prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「オカルトの森へようこそ THE MOVIE」

2022年09月04日 | 映画
この映画そのものの白石晃士監督をもじった黒石光司 監督というのが登場して(ちらっと鏡に映る姿が)女性助監督と一緒にオカルトネタのドキュメンタリーを撮りに行く、その取材ビデオ映像そのものが作品になっているという体裁、POVというスタイルそのものは今や珍しくない。

全編、未編集の長回しそのまんまの映像に見せかけてありえない出来事が本当に起こっているかのように思わせる。
手持ちカメラのぐらぐら揺れる映像の中で、奇怪な姿の宇宙からの?来訪者が飛んでくるあたり、画面が不安定な分CG合成は手間がかかったと思えるけれど、それを完璧にやってのけている。

あるいは作中大勢が撃たれたり切られたりして死ぬが、その傷口が長回しのワンカットの中で消えてなくなっていたりする。
ただカメラの前で起こっている出来事を記録しているだけに見せかけて実はそう見せるために凄い手間をかけているのであろうなあと思わせる。画面作りと演出の密度は高い。
映像にスレている、何なら自分でも当たり前にスマホで動画を撮って投稿したりする観客あっての作りとも言える。

それにしてもこういう長回しの連続の撮影って、どう段取りつけてスケジュールを組むのだろうと余計なこともあれこれ気になった。

女性助監督役の堀田真由がチャーミング。気が強くて監督つかまえて平気で最近ダメですねと言ったり、監督を支えるというより引きずりまわしているみたい。他の登場人物が全部イカれているので、比較的常識的なキャラがかえって目立つせいもある。

同じ白石晃士監督、堀田真由主演の短編の「訪問者」がつく。明らかに白石監督の旧作「オカルト」をもじった「オカルティズム」に感動したという男が訪問してきて、勝手に続編を書き下ろして、しかも100稿以上書き直している大長編の原稿の束を持ってくるというのがコワい。今どき400字詰め原稿用紙に手書き原稿というのがまたコワい。
次の本編にもろにつながっているので継ぎ目がわかりにくいのが、もともとの虚実皮膜に重なっている。