「大学博物館」というといかめしい、あるいは難しそうなイメージがありますが、私たちはそのイメージをなんとか打ち破りたいと思っています。その一つの現れが、学生による解説と骨標本に直接触る機会を提供するということです。それを「ハンズオン」と呼び、コーナーを作りました。なかなかできない体験なので好評です。また、人に解説するということは、それだけ勉強もしないといけないことですから、学生にとってもよい刺激になっているようです。
10月28日は大学祭でした。大学に訪問した人が博物館にも足を伸ばします。哺乳類の体の仕組みを説明するコーナーではゾウの前にハムスターの骨格を並べ、「大小」を実感してもらうことにしています。メッセージはそれだけ大きさが違っても基本構造は同じだということです。

ハムスターの標本を見る来館者
血管系をプラスチックに写し取ったプラスチネーションは見た目もとてもきれいなので人気のあるコーナーです。

プラスチネーションのコーナをみる来館者
10月21日 花だけでなく、果実もいろいろありました。

ガマズミ

シロダモ

ムラサキシキブ

ヤマコウバシ
ブルドッグはイギリスで作られた犬種ですが、そういえばあれはなんでブル(雄牛)ドッグなのだろうと思いながら、「ボーッと生きて」きました。これは動けなくした牛に犬をけしかけて苦しむのをみて楽しむという、信じられないようなことが人気があり、そのために改良されたのがブルドッグなのだそうです。子供の頃ブルドッグの鼻が低いのは噛んだまま息ができるように改良されたのだと聞いた記憶がありますが、正しくないそうです。何れにしてもいまはそういう猛々しい性質は全くなく、おとなしい室内犬にされてしまったそうです。アニマルウェルフェア は動物に対する人間のそういう身勝手な態度を改めようという精神で始まりました。それで、ブルドッグの模型を粘土で作りました。

ブルドッグ
それから大学に飼育されているヒツジも作りました。親子を別々に作り、あれこれ並べ方を考えましたが、この角度が一番いいみたいでした。子羊がお母さんに話しかけるような漢字です。羊毛の感じを出すために、胴体に小さな穴をポツポツと開けた上で、ごく薄い茶色の絵の具で彩色しました。穴を開けるのに釘などを使ったのですが、あまり良くないので、最終的には耳かきを使ったらうまく生きました。

ヒツジ
田中先生はニワトリの飼育ケージの改良をしたそうです。そこでニワトリも作りました。ひよこが一羽、違う方向を向いているのが隠し味です。

ニワトリ親子
ニワトリの作り方を紹介しておきます。
はじめにザクっと鳥らしい形を作ります。この段階ではハトだかカラスだかよくわかりませんが、トサカをつけたり、脚をつけたりすると、ニワトリらしく見えてきます。
それからベースになるオレンジ色を塗ります。そのあとで、色鉛筆で茶色を重ねて羽らしさを出し、トサカを赤く、足を黄色に塗り、目を描いて出来上がりです。
ヒヨコの形は簡単ですが、脚が一工夫いりました。まず太めのアルミの針金の先端をハンマーで叩いて平らにし、先をカットしてからグイと直角に曲げます。
これでは水かきのある「カモの足」なので、黄色く塗ったあとで、「足のない部分」を黒く塗って黒い台の上におけば、「ニワトリの足」に見えます。
1月8日から麻布大学いのちの博物館の新しい企画展示「アニマルウェルフェア とは?」という展示が始まりました。これは「動物福祉という意味ですが、welfareの元々の意味は「幸せであること」で、それが困った人を社会で支える、いわゆる福祉と使われるようになりました。そのため学問としては英語のまま「アニマルウェルフェア 」として使っているようです。
「アニマルマシーン」という本があり、衝撃的な内容でした。例えば柔らかい牛の白い肉がご馳走だということで、生まれたての牛を全く日光を見せることなく狭いところに閉じ込めて飼育するとか、ニワトリを狭い飼育しつにぎゅうぎゅうづめにすると、ストレスで突きが始まるのを、広くするという解決ではなく、なんと突けないように、くちばしをカットするというのです。そういう事例がたくさん挙げられています。これがイギリス社会に衝撃を与え、見直しが始まった、これがアニマルウェルフェア の始まりです。
麻布大学の田中智夫先生はこの専門家で、この3月で定年退職されるので、この展示をすることにしました。下の写真は展示場の様子です。

ぜひお運びください。
麻布大学いのちの博物館でフクロウのワークショップを行ったことは報告しましたが、その後、参加者からの感想が届きました。こちら 最高傑作は「フクロウって食いしん坊だと思いました」です。
15日に麻布大学いのちの博物館で「フクロウの巣からネズミを取り出す」というワークショップをしました。とても楽しく、充実したものになりました。こちら
ノコンギクは最も野菊らしいと思います。ある人が「優しい野菊、薄紫よ」はこれだと確信があると言っていました。
忘れていた歌ですが、そのフレーズの後に冒頭の「遠い山から吹いてくる・・・」と、歌詞もメロディーも蘇ってきたので、自分でも驚きました。今はいろいろなことが頭に入ってこなくて、脳の劣化を感じますが、子供の頃に覚えたことはいつまでもおぼえているものです。


<野菊> 昭和17年 文部省唱歌
遠い山から 吹いて来る
小寒い風に ゆれながら
けだかくきよく 匂う花
きれいな野菊 うすむらさきよ
秋の日ざしを あびてとぶ
とんぼをかろく 休ませて
しずかに咲いた 野辺の花
やさしい野菊 うすむらさきよ
霜が降りても まけないで
野原や山に むれて咲き
秋のなごりを おしむ花
あかるい野菊 うすむらさきよ
11月11日は麻布大学いのちの博物館の「館外活動」のひとつとして「さがまちカレッジ」の子供を対象にした勉強会をしました。題して「動物の頭の骨を観察してみよ!〜サルとタヌキの骨くらべ〜」。タヌキとサルの頭骨標本を観察してスケッチをしてもらう活動をしました。これまでにも何度かしたことがありますが、少しおとなしいようでした。学年が3年生以上にしたので、低学年のように無邪気でないということもあったでしょうし、内気な子供が集まったのかもしれません。でも作品はなかなかで力作もいくつかありました。
今の学校現場ではプラスチックの教材が多いので、本物に接することができたのは良いことだと思います。

スケッチをする
白いニワトリも作りました。この作り方は茶色のとほぼ同じです。体の色を塗らないだけ楽でした。ただし羽根の様子を粘土で表現するのにちょっと手こずりました。
ひよこは小さいし、形も単純なので簡単でしたが、問題は足です。親と同じように針金で作ろうかと思いましたが、何しろ小さいので、針金を3本束ねて3本の指を出して、というのは難しいと思いました。それで思いついたのが、アルミ針金を叩いて潰してみるということです。ハンマーの上に針金を置いて、もう1つのハンマーで叩きました。叩けば叩くほど広がって意外にうまくいきました。マッチの先端の丸い部分を平らにしたような感じです。余計な部分は剪定バサミで切って、最後に直角に曲げます。これでは「水かきあり」でニワトリの足ではなくカモの足です。
カモの足でもまあいいかと思っていたのですが、アルミ針金にペンキを塗って足らしくした後、黒い台におくことにし、水かきの部分を黒くすればニワトリの足になると思い、そうしてみました。
これならまずまずです。ひよこを黒檀の板に載せました。
最終的にお母さんの後をついていくひよこが出来上がりました。
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トンテンカンと針金を潰している音を聞いたカミさんが言いました。
「今度は鍛冶屋さんですか」