松尾睦のブログです。個人や組織の学習、書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。
ラーニング・ラボ
『人が学ぶということ:認知学習論からの視点』(読書メモ)
認知心理学の観点から「学習」をとらえた著作に、『人が学ぶということ:認知学習論からの視点』(今井むつみ、野島久雄著、北樹出版)がある。
著者は、学習を「知識の変容」と「課題に対する情報処理の最適化」という面からとらえている。つまり、人が何かを学ぶとき、知識が変わっていき、ものごとを適切かつスピーディに処理できるようになる。
この本の中で大切だと思ったのは、知識獲得の仕方には、「知識の豊富化」と「知識の再構造化」という2つのタイプがある、という点だ。
知識の豊富化とは、知識の構造はそのままで肉付づけが行われることで、知識の再構造化は、いままでの知識を捨てて、別の知識を取り入れることを意味する。
知識の再構造化は「概念変化」とも呼ばれるが、なかなか起こりにくい。なぜなら、人は、自分の経験を通じて「素朴理論」という、いわゆる持論をもっており、これがなかなか崩れないからだ。
先日、あるセミナーで「部下を教える必要はない、自分の力で学ぶべきだ、という持論を持った管理職がいて、自分の考え方を変えようとしないので困っている」とおっしゃっている人事担当者がいた。
これは素朴理論をかたくなに守り続けている典型例である。今井氏らによれば、概念変化(知識の再構造化)を起こすには、自分の素朴理論と矛盾する現象を自ら観察し、自分の考えが適切でないことに納得するしかないという。
組織学習には、シングルループ学習とダブルループ学習という2つのタイプの学習があるといわれている。前者は、基本的な枠組みは変えない学習、後者は基本的な枠組み自体を変える学習である。個人レベルと組織レベルの違いはあるが、知識の再構造化は、ダブルループ学習と似ている。
組織の風土や文化といったものを変える場合、社員の知識の再構造化(概念変化)を起こさなければいけない。いわゆる「意識改革」である。そのためには、古い考え方が適切でないことを、自ら観察したり体験させる必要がある、といえる。
以上の他に、「生きた知識」と「死んだ知識」という考え方も面白かった。生きた知識とは、必要なときに即座に使うことができる知識であり、死んだ知識とは、ただ単に事実を覚えているだけで、知識体系の中に位置づけられていないため、問題を解決するときに使うことができない知識である。
学校で教わる知識の多くは、特定の問題解決状況と結びついていないため、死んだ知識となっている。ビジネスパーソンの中にも、実践に役立たない死んだ知識ばかりをためこんでいる人がいるだろう。
なお、この本では
・赤ちゃんの学習能力
・学習の臨界期と外国語学習
・熟達のプロセス
・文脈に埋め込まれた学習
といったトピックについて解説されている。
7章の付録には「能と将棋のエキスパート対談」が紹介されており、熟達プロセスを考える上でとても参考になった。
著者は、学習を「知識の変容」と「課題に対する情報処理の最適化」という面からとらえている。つまり、人が何かを学ぶとき、知識が変わっていき、ものごとを適切かつスピーディに処理できるようになる。
この本の中で大切だと思ったのは、知識獲得の仕方には、「知識の豊富化」と「知識の再構造化」という2つのタイプがある、という点だ。
知識の豊富化とは、知識の構造はそのままで肉付づけが行われることで、知識の再構造化は、いままでの知識を捨てて、別の知識を取り入れることを意味する。
知識の再構造化は「概念変化」とも呼ばれるが、なかなか起こりにくい。なぜなら、人は、自分の経験を通じて「素朴理論」という、いわゆる持論をもっており、これがなかなか崩れないからだ。
先日、あるセミナーで「部下を教える必要はない、自分の力で学ぶべきだ、という持論を持った管理職がいて、自分の考え方を変えようとしないので困っている」とおっしゃっている人事担当者がいた。
これは素朴理論をかたくなに守り続けている典型例である。今井氏らによれば、概念変化(知識の再構造化)を起こすには、自分の素朴理論と矛盾する現象を自ら観察し、自分の考えが適切でないことに納得するしかないという。
組織学習には、シングルループ学習とダブルループ学習という2つのタイプの学習があるといわれている。前者は、基本的な枠組みは変えない学習、後者は基本的な枠組み自体を変える学習である。個人レベルと組織レベルの違いはあるが、知識の再構造化は、ダブルループ学習と似ている。
組織の風土や文化といったものを変える場合、社員の知識の再構造化(概念変化)を起こさなければいけない。いわゆる「意識改革」である。そのためには、古い考え方が適切でないことを、自ら観察したり体験させる必要がある、といえる。
以上の他に、「生きた知識」と「死んだ知識」という考え方も面白かった。生きた知識とは、必要なときに即座に使うことができる知識であり、死んだ知識とは、ただ単に事実を覚えているだけで、知識体系の中に位置づけられていないため、問題を解決するときに使うことができない知識である。
学校で教わる知識の多くは、特定の問題解決状況と結びついていないため、死んだ知識となっている。ビジネスパーソンの中にも、実践に役立たない死んだ知識ばかりをためこんでいる人がいるだろう。
なお、この本では
・赤ちゃんの学習能力
・学習の臨界期と外国語学習
・熟達のプロセス
・文脈に埋め込まれた学習
といったトピックについて解説されている。
7章の付録には「能と将棋のエキスパート対談」が紹介されており、熟達プロセスを考える上でとても参考になった。
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