prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「五番町夕霧楼(1963)」

2007年11月12日 | 映画
すでに全盛期は過ぎてかけいたとはいえ、日本映画の巨匠作品らしい画面作りの手のかかりかたとコクは圧倒的。
シナリオ(鈴木尚之)を先に読んでしまっていたのだが、スジは知っていても、というより知っている方が話の組み立ての見事さがわかる。
三島由紀夫の「金閣寺」と同じ事件をモデルにしていても、基本的な人間の捉え方はずいぶん違う。劣等感に対するシンパシーの有無というか。

水上勉原作というと「暗い」と反射的に思ってしまうが、娼館を舞台にしているのに、監督(田坂具隆)の体質か、作られた時代のせいか、女将や客の旦那も含めて薄汚い感じがする人物が出てこない。
ちらっと映画の撮影所のスタッフらしき男たちが遊びに来る情景(楽しそう)を入れているのは、楽屋落ちか。

タイトルの最後に出るのはふつう監督の名前だが、ここでは主演の佐久間良子の名がわざわざ「そして、」ともったいをつけたタイトルで一呼吸おいてからトリを飾る。こんなのちょっと見た覚えがない。デビューしてから五年目だが、汚れ役をやりだしたのに合わせてかよっぽど力を入れてプッシュされたのだろう。
(☆☆☆★★★)


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