prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断」

2024年07月12日 | 映画
潜水艦というとドイツのUボートの印象が強いけれど、ここに出てくるのはイタリア海軍の潜水艦。1940年に潜水艦が当時は中立だったベルギーの一般船を撃沈し、投げ出された乗組員たちを救助するという矛盾した行動に出る。
一般船籍とはいってもイギリスに軍事物資を運んでいたわけで、沈めても言い訳は立つのだが、あえてそうしない。

イタリアというと1861年にイタリア王国に統一されるまでは各地方バラバラだったわけで、この映画のセリフでもシチリアと××(失念したがイタリアの地方)とでは別の国というより別の星だなどと言われている。

二度までも助けられた恩を忘れた捕虜にファシストと罵られて艦長がすごく怒るのだが、ファシズムの語源はラテン語の「ファスケス」(fasces、束桿)で、逆説的に束にならない、まとまらない集団といった意味を志向しているように思う。

最初のうち艦長が負傷してコルセットをしたり、半裸の女性(シルヴィア・ダミーコ)がピアノで「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲を弾いたりバスタブに一緒に浸かったり、各キャラクターでバラバラの詩的なナレーションがかぶさったりして、全体として「Uボート」の緊張感とは対照的な緩い場面が続く。
潜水艦の中でニョッキを作ったりするのも、食べる愉しみを忘れないようにしていると思しい。

高射砲で飛行機を打ち落とすのも、魚雷で船舶を撃沈するのも、基本的に潜水艦側の視点に固定されていて、イギリス軍側に視点が行くのは一回だけ。