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鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

本格オペラの登場

2006-03-20 | Weblog
 東京・初台の新国立劇場で、ヴェルディ作のオペラ「運命の力」を観賞した。ストーリーそのものは恋人同士が逢引している時に現れたヒロインの父を男が誤って殺してしまい、2人とも逃走し、ヒロインは修道院へ、男は兵役の後に同じ修道院へたどり着くが、追ってきたヒロインの兄に見つかり、ヒロインは死んでしまう、というたあいのないもの。ただ、ヒロインを演じたアンナ・シャファジンスカヤが美しいうえ、すばらしい声と声量で観客を魅了し、大喝采を浴びていた。男役のユルキ・コルホネン、兄役のクリストファー・ロバートソンも見事な歌いっぷりで、これもよかった。これまで新国立劇場で多くのオペラを観賞してきたが、容姿、声の質、声量、演技ともよかったのは今回が初めてだ。これまでは声はともかく年をめしているとか、やや太り気味だとか、見ていてどうもピッタリくるものがなかった。観客のなかに女優の有馬稲子さんを見かけたが、ようやく日本にも本格的なオペラが登場するようになってきたようだ。
 主役の3人がオペラの世界でどのクラスに位置するのか知ろうと思って、800円なりの劇場パンフレットを求めてみたが、そうしたことは書いてなかった。公式のものにオペラ歌手の格とか、ランキングなどを載せるようなことはしない、厳かな世界なのかもしれない。
 この公演はきちんと3日に1回の割りでスケジュールが組まれており、従って代役を立てるようなこともなく、全6回の公演を1人の出演者が1つの役を歌いきるようになっている。これも本場のやり方なのかもしれない。
 日本人ソプラノでは第一級の坂本朱が準主役の酒場の女、プレツイオジッラ役で出演し、それなりにこなしていたが、ヒロインのアンナ・シャファジンスカヤに比べるとやはり見劣りがした。本場で育ってきたのとそうでない如何ともしがたいものがあるのだろう。
 それと、新国立劇場でのオペラ公演でいつも感じるのは舞台装置が素晴らしいことと、群集シーンでの合唱が段々うまくなってきていることだ。新国立劇場合唱団が演じているのだが、音楽にあわせて歌い、踊り、演技が流れに乗って場を盛り立てている。新国立劇場を作ったのもそうした日本発のオペラをいずれは自前で公演できるようにしたい、との遠大な計画に基づくものだが、一歩一歩それに向かって進んでいる、と信じたい。
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