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『部長の大晩年』(読書メモ)

城山三郎著『部長の大晩年』新潮文庫

この本は、異端と呼ばれながらも、俳句の世界で高い評価を受けた永田耕衣の評伝である。三菱系の大会社でナンバー3の部長に出世した彼だが、基本的に仕事よりも俳句を愛していた。

55才で定年退職した後、97歳まで生きた耕衣の生活の中心は「俳句」。仕事ばかりやってきて退職した後は何をしたらいいかわからない会社人間・仕事人間が多い中(たぶん僕もその一人だが)、一生打ち込める「自分の世界」を持っていた耕衣の人生はうらやましい限りである。

しかし、気になったのは、耕衣が俳句に熱中するあまり、家族をほったらかしにしていたこと。「会社から帰ると俳句、休みの日も俳句」であった。

仕事と生活のバランスをとる「ワークライフバランス」の重要性が指摘されているが、仕事と家庭を両立させる「ワークファミリーバランス」という概念もあるらしい。

耕衣は、ワークライフバランスはとれていたが、ワークファミリーバランスについては問題があったようだ。そのことを、本人も後悔していたと書かれている。

ワーク・ライフ・ファミリー・バランスをとることは難しい、と思った。
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授業開始

経営学原理Ⅱの授業が始まった。今年は、小樽商科大学生協に協力してもらい授業を運営する。つまり、生協側から課題を出してもらい、学生たちがチーム単位で解決策を練る、という方法をとる。

提案された改善策は、実際に生協の運営に取り入れて、その効果を検証する、という実践的な授業だ。積極的な姿勢を見せてくれている大学生協に大変感謝している。

今週火曜日に行われた授業では、同生協の岸本専務と岩崎店長が来られ、生協が直面している6つの課題について説明してくれた。課題は以下の通り。

・お昼の食堂レジ混雑解消
・お昼の購買レジ混雑解消
・売れるための購買部の品揃え
・売れるための書籍の品揃え
・学生の実態に合わせた生協の年間の営業時間
・確実に伝わる学生への広報・宣伝方法

学生には、「どの課題に取り組みたいか」の希望を出してもらい、第1希望の課題に割り当てたところ、課題によってチーム数にバラツキが出た。

最もチーム数が多い課題は「売れるための購買部の品揃え」で8チーム。最も少なかったのは「年間の営業時間」で2チームだった。

この授業は、教室内の演習だけでなく、授業時間外に現場に出て、いろいろなリサーチをしてもらう点に特徴がある。各チームがどのような活動をするか楽しみである。
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選べる安心感

企業向けソフトウェアを作っているサイボウズでは、成果重視型の評価制度と、プロセスを重視する年功重視型の評価制度を選ぶことができる仕組みを用意している。

現在のところ成果型を選んだ人が95%。年功型を選んだ5%の方は全員女性だそうだ。しかし、選択型人事制度を導入してから、離職率は20%台から10%を切るまで低下したという。

山田人事本部長は、次のように語っている。

「こういう制度は、使われるかどうかは別として、用意しておくことが重要だと思う。」

学習を促進するためには、適度な緊張感と安心感が必要だと言われている。同じ成果主義の人事制度の下で働いていても、「自分が選んだ」のか、「会社が選んだ」のかでは、心理状態が大きく違うだろう。

同社では、年齢が上がるにつれて、成果型から年功型へ移行する社員が出てくることを予測し、仕組みを整えているという。

メンバーの能力が発揮しやすい『』をつくることが、経営の大事な役目だと思った。

出所:日経産業新聞2008.10.15
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現場の限界

「プロフェッショナルになるためには現場での経験が欠かせない」ということは常識といってもいい。

しかし、現場における学習は万能ではない。福島真人先生によれば、現場における学習には次のような限界もある。

・失敗による学習が積みにくい
・時間的制約がある
・適切な指導が受けられるとは限らない
・あるレベルに到達すると満足してしまう

こうした現場における学習の問題をクリアするため、現場に配属する前に若手をみっちりと研修で鍛える企業も出てきている。

プラント工事や産業機器製造を手がける新日本製鉄系の山九では、従来のOJTでは若手が育たないため、長期研修を義務化している。山九の人材開発担当は次のように語っている。

