prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「キング・コング」

2006年01月21日 | 映画


1933年のRKOで製作されたオリジナルの「キング・コング」のポスターもアップしてみました。ちなみに、1976年のリメークは「キングコング」で、「・」がありません。
時代設定をオリジナルの製作時の大不況時代にしてずいぶん丁寧に考証してみせ、「(オリジナルの主演女優だった)フェイ・レイはRKOの映画に出ています」という楽屋落ちが入る。前のリメークと違って、いかにオリジナルに愛着があるかといういうところを見せているわけ。
ジャック・ブラックの見世物師的監督が「セシル・B・デミルが裸の女を出したか」などと映画会社の重役の前でハッタリをかますが、なーにデミルは時代の制約があるから裸は出さないが、薄物をまとった女を山ほど出してましたよ。

約1時間半のオリジナルに対し、こちらは3時間10分。やはり1時間半の「暗黒街の顔役」が3時間の「スカーフェイス」にリメークされたのと似たケース。それでいて、筋に大きな違いってないのだね。場面場面の書き込みが違うだけで。ピアノ・ソロをオーケストラにアレンジしたようなもので、それだけ元のストーリーの一種神話的なシンプルさが逆にわかる。

オリジナルの映画自体の神話性とともに、ジョセフ・コンラッドの「闇の奥」を持ち込んで、近代社会に対する原始社会の持つ神話性と重ねているよう。原住民の儀式の舞台のセットは「闇の奥」を発想の源にした「地獄の黙示録」のカーツの王国ばりにやたら屍骸だらけ。コングが前二作に比べるとやたら人を殺すのも「王」らしいということか。

船の乗組員に顔に刺青をしたマオリ(ピーター・ジャクソンの出身のニュージーランドの先住民)や東洋人、黒人などの有色人種がかなりいて、概して白人より先に死ぬ。

巨大な猿をNYに連れて行って見世物にする、というのは娯楽の乏しい昔なら成り立ったろうが、げっぷがするほど見世物に取り囲まれている現代だと、いくら出来がよくても印象がぼやけるのは仕方ない。「ジュラシック・パーク」ばりの恐竜や、「インディ・ジョーンズ」シリーズばりのやたらバカでかい虫がぞろぞろ出てくるあたり、スピルバーグの趣味の悪いところを倍増している感じ。あるいはジャクソンの出自の「バッド・テイスト」か。

コングとヒロインが氷が張った池の上で滑って戯れるシーンはよく考えた。
(☆☆☆★)



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