prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「朝が来る」

2020年11月03日 | 映画
子供ができずに養子をもらった夫婦のもとに、子供の産みの母親らしき女が訪れるという通常だったらストーリーが動き出すポイントまでがずいぶん長い。

ここで訪ねてきた女の顔が長くした金髪に隠れてよく見えず、回想に出てくるまだ中学生だった頃と同じ人物なのかどうかよくわからず、何か別人が恐喝まがいの目的で訪ねてきたのかと思った。

幼稚園児になった息子が他の園児をジャングルジムで押して落としてケガさせたと聞かされて養母が青くなる初めのエピソードなど、ストーリーとは関係ないではないかと思えた。

子供ができない夫婦の話なのかと思っていると、途中から望まない妊娠をしてしまった中学生の話になってこれがえんえんと続く。
一種の二部構成になっていると考えていい。

通常のストーリーテリングだったら両者を交錯させるか、経緯を訪問者とのやりとりと絡めた回想を使うかしてバランスをとるだろうが、ここではそういうやり方はしていない。

それが上手くいったかどうか、一概に言えないけれど、結果として実の母の蒔田彩珠と育ての母の永作博美(および父)、および両者をつなぐ浅田美代子がともに同じくらいの比重になって、昔の母もの「母三人」のリアリズム版みたいな感じにもなった。
そのため話の大元である無精子症の養父の井浦新が押し出されたみたいな印象もある。

全体に不安定なアップが多く、ときおり広島、瀬戸内海の風景が出てくるとほっとする。
まったくの偶然ながら広島・宮島に行ってきてホテルにこの映画のロケの記念写真と河瀬監督と浅田美代子のサインが飾られているのを見てきたばかり。