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「ぼくの心をなおしてください」(読書メモ)

原田宗典・町沢静夫著『ぼくの心をなおしてください』(幻冬舎)

躁うつ歴26年の作家原田宗典氏と、精神科医の町沢静夫の対談形式の本である。原田氏が投げかけて、町沢氏が答えるという形で、メンタルヘルスについて浅く広く解説するという内容になっている。

期待していた深みはなかったが、いくつか面白い箇所があったので紹介したい。

まず、うつと対人関係について。

「うつ病は、先進国ほど、あるいは都市部ほど患者数が多くなっています。いわば都市化がもたらしている病気です。なぜかといえば、都市部ほど人間関係が希薄だからです。」(p23)

メンタルでやられる企業人が増えているのは、会社の中での人間関係が希薄になっているからだろう。

では、どうしたらうつ状態から脱することができるのだろうか。

「作家は、自分で落ち込んでいる暗い穴から懸命に這い出ようとして、作品を書きます。同じように「うつ病」の人も、何らかの形で自己表現をすることによって、暗いトンネルに入り込むことを回避できるはずです」(p42)

「音楽療法ということでいえば、みんなが夢中になるのは、じつはカラオケです。(中略)とにかく、カラオケ大会を開くたびに、その効果にはびっくりさせられます」(p187・188)

何かに打ち込める趣味を持つことや、職場の仲間とカラオケに行くことには、精神面において隠れた効能があるようだ。

また、よい精神科医を選ぶ条件について、町沢氏はつぎの4点を挙げている。

・よく勉強していること(40代がいいらしい)
・センスがいいこと(患者の顔を見ただけでピンとくる)
・共感能力があること
・ヒューマニティがあること(協力し合って病に立ち向かう姿勢)

これは、精神科医に限らず、プロフェッショナルの条件だろう。なお、気になるのは次の言葉。

「じつをいえば、精神科医の中には「対人恐怖症」の人が意外に多いのです。私が先輩の精神科医に、「精神科医の20%はおかしいんだ」と言ったら、彼は否定するどころか、こう言い返しました。「20%どころじゃないよ。40%だよ。」(p162)

怖い話である。

そして、患者と話をすることを力相撲にたとえているところが面白かった。

「最初から精神科医が主導権を握って話を進めるのは最悪です。初めは聞き役に徹し、徐々に自分の意見を入れていかなければなりません。話のキャッチボールがスムーズにいくようになったら、ポイントを絞り、自分のほうから質問するように持っていきます。」

「いってみれば、相撲に似ているのではないでしょうか。最初は、押されっぱなしになって土俵際まで後退し、それからじわじわと押し返して、土俵の真ん中でがっぷり四つになります。そこから、今度は本当の力相撲になるわけです。」

こうした姿勢は、コミュニケーションの基本である(なかなかできないが)。

この本を読んで、メンタルヘルスを維持する上での「対人関係とコミュニケーション」「自己表現」の大切さがわかった。
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