おそらく、日本人にとって最も馴染みがあるワインが、ボジョレーでしょう。
それはもちろん、11月に解禁される新酒“ボジョレー・ヌーヴォー”があるからです。
ボジョレーにはヌーヴォーとは異なる高品質ワインがあることは何度か書いてきました。
ボジョレーには素晴らしいワインがたくさんあるにもかかわらず、ボジョレワインに対する日本の消費者の意識はなかなか変わらないのが現実です。
今日は、今週紹介してきた「Global Wine Meetings Taipei 2016」の中で行なわれた、ボジョレーワインのマスタークラスセミナーを紹介したいと思います。
セミナー講師は、ボジョレワインのアジア・アンバサダーのMinyoung Yoo氏。
Minyoung Yoo (Korea) ―Beaujolais Wine Asian Ambassador
ミンヨンはボジョレー委員会のディプロマを取得した、ボジョレーワインの正式なアンバサダーです。
韓国と中国を拠点に活動し、国内外のさまざまなコンクールの審査員を務めるなど、国際的に活躍しています。
今回のセミナーでは、ボジョレの地理、歴史、文化、土壌etc...の後、ボジョレの10のCru(クリュ)が面白い視点で説明されました。
ボジョレには、12のAOCがあり、10のクリュがあります。
クリュは特定の限定された範囲を表わす言葉ですが、ボジョレーのクリュは村名が付き、10の“クリュ・ボジョレー”と呼ばれます。
AOCの数が12なのは、10のAOC Cru Beaujolaisに、AOC Beaujolais、AOC Beaujolais Villages の2つが加わるからです。
10のクリュ・ボジョレーでは、それぞれ特徴のあるワインが造られていますが、それを覚えるというのはけっこう大変なものです。
これまでは、ただただ暗記せざるをえませんでしたが、今回、画期的なものを紹介してもらいました。
10のクリュを惑星のような球体で表し、高さ、球の大きさ、構成比の色分けで、それぞれの個性を表現しています。
左から)
Julienas、Saint-Amour、Côtes de Brouilly、Brouilly、Morgon
Chenas、Moulin-à-vent、Régnié、Fleurie、Chiroubles
例えば、一番高い位置にある右上のサーモンピンク系の小さい球体はChiroubles(シルーブル)ですが、シルーブルは10のクリュの中で最も高い標高(411m)に畑があります。
逆に、最も低い場所にあるのは、右から5つめの小さなChenas(シエナ)です(252m)。
球体の大きさは栽培面積を表わしており、最も大きいのは左から4つ目のBrouilly(1393ha)で、最小はChenas(294ha)です。
この2点だけからでも、「Chenasは最も標高が低くて栽培面積も最小のクリュ」ということがわかります。
色分けされているのは、土壌の成分構成です。
色別の25の成分構成表の資料がまた別にありまして、それから土壌構成がわかります。
ボジョレーの土壌で特徴的なのはグラニット(花崗岩)です。
グラニットはピノ・ノワールには向かず、ガメイでいい成果を出します。
よって、ボジョレーもブルゴーニュ地方の一部ですが、グラニット土壌であるため、ガメイが植えられているわけです。
上の図で、最もグラニットが多いのが右上のChiroublesです。
グラニット、グラニット混じりの土壌は、ピンク系、赤系のカラーで表現されているので、右から2つ目のFleurie(フルーリー)、3つ目のRégnié(レーニエ)もグラニット成分が多いことがわかります。
左の球体ほどグラニット成分は少ないですよね。
一番左はJulienas(ジュリエナス)、2つ目はSaint-Amour(サンタムール)、3つ目はCôtes de Brouilly(コート・ド・ブルイイ)です。
これらは緑色の構成比が多いですが、Pierre Bleu(ブルーストーン)系土壌です。
10のクリュは、おおざっぱに3つのカテゴリ分けされますので、これも覚えておくといいでしょう。
ソフトで軽快なタイプ
Régnié、Chiroubles、Brouilly
よりフルボディなタイプ
Fleurie、Saint-Amour、Côtes de Brouilly、Julienas
長期熟成タイプ
Chenas、Morgon、Moulin-à-vent
私たちは、どのクリュが良くて、どれが良くない、という見方をついついしがちですが、上の惑星図を見た後に味わいの傾向を見ると、長期熟成タイプだから品質がいい、というものではなく、10のクリュそれぞれに個性があって面白い、と考える方が、ワイン選びが楽しくなりませんか?
セミナーの後半には、クリュ・ボジョレーとアジアの食のマッチングが紹介されました。
10のクリュと、アジアを代表する6つのフードのマッチングが表になった資料があるのですが、6つのフードすべてであまりオススメではないのが、Chiroublesでした。
日本のフードは「寿司」でしたが、ダメだしされたChiroublesでも、赤身のマグロなどはいけそうな気がします。
ちなみに、Chenasも寿司にNot recommendedでした。
寿司にオススメのクリュは、Régnié、Fleurie、Saint-Amourだそうですので、興味ある方は、NGクリュも含めて色々試してみてはいかがでしょうか?
ワイン業界的には、8月の終わり頃には早くもボジョレー・ヌーヴォーの話題が出てきますが、ヌーヴォーはヌーヴォーとして楽しむとして、個性的なクリュ・ボジョレーに目を向ける時期に来ているのではないでしょうか?
上の画像は今回のセミナーで出されたワインの一部ですが、左端はガメイとシラーのブレンド!そんなものがあるの?とびっくりしましたが、さすがに格付けは“Vin de France”でした。
こんな面白いワインもあるんですね。
Thank you Minyoung!
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