麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第610回)

2018-05-27 21:19:23 | Weblog
5月27日

河出文庫から「ボルヘス怪奇譚集」が出ました。とうとう出ました。去年の夏、同文庫の「幻獣辞典」を買ったとき、幻獣辞典を出すのなら怪奇譚集を出せばいいのに、と書きましたが、ようやく実現しました。うれしい。学校を1限か2限で勝手に早退して、市立図書館で一日読書していた高2のころ、繰り返し、熱中して読んだ本。自分にとって、青春の一冊といえる本です。これと老子、春の雪などがそのころの愛読書。異邦人、檸檬などはその前。ツァラトゥストラ、パンセはそのあと。私の書いた短いものには、(大学に入って知った)足穂に似ている(マネして書いた)と言われてもしかたのないものもありますが、それより、この本の影響のほうがはるかに大きい。

「あらゆる人食い鬼がセイロンに棲み、彼らの存在すべてがただ一個のレモンのなかにはいっていることは、よく知られている。盲人がそのレモンを切り刻むと、人食い鬼は残らず死ぬ。」

初めて読んだときの衝撃。高校、受験勉強、広大教育学部卒の馬鹿英語教師、九大理学部卒のアホ化学教師、「麻里布くんは将来どうやってご飯食べるん?」と聞く馬鹿面同級生、すべて失せろ。俺は、おまえらのようにご飯を食べるためだけに生まれてきたんじゃない。おまえらとはまったく違う、まったく違う遠いところまで、ただ真実だけを見つめて俺は(わしは)行く。見とれ。必ずたどり着く(で)。……加藤諦三でも五木寛之でもなく(二人とも大嫌い!)、ボルヘス怪奇譚集を読んでこんな燃え方をした高校生はたぶんそんなに多くはいないと思います。……そうしてそのたどり着いた先は、ご存知の通り、

誰からも相手にされない東京の貧乏人、俺。

というわけ。いいさ。

僕は今でも自分のことをとても感じがいいと思っている。

から。
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