prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ドライヴ」

2012年04月22日 | 映画
キッド、と西部劇ばりに抽象化した名で呼ばれる主人公は寒色系、ヒロインは暖色系の色彩でヴァリエーションをつけながら巧みに統一した色彩設計。
ただしキッドが入ってくるのにあわせて写るヒロインの部屋の壁紙が寒色系だったり、ヒロインのことを想っているキッドの部屋で灯りを消すと赤っぽい小さなライトだけ残ったりと、しばしば色彩は交錯する。
色彩の使い方を仔細に見ていくと、そのシーンでの感情の位置づけがわかるだろう。

キッドは決して銃を使わない、飲むのはもっぱら水で、オフでも酒は飲まないといった映画的なキャラクター造形に優れている。

背中にサソリの刺繍のあるジャンパーを着ていて、これが「サソリとカエル」の寓話のサソリなのです。不合理であっても生き方を変えられない象徴。
それにしても、この寓話の元ネタってベトナムの民話ともサンスクリットで伝わっているともいって、よくわからない。
映画では「クライング・ゲーム」や「ミスター・アーカディン」に出てきたと思う。探せばもっとあるかも。

後半炸裂するヴァイオレンス描写のヴォキャブラリーの多彩さ。カーアクションももちろんあるけれども、あまり長々とやらないで短く一気に決める演出の瞬発力が見もの。
バイトで映画のスタント・ドライバーをやっているわけだが、代役用のかなり荒い作りのマスクが後半生きてくる。

「シェーン」に似ているのだが、流れ者が関わる家族のうち父親と男の子は後半ドラマから外れて母親=ヒロインが残るのが違い、しまいにヒロインすら主人公の世界から外れていく。

色彩の使い方から逆算すると、ヒロインと敵役たちとは同じ赤系統の色彩でまとめられている。キッドに対して侵襲してくるが結局同化はできないキャラクターとしては、一緒ということだろう。

ライアン・ゴズリングは「ラースとその彼女」や「スーパーチューズデー」などもそうだが、二枚目のわりに何考えているのかわからない、マスクをかぶったような感じがするパーソナリティ。

監督のニコラス・ウィンディング・レフンは「プッシャー」三部作や「ヴァラハラ・ライジング」など、すでに海外では評価されていた作品が多いのに、日本ではこれが劇場初公開。これでカンヌの監督賞をとっていて、それで公開が決まったのか。
外国の優れたものを積極的に取り入れてきたのは日本の美点だったと思うのだが、なんだか内向きになってます。
(☆☆☆★★★)

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