prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「大反撃」

2020年03月27日 | 映画
原題はCatsle Keep 城の要塞。
伯爵が住む格式高いお城を第二次大戦中ダンケルク後あたり米軍の小隊が占拠する。

伯爵は不能で若く美しい妻がバート・ランカスターの隊長と関係するのを黙認し、跡継ぎの子供が出来るのを期待しその通りになる。
隊には若い作家志望の兵隊もいて、彼が構想している小説のタイトル自体がCastle Keepとメタ的な作りになっている。

伯爵が受け継いで来た、理性主義やキリスト教文化といった西洋世界が、連合国側も独軍側もなく、両者手をとりあった戦争そのものによって破壊されていく。
撮影アンリ・ドカエ(ドカが正しい?)によるヨーロッパの城の内部の調度と庭園の美しさの魅力が大きい。

ブルース・ダーン演じる狂信的な兵士の前に、ランカスターが聖書の青ざめた馬そのままの白馬に跨がって歩く、つまりランカスターは死神のメタファーとなる。
ピーター・フォークの元パン屋が城で戦争そっちのけでパンを焼き続けるのが、小麦粉で顔が白塗りの仮面のようになっているのが寓話的。

終盤の独軍の戦車が大暴れする戦闘で教会も美しい庭も城も破壊されていくのが、セットとは思えないくらい見事な出来だっただけになんともパセティックな世界の崩壊感を出す。

小説家志望の若い兵が伯爵の妊娠した若い妻の手を引いて脱出するのが、城に象徴される古い世界の崩壊の物語を受け継ぐと共に新しい物語を作っていくのを示すしっかりした世界観を持った、シドニー・ポラック監督の異色戦争映画。





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