2015年3月2日、オーストリアワインマーケティング協会 日本担当のクリスチャン・ドヴォラン氏が初来日し、グリューナー・ヴェルトリーナーの垂直テイスティング を中心としたワインセミナーが、ウェスティン東京で開催されました。
グリューナー・ヴェルトリナー はオーストリア原産のブドウ品種。
オーストリアを代表するブドウ品種 として、だんだんと知られるようになってきました。
オーストリアでの栽培面積は、全体の29.4%の13518ha。
主要栽培地域はニーダーエステルライヒとブルゲンランド。
グリューナー・ヴェルトリナーの栽培比率を見ると、ニーダーエステルライヒでは約44%、ブルゲンランドでは約10%。いずれもオーストリア東部で、ニーダーエステルライヒは北部に位置し、ブルゲンランドはハンガリーとの国境付近に南北に広がっていますが、いずれもドナウ川の流域という共通点があります。
クリスチャン・ドヴォラン氏 (オーストリアワインマーケティング協会 日本担当)
グリューナー・ヴェルトリナーは、その土地の土壌をよく反映するブドウといわれます。
あまり乾燥し過ぎず、あまり肥沃でなく、湿り過ぎてもいない土地を好みますが、オールラウンダーで育てやすい品種だとクリスチャン氏は言います。
しかし、「収量」 が品質に影響を及ぼす品種でもあります。
グリューナー・ヴェルトリナーのワインは、基本的には、軽やかで、酸がフレッシュで、ピリリとした白コショウ的なペッパリーさがあり、種の大きなフルーツ(桃、アンズ、梅など)の風味がする といわれます。
しかし、先述の「収量」、これから紹介する土壌、畑の格付け、ワインのスタイル、生産者のコンセプトなどによっても、異なる味わいのワインになります。
グリューナー・ヴェルトリナーが育つ「土壌」は、レス(黄土。堆積岩が削られて粉になった砂塵が風に運ばれ、堆積したもの)、グナイス(片麻岩)、ライムストーン(石灰岩)、コングロメレート(礫岩)の4つ。
土壌の構成要素としてキーになるのは、クレイ(粘土) と 石灰。
クレイ は最も影響を与える要素で、例えば、ローム は粘土質を多く含む土壌です。
含有率が高くなると、保水性に富み、ヘビーで肥沃な土壌となり、土壌が温まるのも冷えるのもゆっくりです。ワインはパワフルでリッチなものになります。粘土状の シルトもそうです。
含有率が低いと逆のことが言え、保水性が弱く、痩せた土壌となり、早く温まり、早く冷えます。
ワインは繊細で、ナーバスな酸を持ち、パワフルではないものになります。
石灰 が多いと、栄養が多く、ブドウが熟すのが早くなります。ワインは、塩のニュアンスがあり、熟した黄色いフルーツ、パイナップルのような風味のあるものになります。
オーストリアの レス は石灰を豊富に含みます。
石灰が少ないと、ゆっくり育ちます。ワインはミネラル感があり、グレープフルーツのような柑橘の風味が現れます。
これを産地の土壌に当てはめていくと、それぞれの土地のワインの性質の傾向がわかります。
Winzer Krems eG 2013/2012/2001 Kremstal
(輸入元:Estate Wines)
ヴァインフィアテル :レス、花崗岩、ライムストーン
トライゼンタール : レス、グラヴェル(砂利)、ライムストーン
カンプタール : レス、グナイス、ローム
クレムスタール : レス、グナイス、ライムストーン
ヴァッハウ : レス、結晶岩
ヴァーグラム : レス、グラヴェル
土壌の構成要素がワインに与える影響は、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリナーだけでなく、他のブドウ品種にもいえることですから、これは覚えておくといいでしょう。
今回のセミナーの講師のひとり、ワイン評論家の田中克幸氏によると、
「グリューナー・ヴェルトリナーは、香りは軽く、ハーブや白コショウのニュアンスがあるが、味は必ずねばる」
グリューナーには赤ワインに共通する独特の苦み的なものがあり、それがコクの強さとなるため、また、形は丸く、ねばりの少ない他のワインに比べて、ねばりのテクスチャーのある料理が合う、と言います。
つまり、「清涼感がある香り」と、「ねばりのある味のリッチさ」のコンビネーション こそが、グリューナーらしさ、というわけ。
さらに話は続き、ヴィンテージ(収穫年)を考える際は、「開花」と「夏の暑さ」がポイント。
「開花」までが短かかった年のワインは、料理は焼いたものに合い、
開花までが長かった年のワインは、煮たもの、蒸したもの、生のものに合います。
「夏の暑さ」とは、夏に暑かったか?夏が夏らしかったか?という意味で、
暑かった年は、広がりが大きく、形も大きいワインになり、
涼しかった年は、形が小さく、コンパクトなワインになります。
