prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「イタリア式奇想曲」

2022年09月16日 | 映画
第44回ぴあフィルムフェスティバルにて。
パゾリーニ特集の一環だが、六編のオムニバスのひとつだから当然パゾリーニだけでは語れない。
監督たちは、マリオ・モニチェリ、ステーノ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、 フランコ・ロッシ、 ピノ・ザック(アニメ)、 マウロ・ボロニーニ。

製作はディノ·デ·ラウレンティスで、その奥方のシルバーナ·マンガーノが第一話のナニー、第三話の車内の女、第五話の女王と三役、コメディアンのトト(ニューシネマパラダイスなどにも作中映画に出ていた)が第二話、第四話の二役と別のエピソードにまたがって出ている。

冒頭のマリオ・モニチェリ監督作La Bambinaiaは子供たちがディアボロスとかクリミナルといったタイトルのマンガを読んで喜んでいると、子守女が出てきてそんな怖いマンガはいけません、ペローのおとぎ話を聞かせてあげますとくるのだが、そっちの方がよほど怖くて子供たちがマジで泣き出してしまうというハナシ。

ステーノの監督作は、トトの初老の男が若い女を連れているにもかかわらず若い長髪の男たちにいちいち目くじらを立ててハサミとバリカンを振りかざして丸坊主に刈り上げる。
若者の長髪が流行でもあり反体制の記号でもあり、ハゲにとっては癪のタネでもあった時代の話。製作は1968年。

交通渋滞で車をぶつけたいざこざを扱うマウロ・ポロニーニ作Perche
?を経て始まったパゾリーニ編Che cosa sono le nuvole?はシェイクスピアの「オセロ」をパゾリーニ作品の常連のニネット・ダボリが顔を黒く塗ってオセロ役、トトが再登場して顔を緑に塗ってイアーゴー役(嫉妬は緑色の目の怪物です、という原作のセリフに合わせたか)を、あとデズデモーナ役のラウラ・ベッティは素顔で操り人形よろしく手足に紐をくっつけて演じる。
観客たちがイアーゴーの奸計ついでにだまされるオセロにも怒ってしまい、舞台に殴り込んでぶち壊し、人形よろしく俳優たちはゴミ捨て場に捨てられる。

第五話Viaggio di lavoroはアフリカの架空の某国を訪れた女王が言葉が全然わからないままアンチョコを読み上げたら中身がすり替えられていて大騒ぎというアニメとの合成譚。監督はフランコ・ロッシとピノ・ザックの共同。
ショーン・コネリーのジェームズ・ボンドの写真をそのまんまアニメに取り込んでいる。著作権どうなっているのか。

トリはマウロ·ボロニーニ二本目の「嫉妬深い女」で、全体を貫くテーマも嫉妬という点でゆるく統一されているっぽい。
ファッションや室内の調度品がお洒落。

しかし60年代末から70年代にかけては、こういうオムニバスが多かった気がする。なぜなのか。