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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

ストックの時間と北海道観光

2005-09-13 23:42:51 | Weblog
 昨日とはうってかわって涼しい一日。明日からは道東出張です。土曜日までアップ出来ないかも知れませんがお許しください。

 そうそう、明日の夜9時15分からのNHK「その時歴史は動いた」では二宮金次郎が紹介されます。皆さん是非ご覧になってくださいね。

 さて今日は、
■ストックされる時間
■明日から道東出張です の2本です。

【ストックされる時間】
 東京から大先輩が札幌を訪れて母校で集中講義の講師をされていた。今日がその最終日ということで、近隣のOBには招集がかかって、御慰労を申し上げる集いを開催した。

 場所は駅北口のジンギスカンやさんの義経。学生時代に二三度来たけれど、もう25年以上ずっと前は通るもののご無沙汰していたお店である。

 講師を送る集いだというのに、受講生である現役学生たちの数は少なくて、女性学生がわずかに3人。あとは顔なじみのOBおじさんばかりである。
 こういう会も、後輩がたくさんいるはずなのに出てくる顔ぶれが決まってしまっているのはちょっと寂しいものだ。

「小松さんの少し後輩の方くらいからが参加されないんですが、30代前半くらいから下はまた参加してくれる者がいますよ。ある幅で参加してくださらない世代があるようですね」とは33歳になるという、講座の助手のM君。
 この幅の世代にどういう意味があるかは分からないな。

 助手のM君に「今はどういうテーマで研究をしているのですか?」と訊いてみると、「海岸景観とアイヌ語地名との関係を勉強しています」というから、なかなかのもの。

 アイヌ語地名の財産価値については以前に触れたのでここでは書かないけれど、次第に言語としてのアイヌ語について教えてくれる人が少なくなっている昨今、惜しいテーマではある。
 生の現場にいられない無念さ、と同時に、それと対比して実はこの瞬間が最前線の現場なのだ、という確信を感じることが大事なのではないかな。

    *   *   *   * 

「ほかにはどういうテーマですか」
「国立公園内での水上バイクの現状についても勉強しています」

「あれは確かに問題ですね。静かな環境とその環境を楽しみたいという、まさに保全と利用の境目ですからね」
「しかし今は、そこにルールがないのが現状です。どこまでが良くて、どこからはいけないのか、という線をなかなか引けないのです」

「そこがまさにポイントですね。今日の日本人が一番不得意にしているのが、対立する利害を調整して双方が納得するという納め方のように思います。禁煙問題でもそうですが、デメリットがはっきりしていることはメリットを活かすことなく、全面的に排除してしまって事足れりとする精神構造が蔓延しているように思います」
「そうですね。このまま問題を放置すると、水上バイクは国立公園内は全面禁止というようなことになりかねません。水上バイクを楽しんでいる人たちと話をしていても、彼らの多くは周囲に気を遣ったり、ゴミ拾いのボランティアをしたりして、自分たちのレジャーにタイして理解を広げたいと思っている人が多いように思いますしね」 

「誰かが傍若無人な例を引き合いに出して、危険性を訴えるとどうなるか分かりませんね。全面禁止というのは一番簡単な方法ですが、そこには自立した個人の真の自由を奪うことになります。そのことを危ういと思うべきですね」
「なにか良い方法はないでしょうか」とM君も困り顔。

私からは「使い方の範囲や時間帯などを定めるルール作りはまずあり得るでしょうね。さらにはその場所を使って良いという資格や免許的なルールを作ることもありえるでしょう。そのときのキーワードは『時間のストック』ということなのではないかと思っているのですが」
「時間のストックとはどういう事ですか」

「私は掛川でスローライフについて勉強しましたが、スローな時間には二通りあって、一つにはフローに流れる時間です。これはなにかをするときに『ゆっくりやりましょう』ということです。それに対してストックされる時間があると思っています。それは自分が重ねてきた経験や体験の量を資産として考えようと言うことです」