よって、前者ならステーキ肉、後者は薄切り肉のしゃぶしゃぶが合います。
近年のヴィンテージを振り返ると、
2008年は涼しい年だったが緊張感はなく、
2009年は味が真ん中に集まり、アルコールが高くてトロピカルな風味が現れ、
2010年は味が外側に広がり、涼しくて収量は少ないが濃縮し、シリアスさや緊張感があり、
2011年は味が真ん中に集まってフォーカスが合い、開花は早く終わったが暑い年となり、
2012年は遅霜で収量は少ないが、夏は暑く、適切な時期の降雨で良い酸が出て、
2013年は開花が短く、夏は暑いが、目まぐるしい天候でメリハリ感、固く引き締まった味
といった感じになります。
白ワインによくいわれる 「酸」 については、
秋に気温が下がり、収穫が遅なった年は酸があるので、酸のきいた料理に、
収穫が早かった年は酸が少ないので、酸のない料理によく合います。
左) Brundlmayer 2013/2011/2004 Kamptal
右) Jurtschitsch 2013/2012/2010 Kamptal
(輸入元:AWA)
どちらもカンプタールのLamm(ラム)という単一畑のReserveワイン。
カンプタールのワインはローム土壌ぽい味が(ねばり系)表現されます。
この2つはどちらもラム畑ですが、ユルチッチの方はロームの味が強く、ブリュンデルマイヤーはレス(シュルと主体)が強く出た味になっています。
2004年は貴腐ワイン的な味わいの辛口。ねっちりした感じがあり、白コショウっぽさはありません。
一般的なグリューナーっぽさがないので、内臓系の料理がオススメ。
2010年は日照が足りない中で、いかに土壌の養分を吸い上げるかがポイントでしたが、
暑い年だった2011年は、やりすぎないようにコントロールが必要でした。
グリューナーのブドウの果皮は厚いため、スキンコンタクト(果皮を漬け込む)を長くすると、やりすぎた味のワインになってしまうからです。
同じ生産者の中ではヴィンテージ違い(垂直試飲)ですが、同地区で同じ畑の2つの生産者違いにもなっていました。
今回の試飲ワインの中には、2001年、2004年といった古いヴィンテージのワインもありました。
2001年のワイン(クレムス)は、成熟を重ねて華やかさが開き、まろやかでリッチな味わいながらも酸が残り、フレッシュな若いグリューナーとは違う個性を見せてくれました。
2004年のワイン(ブリュンデルマイヤー)は、エキス分の味が濃く、しなやかで官能的。しっとり感、複雑味、深みがあり、味が広がる感じがしました。
ひとくちに、グリューナー・ヴェルトリナーといっても、地域、収量、年、土壌、熟成etc...といった要素によって、ワインの味、スタイルが変わってきます。
それによって、合う料理 も変わってきます。
まずは、グリューナー・ヴェルトリナーの基本の姿を押さえること。
その先は、自分の好みで選ぶもよし、販売者なら、客の好みや要望に合わせた味のワインを地域や畑、ヴィンテージで提案をしていく義務がある、と締めくくられました。
セミナー後、グリューナーだけでも30種のワインが紹介されました
グリューナーだけでなく、他の品種のさまざまなオーストリアワインも
ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト、ザンクトラウレント、ピノ・ノワールなどの赤ワイン
オーストリアワインの輸出統計を見ると、欧州圏以外では、アメリカ、中国に次いで、日本は3位(全体では10位)
日本市場では0.2%のシェアで12位です。
数字を見ると、まだまだ日本市場では少数派で、価格も安くはありませんが(他の国にあるような激安ワインはありません)、ここ10年でかなり輸入されるようになり、店頭でもよく見かけるようになってきました。
グリューナー・ヴェルトリナー のような、その国を代表する個性あるワインが広まっていくのは、我々消費者にとっても嬉しいことだと思います。
しかも、フレッシュで軽やかなクラシックタイプから、長期熟成可能なフルボディタイプ、甘口の貴腐ワインまで、実は意外と多彩です。
グリューナー未体験の方はもちろん、すでにグリューナーデビューしている方も、この春はグリューナーにどっぷりハマってみるのもいいかもしれませんよ?(笑)
現在、幕張メッセで開催されている「FOODEX 2015」のオーストリア ブースでも、グリューナーをはじめとしたさまざまなオーストリアワインが多数紹介されています。(3月6日まで)
オーストリアワインマーケティング協会のクリスチャン・ドヴォラン氏も同協会のブースに立っていますので、ぜひ会いに行ってください。
私もFODEXで彼と一緒に再度テイスティングをしてきました
また、各社ブースでもたくさんのオーストリアワインが紹介されていますので、必飲です
(注意)FOODEXは一般の方の入場はできません
グリューナー・ヴェルトリナー はオーストリア原産のブドウ品種。
オーストリアを代表するブドウ品種 として、だんだんと知られるようになってきました。
オーストリアでの栽培面積は、全体の29.4%の13518ha。
主要栽培地域はニーダーエステルライヒとブルゲンランド。
グリューナー・ヴェルトリナーの栽培比率を見ると、ニーダーエステルライヒでは約44%、ブルゲンランドでは約10%。いずれもオーストリア東部で、ニーダーエステルライヒは北部に位置し、ブルゲンランドはハンガリーとの国境付近に南北に広がっていますが、いずれもドナウ川の流域という共通点があります。
クリスチャン・ドヴォラン氏 (オーストリアワインマーケティング協会 日本担当)
グリューナー・ヴェルトリナーは、その土地の土壌をよく反映するブドウといわれます。
あまり乾燥し過ぎず、あまり肥沃でなく、湿り過ぎてもいない土地を好みますが、オールラウンダーで育てやすい品種だとクリスチャン氏は言います。
しかし、「収量」 が品質に影響を及ぼす品種でもあります。
グリューナー・ヴェルトリナーのワインは、基本的には、軽やかで、酸がフレッシュで、ピリリとした白コショウ的なペッパリーさがあり、種の大きなフルーツ(桃、アンズ、梅など)の風味がする といわれます。
しかし、先述の「収量」、これから紹介する土壌、畑の格付け、ワインのスタイル、生産者のコンセプトなどによっても、異なる味わいのワインになります。
グリューナー・ヴェルトリナーが育つ「土壌」は、レス(黄土。堆積岩が削られて粉になった砂塵が風に運ばれ、堆積したもの)、グナイス(片麻岩)、ライムストーン(石灰岩)、コングロメレート(礫岩)の4つ。
土壌の構成要素としてキーになるのは、クレイ(粘土) と 石灰。
クレイ は最も影響を与える要素で、例えば、ローム は粘土質を多く含む土壌です。
含有率が高くなると、保水性に富み、ヘビーで肥沃な土壌となり、土壌が温まるのも冷えるのもゆっくりです。ワインはパワフルでリッチなものになります。粘土状の シルトもそうです。
含有率が低いと逆のことが言え、保水性が弱く、痩せた土壌となり、早く温まり、早く冷えます。
ワインは繊細で、ナーバスな酸を持ち、パワフルではないものになります。
石灰 が多いと、栄養が多く、ブドウが熟すのが早くなります。ワインは、塩のニュアンスがあり、熟した黄色いフルーツ、パイナップルのような風味のあるものになります。
オーストリアの レス は石灰を豊富に含みます。
石灰が少ないと、ゆっくり育ちます。ワインはミネラル感があり、グレープフルーツのような柑橘の風味が現れます。
これを産地の土壌に当てはめていくと、それぞれの土地のワインの性質の傾向がわかります。
Winzer Krems eG 2013/2012/2001 Kremstal
(輸入元:Estate Wines)
ヴァインフィアテル :レス、花崗岩、ライムストーン
トライゼンタール : レス、グラヴェル(砂利)、ライムストーン
カンプタール : レス、グナイス、ローム
クレムスタール : レス、グナイス、ライムストーン
ヴァッハウ : レス、結晶岩
ヴァーグラム : レス、グラヴェル
土壌の構成要素がワインに与える影響は、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリナーだけでなく、他のブドウ品種にもいえることですから、これは覚えておくといいでしょう。
今回のセミナーの講師のひとり、ワイン評論家の田中克幸氏によると、
「グリューナー・ヴェルトリナーは、香りは軽く、ハーブや白コショウのニュアンスがあるが、味は必ずねばる」
グリューナーには赤ワインに共通する独特の苦み的なものがあり、それがコクの強さとなるため、また、形は丸く、ねばりの少ない他のワインに比べて、ねばりのテクスチャーのある料理が合う、と言います。
つまり、「清涼感がある香り」と、「ねばりのある味のリッチさ」のコンビネーション こそが、グリューナーらしさ、というわけ。
さらに話は続き、ヴィンテージ(収穫年)を考える際は、「開花」と「夏の暑さ」がポイント。
「開花」までが短かかった年のワインは、料理は焼いたものに合い、
開花までが長かった年のワインは、煮たもの、蒸したもの、生のものに合います。
「夏の暑さ」とは、夏に暑かったか?夏が夏らしかったか?という意味で、
暑かった年は、広がりが大きく、形も大きいワインになり、
涼しかった年は、形が小さく、コンパクトなワインになります。
よって、前者ならステーキ肉、後者は薄切り肉のしゃぶしゃぶが合います。
近年のヴィンテージを振り返ると、
2008年は涼しい年だったが緊張感はなく、
2009年は味が真ん中に集まり、アルコールが高くてトロピカルな風味が現れ、
2010年は味が外側に広がり、涼しくて収量は少ないが濃縮し、シリアスさや緊張感があり、
2011年は味が真ん中に集まってフォーカスが合い、開花は早く終わったが暑い年となり、
2012年は遅霜で収量は少ないが、夏は暑く、適切な時期の降雨で良い酸が出て、
2013年は開花が短く、夏は暑いが、目まぐるしい天候でメリハリ感、固く引き締まった味
といった感じになります。
白ワインによくいわれる 「酸」 については、
秋に気温が下がり、収穫が遅なった年は酸があるので、酸のきいた料理に、
収穫が早かった年は酸が少ないので、酸のない料理によく合います。
左) Brundlmayer 2013/2011/2004 Kamptal
右) Jurtschitsch 2013/2012/2010 Kamptal
(輸入元:AWA)
どちらもカンプタールのLamm(ラム)という単一畑のReserveワイン。
カンプタールのワインはローム土壌ぽい味が(ねばり系)表現されます。
この2つはどちらもラム畑ですが、ユルチッチの方はロームの味が強く、ブリュンデルマイヤーはレス(シュルと主体)が強く出た味になっています。
2004年は貴腐ワイン的な味わいの辛口。ねっちりした感じがあり、白コショウっぽさはありません。
一般的なグリューナーっぽさがないので、内臓系の料理がオススメ。
2010年は日照が足りない中で、いかに土壌の養分を吸い上げるかがポイントでしたが、
暑い年だった2011年は、やりすぎないようにコントロールが必要でした。
グリューナーのブドウの果皮は厚いため、スキンコンタクト(果皮を漬け込む)を長くすると、やりすぎた味のワインになってしまうからです。
同じ生産者の中ではヴィンテージ違い(垂直試飲)ですが、同地区で同じ畑の2つの生産者違いにもなっていました。
今回の試飲ワインの中には、2001年、2004年といった古いヴィンテージのワインもありました。
2001年のワイン(クレムス)は、成熟を重ねて華やかさが開き、まろやかでリッチな味わいながらも酸が残り、フレッシュな若いグリューナーとは違う個性を見せてくれました。
2004年のワイン(ブリュンデルマイヤー)は、エキス分の味が濃く、しなやかで官能的。しっとり感、複雑味、深みがあり、味が広がる感じがしました。
ひとくちに、グリューナー・ヴェルトリナーといっても、地域、収量、年、土壌、熟成etc...といった要素によって、ワインの味、スタイルが変わってきます。
それによって、合う料理 も変わってきます。
まずは、グリューナー・ヴェルトリナーの基本の姿を押さえること。
その先は、自分の好みで選ぶもよし、販売者なら、客の好みや要望に合わせた味のワインを地域や畑、ヴィンテージで提案をしていく義務がある、と締めくくられました。
セミナー後、グリューナーだけでも30種のワインが紹介されました
グリューナーだけでなく、他の品種のさまざまなオーストリアワインも
ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルト、ザンクトラウレント、ピノ・ノワールなどの赤ワイン
オーストリアワインの輸出統計を見ると、欧州圏以外では、アメリカ、中国に次いで、日本は3位(全体では10位)
日本市場では0.2%のシェアで12位です。
数字を見ると、まだまだ日本市場では少数派で、価格も安くはありませんが(他の国にあるような激安ワインはありません)、ここ10年でかなり輸入されるようになり、店頭でもよく見かけるようになってきました。
グリューナー・ヴェルトリナー のような、その国を代表する個性あるワインが広まっていくのは、我々消費者にとっても嬉しいことだと思います。
しかも、フレッシュで軽やかなクラシックタイプから、長期熟成可能なフルボディタイプ、甘口の貴腐ワインまで、実は意外と多彩です。
グリューナー未体験の方はもちろん、すでにグリューナーデビューしている方も、この春はグリューナーにどっぷりハマってみるのもいいかもしれませんよ?(笑)
現在、幕張メッセで開催されている「FOODEX 2015」のオーストリア ブースでも、グリューナーをはじめとしたさまざまなオーストリアワインが多数紹介されています。(3月6日まで)
オーストリアワインマーケティング協会のクリスチャン・ドヴォラン氏も同協会のブースに立っていますので、ぜひ会いに行ってください。
私もFODEXで彼と一緒に再度テイスティングをしてきました
また、各社ブースでもたくさんのオーストリアワインが紹介されていますので、必飲です
(注意)FOODEXは一般の方の入場はできません