prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「天使と悪魔」

2009年05月30日 | 映画
イルミナティというと、ユダヤ・フリーメイソンとセットみたいに陰謀論にしょっちゅう出てくる秘密結社なので、どんな扱いで出てくるのかとちょっとびくびくものだったのだが、宗教に弾圧された科学が暴力的にカルト化したものとして描かれていて、確かに科学の仮面をかぶったカルトって多いよなとは思わせて興味をひく(オウム真理教を忘れてはいないでしょ)。確か、「ドラえもん」に科学と宗教の立場が逆転していて、科学が迷信扱いされている世界が出てくるのがありましたね。

反物質が爆弾代わりに出てくるのがちょっとなあ、と思ったらやはりと言うべきか、東大の早野龍五教授が、「天使と悪魔」の虚と実 50 のポイントというサイトで問題点を指摘しています。

そんなこんなで、モチーフとしては面白いし、四大物質を使った見立て殺人とか、タイムリミットとの追っかけとか、ローマの名所と隠された空間を両方たっぷり見せるところとか、映画的なアレンジは割とうまくいっている。原作読んでないとわからないということはありません。

もっとも、とにかく勢いで見せてしまう感じで、いろいろと乱暴だったり厚み不足のところは多い。「今の」疑似科学とそれほど深く描いているわけではないし、先述のようにこれ自体擬似科学がかったところあり。

擬似科学っていうのは実際ずいぶん幅を利かせているので、科学そのものよりよっぽど俗耳に通っているだろう。どう考えても熱伝導で調理するフライパンを遠赤外線で調理するからありがたみがあるように宣伝していたり、ね。マイナスイオンとか、コラーゲンとか、脳がどうたらとか、科学用語じゃなくてマーケティング用語と思った方がいい。
O157が流行った時、安価な食塩水を電気分解して強力な酸を作り、これで消毒するから安心なんて記事(に見せかけた広告)が大手新聞系週刊誌に出ていて、バカ、食塩水を電気分解したら塩素と水酸化ナトリウム(強アルカリ性)が出る、塩素は毒ガスだし、水酸化ナトリウムはたんぱく質を溶かす劇薬で目に入れたら失明する危険だってあるぞとのけぞったことがある。陰謀説もだが、マスコミの罪は重い。
(☆☆☆★)


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