「例えばどういう事ですか?」
「私は昔ダイビングをしていたのですが、ダイビングでは一本潜るたびにログブックというノートに記録をつけて、それをインストラクターとそのときのペアの相手であるバディからサインをもらうシステムになっているのです。だから初めてのポイントを訪ねて潜ろうとするときは、引率してくれるインストラクターはその人のログブックを見て、『ああ、この人は100本ダイバーだから少し難しいところを見せてあげようか』とか『まだ10本ダイバーなら、まずは簡単なポイントに連れて行こう』と判断するのです」

「なるほど、経験が数値になって現れるのですね」
「そのとおりです。体験や経験を積んでいるということが本人の資産として評価されるという社会システムが大事なのだと思います。もちろん、体験の数と本人の資質は必ずしもイコールにはならないこともあると思いますが、少なくてもなにがしかの選別のための要素にはなり得ると思うのです」

「山のクライミングにも同様の話があると言うことを聞いたことがありますね」
「おそらく、ガイドがつくようなレジャー・レクリエーションには少なからず、そういう要素があるのではないでしょうか。そして実は私自身は、こういう体験量評価システムが北海道観光全体にも寄与貢献するのではないか、と考えています」

「北海道の観光全体について…ですか?」
「そうです。知床自然遺産を引き合いに出すまでもなく、国立公園などの豊かな自然は北海道観光の最大の売り物の一つなのですが、そこに自然との付き合い方を知らない観光客も大勢訪れてくることで、自然との関係のバランスが崩れたり、再生が果たされない利用に繋がったりすることも懸念されています」

「自然を相手にした観光の大きな問題ですね」
「そう、そこで、自然との付き合い経験を数値化して、道内のある自然公園で講習を受けたら1ポイントとか、ここのコースをガイド付きで歩けば2ポイントといった、経験値獲得システムを道内の自然系観光地が作るのです。そうして一定のポイントに満たない方はここまで、一定のポイントを持っている人ならばガイド付きツアーに参加出来る、といった段階利用のシステムを作ればよいのではないかと思うのです」

「そんなことができるでしょうか?」
「分かりません。しかし、持続可能なサステイナブルな利用環境が構築されなければ、山の中に空き缶を捨てることで熊と遭遇するリスクを増すような行動が放置されることでしょう。自然の中で人と熊が共存出来なくなることの、お互いにとっての不幸は回避したいではありませんか」

「そういうポイントを貯めることは自分への励みになるかも知れませんね」
「そうです。これから団塊の世代の人たちの多くが自然系のレクリエーションに向かうことが予想されますが、ただ自然の中に身を置いてそのときを楽しむだけのフローな時間の過ごし方も結構ですが、体験を自分自身の成長の度合いと考えて研鑽を積むという生き方は、案外日本人の性向に合っているのではないでしょうか」

    *   *   *   * 

 こういうシステムを北海道のどこかで作れないだろうか。一見のお客さんであっても講習を受けることで人間としての成長を感じることが出来るだろう。

 また道の駅のスタンプラリーのように、スタンプが全て集まらないと気持ちが悪いというモチベーションの保ち方も良いかも知れない。そのうえで、そのことが自分の資格として認定されるという社会システムは、参加者にやる気をもたらさないだろうか。

 それがまた観光の一つのアクティビティやお土産になるようなことがあれば、観光業者と、自然保護、そして参加者の全てにとってwin-winな関係が構築出来そうに思うのだが、いかがだろうか。

 キーワードは「フローの時間からストックの時間へ」である。

 蕎麦だって、食べたそのとき「美味い」と思って過ぎればフローな楽しみ方だが、これを食べ歩きで一覧表を作り続ければ立派なストック資産として本が書けたりもするだろう。

 学び始めるのに遅すぎるということはありません。生涯学習のご用命は当「小松屋本舗」までどうぞ。

【明日から道東出張です】
 明日からツール・ド・北海道の開会式やらシーニックバイウェイルートの視察などで道東方面へ出張して、帰ってくるのは土曜日になります。

 冒頭にも書きましたが、夜にパソコンにアクセス出来ない場合は更新が出来ないかも知れませんがどうぞお許しを。

 書くことを貯めるとなかなか辛いものがあるのですが、まあがんばります。では行ってきます。 

    *   *   *   * 

 
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