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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

フクロウ・ワークショップ

2018-12-15 20:08:13 | 講演


12月15日と翌週の22日に麻布大学いのちの博物館のイベントとしてワークショプ「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」を実施しました。親子連れを中心に31名の参加がありました。

 はじめに当日の内容の解説をしました。それは次のようなものでした。フクロウはネズミを食べることに特殊化した鳥である。八ヶ岳では八ヶ岳自然クラブが長年巣箱をかけて観察をしており、麻布大学で10年くらい巣に残されたネズミの骨を分析している。それによってわかったのは牧場に近い巣ではハタネズミの割合が高く、森に近いとその割合が低くなること。ハタネズミは牧場のような草原にいて草の葉や根など消化しにくいものでも食べるが、アカネズミは森林に住んでおり、果実や動物質など栄養価の高い食物を食べること。フクロウの巣に残った下顎でハタネズミとアカネズミは区別できることなどでした。

 それからネズミの骨の解説をしました。動物の骨にはむずかしい漢字で細かく名前がついており、とくに子供には覚えられません。それでこのワークショップではいくつかの骨にニックネームをつけることで覚えやすくする工夫をすることにしました。前肢の下、つまり肘から下を尺骨といいますが、この骨は上腕骨との関節部分が半円形にえぐれているので、見ようによっては人が大声をあげているように見えなくもありません。そこでこれを「歌うおじさん」と呼びます。腰骨は「寛骨」といいますが、これは左右が分かれて出てきます。それを見るとアルファベットのPに見えるので「P骨」としました。また後肢のヒザから下を「脛骨」といいますが、脛骨は腓骨と並んでいます。それがネズミの場合は癒合しているので「脛腓骨」と呼ばれます。これはバイオリンの弓に似ているので「バイオリン」としました。


ネズミの骨の説明図


 理解をはかるために、以前の展示で使った粘土模型などを展示し、見てもらいました。


ネズミの骨の粘土模型など


 もう一点、今年特別に説明したことがあります。それは弘前のリンゴ園のフクロウのことです。12月2日にNHK総合テレビで弘前のリンゴ園のフクロウのことが紹介されました(「青森のリンゴ園 救世主はフクロウ!」こちら)。それはリンゴ園で働く人が高齢化したためにリンゴの大きい木が伐られて、作業のしやすい若い木に植え直したらネズミにかじられる被害が出るようになった。それに困って、殺鼠剤などで駆除しようとしたが効果がなかった。それは大きい木にはウロ(樹洞)があってフクロウが住んでおり、フクロウがネズミを食べてくれていたのに、それがなくなってネズミが増えたのではないかと考えてフクロウの巣箱をつけたら、フクロウが営巣し、その周りではネズミが減ったという話でした。私(高槻)はこの研究を指導した弘前大学の東先生と長年の知り合いで、相談の結果、そのリンゴ園の2つの巣から巣材を提供してもらうことになり、このワークショップで分析することにしました。

 この説明の後、6つのテーブルにおいた巣材を分析してもらうことになりました。はじめに骨の取り出し方を説明しました。



骨の取り出し方を説明する


分析を始める


皆さんたいへん熱心に分析し、小さい子には長すぎるのではないかと心配しましたが、退屈することなく、集中して分析をしていました。


作業のようす1


作業のようす2(12月22日)


作業のようす3(12月22日)


「これはなんですか?」
という質問に行ってみるとモグラの手だったので、標本を持って行って
「ほら、これと同じでしょう?足に比べてこんなに大きい」
「掘るからだ」
「そうだね、トンネルを掘るから手が特別大きいんだよ」
というと、歓声が上がりました。
しばらくすると小さな男の子が取り出したものを持って来たので、見るとサワガニの体の腹部でした。これはK2という場所の巣から出たもので、周りが湿地なので、毎年サワガニが検出される場所です。

子供達は学校でも理科の勉強をしますが、学校では主に理解して覚えるということをすると思います。でもここでは現物を目の前にして、実際にフクロウが何を食べていたかを自分が明らかにするということですから、楽しくて仕方がないようでした。
 そのほか、鳥の羽毛、胸骨、卵の殻なども出て来ました。弘前のサンプルからはハタネズミが多く出て来て、テレビに内容と符合する結果でした。
 途中で田中さんに八ヶ岳のフクロウを観察し、撮影した写真で、巣立ちの様子などについて解説してもらいました。


八ヶ岳のフクロウの観察結果を説明する田中さん


 初めて出会った人が会話をし、大人が子供に説明したりするなど、楽しい雰囲気で作業が進みました。


「ネズミの頭があったよ」


大人が子供に説明する

取り上げた骨はネズミの骨格を描いた紙の上に並べ、最終的にはシャーレに入れてもらいました。


取り出したネズミの骨をネズミの骨格を描いた紙の上に並べた


作業が進み、調べ終わった巣内の細かな物質が増えて来た


そうこうするうちにあっという間に終了時間の3時が近くなりました。それで感想文を書いてもらい、感謝状を渡しました。


感謝状を手渡す


最後に記念撮影をしました。


記念撮影 12月15日


記念撮影 12月22日


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