ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

【続】ドイツワインのワインの動き@日本

2017-01-21 16:50:18 | ワイン&酒
先週、「2016 WINE TRADE MONITOR」(Sopexa実施)の調査結果に触れ、その中で、ドイツワインに対する日本の輸入業者、卸、小売り店などの業界関係者らの評価が5年前と比べて20ポイント下がっていることと、ドイツワインへの考察を書きました。
コチラをご覧ください

この記事への反響が思いのほかありました。
そこで、もう少し、ドイツワインの話 を書きたいと思います。




上記の調査結果では、日本市場でドイツワインの評価が下がったことだけが発表され、その理由については何も記述されていませんでした。
私の方で推測してみましたが、書き出していて、テンションが下がってきました(苦笑)

【輸入、販売側の理由】
1)ドイツワインの知識がない(地方、畑、格付け、品種など)
2)客に勧める理由が見つからない
3)客の反応が鈍い
4)ドイツワインに対する客の先入観(甘い)がある
5)店の料理や雰囲気に合わない

【購入側の理由】
1)どれを選んでいいかわからない
2)味わいの予測がつきにくい
3)暗い、重い、閉鎖的、ストイックなイメージ
4)ドイツワインを選ぶメリットがわからない
5)どう飲んでいいかわからない

などなど。

ホント、テンションだだ下がりですが、せっかく書き出したので、少し説明を加えます。

フランスやイタリアのワインは日本市場では非常にポピュラーなので、扱う側もそれなりに勉強しています。
加えて、フランスやイタリアのワインは、フランス料理店はもちろん、イタリアンでも、和食店でも、アジアン&エスニック料理店でも、カフェでも、ごく自然にメニューにオンリストされています。コスパのいいスペインワインも強豪です。
店の棚、レストランのワインリストに載せられる数は限られてきますから、販売側が自信をもって説明でき、客受けのいいものを選んでいくと、ドイツワインはレギュラー入りが難しくなってくるのでしょうね。




ここで、イメージは置いといて、ワインの「品質」の点から見てみましょう。

ドイツワインの品質は、フランスワインより悪いのでしょうか?
イタリアワインの品質は、ドイツワインより良いのでしょうか?


どの国にも素晴らしいワインがあります。
その一方、ワインと呼ぶには…というものだってあります。

つまり、「国」で「品質」の優劣を比較するのはナンセンスです。
もちろん、まだ成熟の途上にあるワイン新興国などもありますので、すべてのワイン生産国に当てはまるとはいえませんが。



Weingut Karl Heidrich (Bacharach, Mittelrhein) 2015年訪問


さて、ドイツワインの品質が問題なく、素晴らしいワインが存在する、ということがわかったとしても、手を伸ばすことを阻む「壁」が立ちはだかっています。
その壁の正体は「閉鎖性」「専門性」では? と私は考えます。

かつて、舶来物の輸入ワインは、“高価で、贅沢な、よそゆきの、特別な”飲み物でした。
その昔、日本へのワイン輸出量において、ドイツワインがNo.1だった時代があったんです。

ドイツ語で書かれた判読しがたいエチケット、複雑な格付けと畑名、土地ごとに異なる土壌タイプ、知的で高貴、稀少で高価。
―そんなふうに認識されていたドイツワインを手にすることができた人は、医者か、弁護士か、外交官などのリッチなインテリエリート層?

現代においては、ドイツは、ワイン法、基準、呼称がよく変わり、理解しにくい&覚えにくく、結果として、やはり近寄りにくい印象でしょうか?

でも、ドイツの人たちはドイツワインを日常的に飲んでいます。
決して難しいとは思っていません。
若い人も飲んでいます。



フランクフルト市内の“クラインマルクトハレ”市場のワインショップ直営店で立ち飲み
参考記事


フランスも、イタリアも、そしてドイツも、自国のワインを飲んでいます。
その事実を受け止めることができれば、ドイツのワインも、フランスやイタリアと同じように楽しむことができるのでは?

まずは飲んでみる。

でも、飲む機会がない、買う場所がない。
と、またふり出しに戻ってしまうわけで…




それでも、ドイツワインは日本市場に入ってきています。

私のオススメは、白ならヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シルバーナ
シルバーナはフランケン地方の主力ブドウで、骨格のしっかりとした辛口ワインになります。飲みごたえがあり、食事にも合わせやすいものが多いですし、このところフランケン地方は気になる生産者がたくさん出てきているので、お勧めです。



どんなワインもまったく同じではなく、その必要もありません。
さまざまな違いを楽しむのがワインの醍醐味
  そう私は思っています。



Baden地方のKaiserstuhl(カイザーシュトゥール)のブドウ畑


なお、近いうちに、何らかの形のカジュアルなドイツワインの会の開催を検討中です。
ご案内できるようになりましたら、告知します。


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