ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

世界ワイン市場におけるトレンドと戦略

2016-08-04 10:52:13 | ワイン&酒
昨日は、「Global Wine Meetings Taipei 2016」のオーガナイザーでGlobal Wine & Spirits(GWS)のシニアディレクターである Lindsay Watkinさんのインタビュー記事をアップしました。

本日は、会期中にリンゼイさんが行なったマスタークラスセミナーを紹介します。

Theme: Trends and Strategies in the Global Wine Market


Lindsay Watkin, Sr Director GWS 

テーマは、世界ワイン市場におけるトレンドと戦略。
リンゼイさんの話は、現在の世界のワイン市場を捉えることから始まり、台湾のワイン市場、ターゲット設定、今後の攻略に及びました。



まず、世界のワイン市場についてですが、
生産量は全体的にダウン傾向にあり、ヨーロッパもそうです。
チリは生産量が上がっています。
チリのお隣のアルゼンチンはダウン傾向にあります。

チリワインについては、先日のウンドラーガの記事の冒頭でも書きましたが、2015年の日本への輸出量がフランスを抜いて1位になったことからも、好調ということがわかります。
さらに、ウンドラーガがそれぞれのブドウの栽培に最適の土地を積極的に探索していることからも、チリではブドウ畑が増える余地がまだまだあるわけです。


全世界のワイン輸出量は、この20年で2倍に増えています。
ボリュームはEUが依然としてリーダーで、EU生産量の58%が輸出されています。

輸出が増えている国としては、ニュージーランド、オーストラリア、チリ、南アフリカで、この20年で、なんとボリュームで370%増!
南半球が好調ですね。



ワイン消費量は、ヨーロッパが減少傾向で、アジア-パシフィック地域(アジア&オセアニア)が増加しています。

【2009年】(総量2381.5 ミリオンケース)
ヨーロッパ67%、アメリカ大陸22%、アジア-パシフィック8%、アフリカ&中東3%

【2013年】(総量2436.4 ミリオンケース)
ヨーロッパ63%、アメリカ大陸23%、アジア-パシフィック11%、アフリカ&中東3%、

【2018年】(総量2507.4 ミリオンケース) ※予測
ヨーロッパ61%、アメリカ大陸24%、アジア-パシフィック12%、アフリカ&中東3%、

※1ケースは9リットル


国別消費量は、2014~2018年の予測では、
中国24.8%、アメリカ11.3%増と大きく伸び、フランス、イタリア、スペインが減少。

アメリカはフランスを超えて世界最大のワイン消費国になり、一人あたりのワイン消費量は12リットル、年間総消費量は3.8ビリオンリットルになるよ予測されています。
アメリカはスパークリングも伸びています。

中国のワイン消費量はこの10年で急速に成長し、ワイン消費量は5位にランクインするという予測が出ています(1位アメリカ、2位フランス、3位イタリア、4位ドイツ、5位中国)

他が成長しても、EUは世界の消費の50%を維持するようです。



さて、Global Wine Meetingsの舞台となった台湾を見てみましょう。

台湾はアジア3位のワインマーケットです。
2014年度のアルコール輸入額は942.7ミリオン米ドル。
うち赤ワインが89%、白ワインが10%、ロゼワインが1%で、ビールや日本酒なども輸入しています。

台湾へのワイン輸出国は、
1位フランス(40%)、2位スペイン(14%)、3位チリ(12%)、4位イタリア(9%)、4位アメリカ(9%)、6位オーストラリア(6%)

地方別では、ボルドー、ブルゴーニュ、コート・デュ・ローヌ、シャンパーニュと、フランス強し!

ブドウ品種別では、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングと、国際品種が並びます。

ワイン消費の傾向を見ると、女性と若い層(1980年代~1990年代生まれ)が増えているといいます。

私も台北の中心地のスーパーのワイン売り場に足を運んでみましたが、販売されている輸入ワインの価格は、日本よりも高いと感じました。
例えば、日本で1000円少々で売られているワインが、台湾では1500円くらいに値付けされていました。
他の物価と比べても、ワインは高いように思います。

ビールは安く、しかもおいしいので、一般消費者はビールの方を好むのでは?と思うのですが、さて、どうなんでしょう?

台湾の世代構成は、ミレニアル36%、ベビーブーマー34%、GenX18%、70+12%となっています。
最も多いミレニアルは1980年代から2000年代初頭(2000年前後)に生まれた世代で、ワイン消費傾向の“若い層”にピタリと当てはまります。



GWSは、このミレニアル(Millenials)を最大のターゲットとし、 4つの傾向(Foodies)に分けました。

Traditionalist(37%)  ※伝統主義者
低収入・低学歴の傾向。ソーシャルメディアをあまり利用しない。健康意識は高くない。

Bon Vivant(28%) ※よく飲み、よく食べ、人生を楽しむ人
外食もテイクアウトもデリバリーも好き。特定の食べものや食材を避ける傾向なし。ソーシャルメディアはそこそこ利用。

Food Purist(19%) ※食品純粋主義者
モバイルからのwebアクセスを好み、ソーシャルメディアを積極的に活用。ただし、意見やブランドの選択などでソーシャルメディアの影響を受ける傾向は低い。特定の食べものや食材などを原料を避ける傾向がある。

Balance Seeker(16%) ※バランス探究者
高収入・高学歴の傾向。最もソーシャルメディアに影響を受けるタイプ。健康バランスを重視。



GWSでは、最も構成比が少ないにものの、ワイン消費の中心となるターゲットは“Balance Seeker”であると設定しました。

つまり、“Millenials × Balance seeker” をメインターゲットとし、ソーシャルメディアを最大限にワインビジネスに活用していくという戦略です。

実際、オンラインビジネス、さまざまなアプリケーションの活用は、現代のワイン産業のブランドセールスに欠かせないものになっています。
それは、B2Bだけではなく、B2C(対一般消費者)も当然入ってきます。

消費者の方は、飲んだワインのコメントをネット上に投稿したり、投稿された情報を引き出して活用したり、ということがすっかり当たり前になってきました。
ワイン販売者は、オンライン上での消費者との対話を無視することができなくなりました。

オンラインによる情報提供やコミュニケーション例としては、
ワインなら、世界最大のWine APP“VIVINO”(これは知っています)
日本酒なら、APP“sakefan World”(英語版、こんなのあるんですね!)


VIVINOは利用している人も多いのでは?

GWSは、2000年から世界のB2Bネットワークのリーダーとして、テクノロジーと強力なITインフラで、ワイン&スピリッツの生産者とバイヤーを繋ぎ、完璧な解決策を提供しているとか。
彼らがカバーしているのは、世界65カ国6700の企業に及ぶそうです。

一般消費者にはあまり関係のない話かもしれませんが、ワインビジネスに関わっている方なら、GWSのことはメモリに入れて入れておいてください。
彼らのHPも要チェックです。



After seminar ― Thanks Lindsay!

Global Wine & Spirits
http://www.globalwinespirits.com/



ところで、GWSによるワイン消費のターゲット設定を日本に当てはめてみると、現実的なワイン消費層は“Generation X”(およそ1960年代~1980年生まれ)、Foodiesは“Balance Seeker” がコアでしょうか。

とはいえ、若い世代の消費者を育てなければ未来がありませんので、日本でも、20代から30代前半の“Millenials”は外せません。

Foodiesでは、Balance Seekerはもちろんのこと、Bon VivanやFood Puristもいいワインファンになってくれそうな気がしますけれど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする