ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

オーストラリア南バロッサの「Bethany」を飲む【前編】

2013-08-30 14:50:07 | ワイン&酒
豪州、バロッサヴァレーのワイン、と聞くと、果実味豊かでアルコール度数が高く、ガツンとパワフルなワインをつい思い浮かべてしまう人も多いかと思います。しかし、先週来日したバロッサの「Bethany Wines」ジェフ・シュラペル氏 がつくるワインは、そのイメージを覆すものでした。


Geoff Schrapel - Bethany Wines 5代目

ポーランドからオーストラリアのバロッサに移民として入り、1852年にブドウ畑を拓いたヨハン・シュラベル以降、シュラペル家はブドウ栽培農家として代々続いてきました。

5代目となるジェフと弟のロバートが、家族経営のワイナリー「Bethany Schrapel Family Vineyard」を設立したのは1981年のこと。

設立から30年を過ぎた現在、彼らのワインは国内外で高く評価され、Decanter誌のアワードや、インターナショナルワインチャレンジのメダルなども受賞しています。

ベサニーのワインの素晴らしさは 以前に飲んだリースリング ですでに感じていましたが、今回は、赤ワインに完全にノックアウト!

まず、赤の1本目で飲んだ樹齢80年のグルナッシュにやられました


Bethany Old Vine Grenache 2009

グルナッシュは単体では難しく、ブレンドワインが多い中、100%使用しています。
一本の木から収穫できる房は少なく、収穫時期は他よりも遅く、果皮が薄いブドウです。

ベサニーでのグルナッシュの収穫はいつも最後。よって、ハングタイムが長くなります。
果皮が薄いため、タンニンがソフトでエレガントなワインになる、とジェフは言います。

スパイシーでハッとする口当たりのいい果実味で、じんわり滋味。余韻が長く複雑で、ずっと飲んでいたいと思わせる赤ワインです。でも、アルコールは14.8%と高い(飲むとアルコールの高さを感じませんが)ので、クイクイグラスを空けてしまうとキケンです(笑)。少し冷やして飲むのが、ジェフのオススメ。

ベサニーでは、ワインづくりの方針が一貫しています。
「料理と一緒に楽しむワイン。流行によって変えない。ハングタイムを長くして、ブドウの味わいを引き出すようにするが、加熟は避ける」

以前はもっと長いスキンコンタクトを行い、樽に入れる期間も長かったそうですが、今は期間を短かくし、樽も3、4年目のものを使用するなどして、ブドウの味をしっかり感じられるようにしているとのこと。

実際に飲んでみると、グルナッシュのワインはブドウの味そのものがしっかりし、食事と一緒に楽しみたくなるタイプでした。



さて、次はいよいよシラーズの登場です。
今回飲んだ3種は、いずれもシラーズ100%です。


左)Bethany LE Shiraz 2008 右)Bethany Shiraz 2010

Bethany Shiraz 2010 は、樹齢50~60年のブドウ樹からていねいに手をかけてつくられています。
「手作業でつくると、いいワインになる。そのためには、ブドウの木が健康で元気あることが大事」と、ジェフ。

ピュアなフルーツの風味がやわらかく、酸に旨味があり、とってもジューシー!スルスルと自然に入ってきます。

セント・ヴィンセント湾から吹く夜の風のおかげで気温が下がり、ブドウがゆっくり休めるいい環境が自然につくられるため、バロッサのブドウにはナチュラルな酸があるんですね。
Shiraz 2010の酸度は6.4g/リットル、LE Shiraz 2008は6.63 g/リットル。

LE Shiraz は、ワイナリー設立25周年を記念してつくられた特別なキュヴェ。
LEという名前は、ジェフとロバートの両親の名前の頭文字(父Laurence&母Edna)から。


LEの表のエチケットに描かれているのはロケット、バックラベルはその中にある両親の写真

LEはクラシカルなバロッサのスタイルを持つシラーズ、だといいます。
飲んでみると、マッチョではなく、熟した濃密な果実味と豊かな酸を備え、しなやかで品のある、穏やかな赤ワインでした。


Bethany GR 11 Reserve Shiraz 2006

両親のLEに対して、GRは ジェフ(Geoff)とロバート(Robert)兄弟の頭文字
GEは、シラーズというブドウ品種の果実の風味を最大限に引き出すため、最上のブドウで仕込んだ超限定キュヴェ。両親を超えて自分たちの名前を付けるところが素晴らしい(笑)

平均樹齢70年のシラーズを使用、アメリカン&フレンチオーク樽で18カ月。
11という数字は、11回目の仕込みの意味。毎年つくっているものではなく、2002年にGR8、2004年にGR9、2005年にGR10が生産されています。GR11の2006年が最新ヴィンテージで、2008年1月に瓶詰めされました。

GR11の酸度は、今回飲んだ3つのシラーズの中で最も高い7.16 g/リットル。
ワインの凝縮度が高く、アルコールも高く(14.5%)、外観も非常に濃厚ですが、高い酸がいいバランスを取っています。ああ、なんてなめらかに自然に入ってきて、ふわりと広がるんでしょう。ノド元をすべり落ちてほしくない(笑)



「シラーズのワインには、プラムや赤いフルーツを思わせるフレッシュさがある。イキイキした感じは白ワインだけでなく、若い赤ワインにも大事なこと。ワインはブドウでつくるものだから、ワインにはブドウの味がすべき」 と、ジェフは言います。

また、「強さを追求すると上品さに欠ける。でも、 “しっかりしたワイン”は“エレガント”の対極にあるものではなく、しっかりしていても、エレガントさ、繊細さを備えたワインもある」。なるほどね。

ベサニーのワインは、樽で化粧して表面だけ飾り立てたものでなく、一見控えめだけれど芯がしっかりし、ブドウそのものの味、うま味が滲み出してくる と感じました。なんだか、話をしてくれたジェフに似ています。



シラーズ3種はすべてスクリューキャップですが、LEは内側に溝のないタイプ


左から)GR11、Bethany Shiraz 2010、LE     LEの内側をよく見てください

内側に溝がないと外からの衝撃に強い そうです。
これだけブルゴーニュ型のボトルであることと関係あるのでしょうか?その点を聞きはぐりました。


※順番が逆になりますが、白ワインについては 【後編】 で紹介します。


コメント
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