prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「長江哀歌」

2007年09月15日 | 映画
ダムに沈む町が爆撃でもあったようにえんえん続く瓦礫の山になっている光景にびっくりする。ドキュメンタリーでも撮れないところまで突っ込んで描いているみたい。

取り壊し作業をしている上半身裸の作業員(日本でも高度成長前は、平気で人前で裸を見せていたと思う)のすぐ横で、防護服に身を固めた作業員が消毒薬を撒いているのがなんともいえず怖い。

ジョン・ブアマン監督「脱出」でアメリカの田舎町がダムができて水に沈んでいく情景もシュールだったが、さすがに長江となるとスケールがまた桁外れにでかい。日本でダムに沈む村を描いたらきっともっとセンチメンタルになるだろうが、ここでは情緒など弾き飛ばしそうな荒々しい雰囲気が裏に張り付いている。
ラストカットの綱を渡っていく男など、リアルなままで象徴的な喚起力があるカットが随所にあるので、変な建築がいきなりロケットになるいかにもなイメージ・シーンはちょっと違和感を持った。

ヒロインがたえずペットボトルの水を飲んでいる、というのは日本映画「金融腐敗列島」の若村真由美もやっていたけれど、こちらの方が「乾き」の実感がある。
役人と民衆が言い争うバックの壁に毛沢東やマルクス、レーニンはともかく、スターリンの肖像も堂々と飾られているのにちょっとびっくり。
(☆☆☆★)