学会イベントの会場では、私の書いた本を持参してサインをして欲しいと言われた方が何人かおられた。高校時代の友人が来てくれていたので「やあやあ」ということになり、お宅が会場の近くなので、お茶でもどうぞということになりお言葉に甘えることにした。奥さんがカミさんと友達でもあるのでこの前帰省した時もお邪魔した。私は高校時代に陸上部に入っており、その友人もそうだった。私は大したこともなかったが、彼はハンマー投げや砲丸投げで活躍していた。監督が日体大卒で練習は極めて厳しかった。今思えば現在なら問題になるような厳しさだったが、それだけに「あの練習に耐えた」という共有体験がある。それもあってか、何年もあっていないのに、スッと当時と同じような気持ちに戻れて、楽しく話ができた。
その日の発表は午後だったので、朝、散歩で城山に行ってきた。江戸時代に城があり、今では石垣だけが残っている。
シイ、カシの常緑樹が多く、子供の頃、シイの実を拾いに行って、炒って食べたことを覚えている。小学校高学年の頃は昆虫採集にきたものだ。あいにくの天気だったが、それでも山頂からは街並みが見えた。私の中には昭和40年代の景色が残像として残っているので、ビルが増えたなという印象がした。
下り道で何人かの人とすれ違ったが、どちらともなく「おはようございます」と声が出て、東京では黙って行き過ぎるな、と思い、心が暖かくなった。