リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

遣らずの雨

2021年06月05日 13時08分19秒 | 日々のこと
日経新聞夕刊のコラム「あすへの話題」は数人の担当者が交代で執筆するコラムです。担当者は一定の期間(1、2カ月くらい?)でごそっと入れ替わります。

少し前、コラムを担当されている俳人の黛まどかさんの文章はなかなか味わい深かったです。

はじめに、蕪村の〈さみだれや大河を前に家二軒〉という俳句を紹介して、日本語の雨に関する豊かな表現について触れました。そのあとある韓国人とのエピソードが綴られています。

{  }内は引用です。

{20年程前、韓国へ行った折のこと。尹(ユン)さんという初対面の中年男性がいきなり尋ねてきた。「あなたは"遣(や)らずの雨"を知っていますか?」。我が家では亡き祖母が、来客が帰る頃に雨が降り出すと「遣らずの雨ですよ、もう一杯お茶を飲んでいって下さいよ」と引き留めていたので、その話をすると、尹さんは相好を崩した}


反日教育で育った尹さんは日本に好意をもてなかったのですが、来日して仕事を終え帰国するとき空港で突然雨が降り出しました。


{日本側の担当者が「"遣らずの雨"ですよ。尹さんを帰らせたくなくて雨が降り出したと、日本人は思うのです」と言ったそうだ}


尹さんは、このような詩情豊かなことばを使う民族が野蛮であるはずではないと思い、反日感情が一気に溶けたそうです。

いやぁいいですね。さすが俳人です。今回このコラムの執筆陣は他にミュージシャン、作家、お医者さんなどが執筆されており、今まで同様読みごたえがあるものが多いです。ただおひとりだけ、ご自分の周りの「学園もの」ばかり書いてらっしゃる方がいて、この人だけちょっと残念。