prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「あらくれ(1957)」

2024年04月21日 | 映画
高峰秀子が上原謙(成瀬作品の常として、まぁ頼りにならない)と一緒に「金色夜叉」を見ていると有名な寛一がお宮を蹴り倒す場面で画面が妙な具合に斜めに傾いて切れる。かなり実験的な技法に思えるので驚いた。
あとで考えてみると、高峰が上原を蹴り倒したいのはこっちの方だと思っているのが投影されたのかと思えた。考えすぎだろうが。

今、このスタッフ、キャストで生きているのほとんど仲代達矢だけではないか。このときの役どころは高峰に雇われている若手の仕立て屋。
加東大介(後半ちょび髭を生やしたものでヒゲダルマと言われる)を見限ってこの若いのに乗り換えるところでエンド。
しかし、エンドマークが出てすぱっと終わるというのは気持ちいい。

水木洋子の脚色は一見たんたんと場面を運んでいるようで巧みに省略を効かせて余白を活かしている。

加東大介との取っ組み合いを見ていて高峰秀子の身長体重はどのくらいかなと思って調べてみたら、おおむね身長158センチ、体重45キロくらい。上背は今の20代女性と大して変わらないが、体重は少なめ。これで太めの加東大介と取っ組み合いをするのだが負けてません。

お一二のかけ声の薬売りがちらっと出てきたり、リヤカーや人力車を引いたり個人で外を回る商売人が印象的に描かれるのは成瀬の得意とするところ。