3月19日は米子にいた。私は生まれたのは鳥取県中部の倉吉という小さな町田が物心つく頃から高校を卒業するまで米子で育ったので、故郷といえば米子ということになる。その米子で日本動物学会が開催され、その市民向けイベントとして講座が開かれるので話してくれと頼まれてお引き受けすることにした。ただ、その話があったのは二年以上前で、2020年の今頃行われる予定だった。ところがコロナで2回も流れてしまい、主催者は大変困ったようだった。今年もどうだろうかと気を揉んだが、なんとか実現した。
絶滅したニホンアシカ、絶滅が心配されるオオサンショウウオの話があるというので、動物を「守る」ことがテーマなのに、私の研究対象は逆に「増えすぎ」の動物なので、申し出があった時、そのことは大丈夫かと聞いたら、主査者側は「地元出身者が話すことに意味があるのでぜひ」ということだったのでお引き受けした。
アシカの講演は動物学の話というよりは絶滅にまつわる新聞記事や文献の話だった。オオサンショウウオの方は分布実態、マイクロチップをつけた個体を何年も繰り返し捕獲して大きさの変化などを追跡していることや、遺内容物を吐き出させて食性を調べている話などだった。
私は東北大学時代の仲間が鳥取大学にいるので共同研究で行った鳥取県東部での群落へのシカの影響と糞分析の結果を報告した後、全国のシカの問題、シカが生態系全体に及ぼす影響などを話した。最後に、アシカが絶滅したのも、オオサンショウウオが減っているのも、そしてシカが増えたのも、人間社会を反映していること、その人間は、日本列島が大陸と離れた200万年前から考えると最後の4万年ほど前の、「ごく最近」であって、1日にすれば夜中の11時半くらいのことなのだ、それを思えば新参者である我々は日本列島を共有するものとしての配慮が足りなさすぎるであろうという話をした。
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