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『子ども時代』(読書メモ)

リュドミラ・ウリツカヤ(絵ウラジミール・リュバロフ、沼野恭子訳)『子ども時代』新潮社

舞台はスターリン時代のロシア。6つの短編からなる本書は、ウラジミール・リュバロフの絵とともに、なんともいえない雰囲気を醸し出している。

子供が困った状況に陥るものの、なぜか状況が好転し、幸せになる、というストーリーは共通しているのだが、どの作品も胸に迫るものがあった。特殊な時代における物語であるにもかかわらず、なぜか共感してしまう。

最も印象深かったのは「キャベツの奇跡」。

孤児の姉妹が、親戚のおばあさんに預けられ、「キャベツを買ってきなさい」という命令を受ける。長い行列に並んでいた姉妹だが、お金を落としたことに気づき落胆して家に帰る。「絶対におばあさんに怒られる」と覚悟をしていた姉妹だったが、たまたまキャベツを荷台に載せたトラックが急カーブで通り過ぎたときに、キャベツが転げ落ちてくる。

不安から安心への瞬間である。

本書を読み、不安を感じながらも、安心の中で暮らしていた子供時代を思い出した。






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