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基本がなくては進歩しない

2001年に39億円の赤字に転落した「良品計画」は、松井忠三体制に変わってからV字回復し、2007年度には売上高1620億円、経常利益186億円をあげるまでになった。

はたして松井氏は、何を改革したのか?

問題は大きく2つあった。過剰在庫と海外店舗の不振である。この問題に対して、松井氏がこだわったのは徹底した「しくみの変革」である。次のような改革を打ち出した。

1)バイイング
過剰在庫が生じるのは「右肩上がりの成長を経験してきたバイヤーが欠品を恐れて商品を買いすぎる」のが原因である。では、なぜバイヤーが買いすぎるのを防げないのか?それは、上司がバイヤーの仕事を把握できないからである。なぜ把握できないのか?それは、販売情報をバイヤーが独自のフォーマットで管理しているからである。

松井氏は、バイヤー各自が独自に作成していた帳票類を廃止し、会社が作成した統一フォーマットに切り替えた。

2)商品開発
これに加え、商品開発の仕組みを変えた。新商品を投入してから3週間の販売動向を確認し、計画の30%売れていれば増産し、売れていなければブレーキを踏むように、コンピューターで一元管理する仕組みにした。

3)組織構造
また、各店舗の店長とエリアを管轄するエリアマネジャーのコミュニケーションを迅速にするために、ブロック店長を置いた。

4)店舗マニュアル
さらに、完成やセンスを重んじるセゾン文化の影響で属人的な経験のみにたよった業務の進め方が横行していた。松井氏は、「ムジグラム」と呼ばれる13冊1000ページを超えるマニュアルによって業務を標準化した。

5)出店基準
海外店舗についても、出店基準を厳格化し、不採算店化を防止した。

このように、さまざまな側面から「仕組み」を改革することで、筋肉質の組織を作り上げた。松井氏は次のように語っている。

「スポーツと同じです。基本がなくて最初から自己流だと、進歩はいずれ止まる

この発言に見られるように「業務の基本」を明確にすることで、はじめて社員個人のオリジナリティを積み上げることができる、といえよう。

ここで注目したいのは「マニュアルは常に変えるべきものだ」という松井氏の発言である。マニュアルを練り上げることを通して業務改善を進める姿勢は、しまむらと共通している(良品計画では、しまむらの藤原会長を招聘して学んでいる)。

組織学習論では、ルール・慣行・システム・制度のことを「ルーティン」と呼ぶ。組織は、このルーティンを改善・改革することで学習していくが、松井氏が「基本」と呼ぶのは、ルーティンのことである。

業務の「基本」を練り上げることが、組織が学習する際のポイントになる、といえる。

出所:「良品計画 松井忠三会長:V字回復へ柔軟な豪腕」日経ビジネス2008年7月21日号44-51.
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