鈍想愚感

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トヨタ自動車の社長交代人事の発表には驚いた。だれも察知できなかった見事な手際で、マスコミ各社の取材能力の劣化とはいえ、トヨタだからできたことである。

2023-01-27 | Weblog

 27日付けの新聞各紙にトヨタ自動車の社長が4月1日付けで豊田章男氏が代表権のある会長に就き、佐藤恒治執行役員を社長に昇格させる人事が一斉に掲載された。昨日午後2時から記者発表されたもので、朝日新聞は1面トップでこれを報じた。日本のみならずいまや世界のトヨタ自動車の社長交代だけに単なる一社の社長交代ではないと驚きを持って受け止められたようである。日本を代表する企業の社長交代をこれまでだれも耳にしなかったのだろうか、まさかコロナ禍のなか、新聞各社のトップ人事に関する取材が全く行われてこなかったとはいいたくないが、新聞はじめマスコミ各社の取材能力がここまで劣化しているとは思いたくないところである。

 一般に産業界の業界トップの交代は新聞社にとっては常に関心の的であり、毎年明ける頃から、常に話題に登り、注目を集める。特にトヨタ自動車の場合、日本のみならずいまや世界のトップ企業であり、そのトップ人事があるとなれば、だれしも関心を持つ話題である。それが今回のようにトヨタ自動車が公式に記者会見するまで、一切外部に漏れ伝わらなかったというのは通常なら考えられないことである。伝えられるところによると、豊田章男社長が佐藤恒治執行役に社長職をバトンタッチする旨を打診したのは昨年末だった、という。以来両氏の間で昨日までずっと内密にされてきたということだ。

 どの企業もトップ人事を発表する際にはその前に業界や、取引先、メインバンク、グループ企業、もしくは所轄官庁である通商産業省などに対し、ある程度耳打ちすることで、了解を得たりするものだが、トヨタ自動車の場合、そのどこにも事前に了解を取って置かなければならないようなところはなく、独自の判断で決め、実行できるだけの地位にある、ということなのかもしれない。それだけトヨタ自動車は唯我独尊的な位置を占めている、といってもいいのかもしれない。普通なら「事前に挨拶がなかった」といって皮肉のひとつでも言われかねないというのが一般の企業なのだが、トヨタ自動車はそういうものを超越した独自の地位を固めている企業だ、とも言えるのかもしれない。

 ただ、それはトヨタ自動車創業の豊田一族の末裔である豊田章男社長だからできたことで、今回新社長に就く佐藤恒治執行役員が社長に就任してからも同じようなことができるか、ということになると、わからないことである。しかも佐藤新社長はまだ53歳と産業界では若手で、章男社長と同じように振る舞えるのかとなると、疑問なしとへ言えないだろう。章男社長が会長で新社長をサポートするといってもすべてをサポートできるわけではないだろう。しばらくは会長、社長が手を携えてトヨタを率いていくことになろうが、いつかは佐藤社長が切り盛りしなければならない時が来る。その時に真価を発揮できるのだろうか、まさに神のみぞ知るということだ。

 トヨタ自動車にはかつてトヨタ一族ではない奥田碩(ヒロシ)氏が社長、会長を務めた例がある。いま存命ならば90歳ということだが、佐藤新社長は奥田氏がいかに「大トヨタ」を率いていったか、を繙いて学ぶことも必要なことなのかもしれない。まあ、佐藤新社長には輝かしい未来とともに「大トヨタ」の看板が大きく肩にのしかかってくることだけは間違いところだろう。

追記(2月15日)豊田自動車の名誉会長だった豊田章一郎氏が14日心不全で死去した。心不全は心臓が止まり、つまり死ぬことと同じことで、本当の死因とはならない。とはいえ、トヨタ自動車にとっては欠かせない人で、今回の社長交代から2週間あまりだが、社長交代を決めたのはこの名誉会長が死去するのはすでに時間の問題だったのではないか、と思われる。章一郎氏が亡くなった後に社長交代を発表するのはなにかと具合いが悪い、との判断のうえ、事前に発表しておこう、とのいうことになったのではないか、と思われる。その方が何事もスムーズに進められる、とトップが判断したのだろう。昔から何事も密室で決められるトヨタ自動車のことだから、そんなことは簡単に決められるだろう。名誉会長の病気(?)のこともずっと伏せられていたのだろう。

 

 

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