prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「NINE」

2010年04月02日 | 映画
人物設定でいうと、オリジナルの「8 1/2」の重要なキャラクターである脚本家(男)が抜けている。主人公グイドが作ろうとしている映画に対するインテリ代表としての批判者といった立場なのだが、それが抜けたことでもっぱら女たちとの葛藤オンリーになって、女優陣の豪華さはなるほど目を奪うけれど、自分との観念的な格闘といった面は薄れた。

舞台だったら、ひとつの空間が過去でもあり現在でもあり、現実でもあり幻想でもありといった混交した表現がやりやすいし、フェリーニの原作映画は何といってもあらゆる要素を呑みこむ演出のヴォリュームが圧倒的なのだが、ここではもっぱらそれぞれの要素をカットバックでつなぐ方法をとっている。わかりやすいけれど、水と油を混ぜて振ったような印象は否めない。

ダニエル・デイ・ルイスは女たちに甘えっぱなしのダメ男ぶりの一方で、芸術家としてはなるほどまわりが天才というだけあると思わせる。今回はそれほど厚塗りの名演をしていないけれど、この人自身が天才だしね。
(☆☆☆★)


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