「親方の背中を見て学ぶにも時間ばかりかかり非効率。親方もチームの仕事を優先しないと納期遅れにもつながり、結局若手が育たない

時間に追われる中で、現場が人材育成機能を失いつつある、といえる。

こうした問題を解決するために、現場と切り離した研修によって基礎力を身につけさせているという。研修の義務化によって、若手エンジニアの技能が向上し、品質や納期が改善したようだ。

同社では、「現場経験から吸収する力」を研修によって養っているといえよう。

この他、塗装機械を手がける旭サナックでも、選抜した新入社員を現場に配置せず、3年間は座学と実技の研修を繰り返す技能塾を設けている。

これからは、研修と現場を有機的につなげて人材を育成していくことが大事になりそうだ。

出所:日経産業新聞2008.9.2、2008.9.30
福島真人『暗黙知の解剖:認知と社会のインターフェイス』金子書房
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主を恐れること、これが知恵である

『見よ。主を恐れること、これが知恵である。悪から離れることは悟りである。』
(ヨブ記28章28節)

すべてを創られた神様の存在を意識することが、知恵の出発点になる、ということだと思う。
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共有型のリーダーシップ

「日本企業における変革リーダーは誰か?」と聞かれたら、武田薬品工業の武田國男会長は5本の指に入るであろう。

日本最大の製薬メーカーである武田薬品工業を、世界に通用する高付加価値企業に変革した立役者である。

変革リーダーと聞くと、一人で何でもやってしまうスーパーマンのような人を思い浮かべる。しかし、表には出てこないけれども、変革リーダーを支える人が存在するものである。

武田会長の場合は、長澤秀行さんであった(変革当時は副社長)。武田氏は長澤氏について、次のように語っている。

「私のスタイルはどちらかと言ったら、恐怖政治なんです。「やらない者はさっさと去れ」と言う方ですから。このことを自分自身でよく分かっているから、クッションになってくれる相棒を探していたわけです。私のやりたいことをうまく翻訳して下へ伝えてくれる人をね。」

「今から振り返っても、長澤さんがクッションになってくれたことはやはり大きかったですね。彼なしでは私は社長として立ち回って経営することができなかった。」

リーダーシップ論では、単独で変革を進める「英雄型リーダーシップモデル」が強調されすぎる点が批判され、最近では、チームで変革を進める「分散型・共有型リーダーシップモデル」に注目が集まっている。

日本企業では、将来の幹部候補を若手の中から意図的に選抜する動きがあるようだ。その際、トップだけを選ぶのではなく、それを補佐する経営陣も合わせて、チームとして選抜・育成することも大切だと思う。

出所:武田國男「「バカ」でなければ改革はできない」日経ビジネス・マネジメント2008, Autumn, Vol.3, 14-19.
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外の空気を吸う

トッパン・フォームズでは、一度会社を辞めた人を再び受け入れる「キャリア・リターン制度」を昨年から導入している。

狙いは何か?

木村人事部長は次のように語っている。

「退職後に積み重ねた経験を評価し、その間に身に付けたスキルを生かしてもらうためだ。子育てにしても転職にしても苦労はつきものだが、その間の経験が人間を磨く。退職後に当社の良さが見えてくることもあるだろう。」

同じ組織にずっといると、悪いところは「こんなもんか」と思ってしまい、良いところには気づかないことが多い。要は、自分の組織を客観的に見ることができなくなってしまう。

同社の狙いは、働きやすい環境づくりによって採用面で優位に立ち、社員のキャリア形成をサポートすることにあるようだ。しかし、「一度外の空気を吸った人」を活用して、組織文化の見直しをすることも可能だと思う。

