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『月と六ペンス』(読書メモ)

サマセット・モーム(金原瑞人訳)『月と六ペンス』新潮文庫

画家のポール・ゴーギャンをモデルにした小説。ちなみに、月は「狂気もしくは夜空に輝く美」を、六ペンスは「世俗や日常」を象徴しているらしい(訳者あとがき)。

ロンドンで株の仲買人をしていたストリックランドは、突然家族を捨て、パリで画家になる。女性、名誉、お金に目もくれず、一心不乱に絵に打ち込む彼は、やがてタヒチへ。

この小説で描かれているストリックランドは性格破綻者であるため、正直なところ、好きにはなれない。しかし、美に取りつかれた彼の言葉は印象的である。

「おれは、描かなくてはいけない、といっているんだ。描かずにはいられないんだ」(p. 79)

タヒチで家族を持ち、病気にかかり、死の直前まで絵を描き続ける美への執念は怖いほど。世間的には幸せとはいえない彼の生涯ではあるが「自分らしさに満ち溢れる人生」であったといえるだろう。

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