鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

政局の混乱で年末に再度の総選挙にはならないでほしい

2009-09-04 | Weblog
 鳩山由紀夫民主党代表が早々と小沢一郎代表代行に幹事長就任を要請し、小沢氏も「党員ですから」とあっさりと受けたことが大きな波紋を呼んでいる。政治家として2枚も3枚も上手な小沢氏が党の重要ポストに就くことは鳩山民主党を裏で牛耳ることになり、鳩山・小沢の2重構造をもたらすことは確実だからで、民主党の一部には「政権交代の高揚した気分が吹っ飛んだ」との声も出始めている。今後発表される民主党政権の人事次第で小沢色が強まるようなことがあれば、民主党に対する御祝儀気分も醒めることとなりかねない。
 鳩山代表は小沢幹事長人事は前から決めていたようで、発表のタイミングをうかがっていたに過ぎないようだ。確かに今回の総選挙の308議席獲得の最大の立て役者は小沢氏であることはだれしも認めるところで、小沢チルドレンと称される衆院1年生議員は総勢150人にもなるとされ、民主党内での最大派閥であり、小沢氏の一投足はいやがうえでも注目される。鳩山新体制のなかでの小沢氏の処遇がカギろなっていたのは事実である。
 しかし、西松建設の政治献金問題で小沢氏の第一秘書が起訴されたことから、小沢氏が代表の座を下りたのはつい4カ月前で、人々の記憶にまだ生々しく残っている。小沢氏自身が身の潔白を告白していることから、禊ぎは終わったとしているようだが、どう見てもクロとの印象は否めない。しかも政治献金問題については鳩山代表もアキレス腱を抱えており、検察側の出方次第では総理、幹事長そろってクロとの判定が出て、そろって辞職ということにでもなれば、民主党政権が揺らぐことにもなりかねない。
 それでも小沢幹事長に踏み切ったのは政権の運営にあたって小沢氏の手腕に期待するしかない、と鳩山代表が判断したのだろう。小沢代表辞任の後を受けてことし5月に行われた民主党の代表選で岡田克也現幹事長に勝利した時点から、総選挙に勝ったら小沢幹事長でいくことを決めていたのだろう。
 ここまで民主党を横暴にさせている背景には自民党の予想を超える大敗でジャイロスコープを失ったかのような混乱ぶりがあげられる。麻生太郎首相が総裁辞任を発表したにもかかわらず、総裁選を今月28日の行うことに決め、16日に開かれる特別国会での首班指名選挙に辞任を申し出た麻生首相の名前を書くのか、それとも白紙で出すか、決めかねている。党員のなかには総裁選を前倒しして行うべきだ、との声が出ているようだが、具体的な動きにまで至っていないようだ。若手議員の間では党の再生をめざして議論を重ねるような動きも出ているが、これも全体でまとまるにまで至ってない。
 4日午後、東京・永田町の自民党本部午後開かれた全国幹事長会議では党執行部を厳しく追及する声が全国各都道府県の幹事長から相次いで出されたが、なかには「野党のなって今後、役所への陳情はどうすればいいのか」といった生々しい声まで出て事務局が右往左往する事態まで生じた。1955年以来過去54年間ほぼずっと政権第一党の座に君臨してきて、野党として活動したことがない人がほとんでで、今後どう政治活動していったらいいのか戸惑っている、というのが実情で、こんな状況では党の再生はほど遠いように思えた。
 民主党は数のものをいわせて自由に権力を振るおうとしている一方、対抗勢力の自民党は崩壊寸前では、日本の民主政治が保たれるのか、と不安にもなってくる。米国の一部にはこんな混乱を見越してか、年末には再度、総選挙が行われる、との観測も出ている、というが、そんなことにならないように祈りたい。
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一見、老舗の百貨店と出版社が組んだ「デパートへ行こう!」

2009-09-04 | Weblog
 真保裕一著「デパートに行こう!」を読んだ。書店の店頭で、ざっと立ち読みし、装丁も華やかな百貨店が楽しそうに描かれていたので、購入したもので、売り上げ低迷著しい百貨店への賛歌を織り込んだものかな、と期待して思って読んだ。帯に出版元の講談社創業100周年記念出版と書いてあり、一見、百貨店も出版社も老舗同士が出口の見えないなかで、組んだ企画のようで、面白い取り合わせだ、と思った。
 「デパートへ行こう!」は妻から離婚され、勤めていた勤務先も倒産して、働き口の見つからない中年男性が行き先に困って、かつて娘を連れてデパートへ行っていたことを思い出し、ふらふらと三越本店を思わせるデパートへ行く。その娘からはもう携帯電話にも掛けてくれるな、と絶交宣言をされて、泊まる先もなく閉店間際に滑り込み、そのまま夜を迎えてしまう。
 デパートは創業100年蔡を行っており、明日でその行事も終わるというので、店内はその飾り付けを残したままとなっており、商品も陳列棚に残したままとなっている。このため、永年勤めたあげくなんら報われたことがないと思い込んでいる女子店員が辞める決意を固め、その腹いせに宝石を盗もうと閉店間際に店に戻り、深夜になるのを待ち構えている。そのために警備の若い男性から警備の見回り時間などの様子を事前に調べていた。
 さらには、若い男女の2人連れがたまたま興味本位にデパートに忍び込んできたり、宝石売り場ノマネージャー、素性のわからない中年男性、そしてこのデパートの2代目社長が伊勢丹を思わせる同業他社との合併を控えて経営者としての力量を問われているうちになぜか深夜の店内をうろつく羽目に陥り、無人のはずのデパートの深夜にドタバタ劇が展開されることになってしまう。
 警備陣のチェックをかいくぐって宝石を盗もうとする女子店員が実は社長の恋人だったり、アベックの男女がデパートの子会社の社長の関係者だったり、宝石売り場のマネージャーが商品を盗もうとしていたり、人間関係が輻輳して折り重なっていく。
 最後には自殺しようと屋上から飛び降りた中年男性が警備員が手配したトラックの幌にひっかかり、危うく一命を取り留め、かけつけた娘さんと涙の再会を果たし、「一緒にデパートに行こうね」と父親に声をかける。一方、助けた警備員が実は64年前の東京空襲の際にデパートに逃げ込んで、迷い子となっていたのをテレビで見つけた母親が息子と知り、こちらも劇的な再会となり、めでたしめでたし、となる。
 小説としてはデパートを舞台に人間の愛憎劇を展開したわけで、舞台を深夜のデパートにもってきただけのデパートへの賛歌でもなんでもなかったのは残念なことだった。筆者の真保裕一は「ホワイトアウト」などスリルとサスペンスのある力作を書いており、ある程度の力量ある作家である。が、あくまでも作家なので、今後の百貨店の方向みたいな経営的なものを期待するのには無理があったようだ。
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