の谷間にぶちかまし、熱さに女史は悲鳴を上げた。
各国の人民は降って来た食物を飽食し、食べ切れぬ食物はいつの間にか大量に繁殖
した蟲たちがたいらげた。
そしてついでに人間共もたいらげて、世界はゴキブリだけになったとさ。
( おしまい )