「何を残して、どこを変えればいいか」、彼らには見えているのではないか。

出所:日経産業新聞2008.10.8
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長短勤務シフト

サービス業におけるムダ削減の一つに、繁忙期と閑散期の業務平準化がある。ヒマなときには人員が余っているのに、忙しいときには残業代や追加人員コストが発生することを回避することである。

宮崎県のシーガイヤを運営するフェニックスリゾートは、繁忙日に残業代が発生せず、従業員にも無理がかからない手法を導入した。それは、「長短勤務シフト」と呼ばれるもの。

一週間のうち、土曜日と日曜日は忙しいので12時間働き、月曜日に休む。火曜から金曜日は閑散日なので1日4時間だけ勤務する、という勤務形態である。この手法によれば、労働時間は法定内になり残業代も発生しないし、社員もゆとりをもって働ける。

さらに、フェニックスで働いた経験のある主婦、学生、定年退職者を登録し、繁忙期にアルバイトとして駆けつけてもらう「SKETTO(助っ人)」と呼ばれる制度も導入している。経験者のため研修の必要もなく、人材派遣会社を通さずに直接雇用できるので手数料も発生しない。

この他、「同一労働同一賃金」の原則で、正社員と非正社員の違いにかかわらず、役割に応じて公平に給与を支払うようにしたという。

上記の試みは、社員の側から見たワークライフの質を高めると同時に、ムリ・ムダを省いてコストを低減することにつながるプロセス・イノベーションである。顧客からは見えない、こうした裏舞台における工夫を積み重ねることが、サービス企業の競争力を高めるといえそうだ。

出所:日経産業新聞2008.10.3
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ロールプレイング

不動産向けのマーケティング会社であるアルケ通信社では、月に2回2時間をかけて、営業担当者が全員参加するロールプレイングを実施している。

以前はチラシ中心のPRを不動産会社に提供していたが、マーケットの変化にともない、ポスティング・DM・タウンメールを利用した提案型営業への移行が急務になったためだ。

営業本部長の佐藤氏は次のように述べている。

「思ったように営業力が発揮できていないのは、部下を教育する時間がないことも一因であることがわかってきました」

同社がまず実施したのは、営業のロジックとステップを明確にした上で、マニュアルを作成し、営業担当者がやるべき基本事項を共有したこと。

このマニュアルに基づき、「新規開拓営業」や「既存顧客への戦略商品の売り込み」といったテーマを決めてロールプレイングを行う。その際、ロープレ・シートを活用して、評価・フィードバックする。

営業の各ステップ毎に点数をつけてフィードバックするが、このときにもっとも盛り上がるという。一つのステップですくなくとも10分は時間をかけるとのこと。

こうした教育は新人にとっては心強いものだろう。マニュアルによって何をやるべきかが明確になり、ロールプレイングを通して、先輩や上司のやり方が見えるし、自分の営業方法についてもフィードバックがもらえる。

この教育によって、新人の新規開拓チームが急成長したようだ。

日本の伝統芸能には「守・破・離」という言葉がある。まずは、基本の型を徹底的に習得し、その後に、自分のスタイルを確立するという意味である。

注意しなければならないのは、マニュアルやロールプレイングに頼るあまり「守」にとどまってしまうこと。これらのツールは、営業担当者が「破・離」の段階に移行することを促すものとして活用することが大事だと思った。

出所:「ロープレのやり方を変えて新人チームが急成長」ザッツ営業2008 Autumn, vol.11, 88-90.
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あなたがたは神の畑、神の建物です

『私たちは神の協力者であり、あなたがたは神の畑、神の建物です。』
(コリント人への手紙Ⅰ、3章9節)

これは、コリント教会の人々に対してパウロが書いた手紙である。
7節には「たいせつなのは、植える者でも水を注ぐ者でもありません。成長させてくださる神なのです。」とある。

神の畑として、私たちは良い作物を実らせることが期待されている。
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