
飲み会が続くと定期的な更新が滞りがちです、すみません。
写真は観光社会資本として取り上げられた稚内北防波堤ドームです。
今日は、
■観光社会資本とはなにか? の1本です。
【観光社会資本とはなにか?】
観光社会資本についての事例集のとりまとめを本省が一月ほど前から始めた。「観光社会資本」とは観光資源となっている社会資本、社会インフラという意味で使っている。
要は我々が公共事業で作っている施設の中には観光振興に役立っているものが結構あるでしょ、ということのPRである。
「観光に役立つ」という言い方を今回は二つに定義付けして、
①社会資本の施設そのものが観光の対象になっている場合、
②社会資本を活用することで観光活動が行われている場合、
いうことの中で事例を集めてみたものである。
今回の集め方は、広く一般に公募したり、各地方の下部組織を使って積み上げてきたものではなく、あくまでも本省が「これは間違いなく観光社会資本だ」と思うものを本省内で収集・協議して了解したもので、全国で259例を数えそのうち北海道からは19例が登録されている。
北海道の代表的事例は、①として札幌を代表するシンボル空間「大通公園」、四季を通じて自然とのふれ合いを楽しめる「滝野すずらん丘陵公園」、紅葉映える豊平峡の「豊平峡ダム」などが挙げられている。
また②の例としては、北海道開発局が最近売り出し中の、「道」をキーワードとして地域が主体となって景観整備や活性化に取り組む「シーニックバイウェイ北海道」が挙げられている。
北海道からたったの19事例ということになると、「なぜ○○は採用されなかったのか?」といった問い合わせが来ることも予想されるが、今回はあくまでも最終決定ではなく事例集ということであり、これからも随時追加登録を認めているので、大いに声を上げてもらうのが良いだろう。
我々の作っている公共施設は間違いなく地域の観光振興に役立っているはずなのに、これまではそういうことを意識した作り方やデザインなどは、まともには予算執行上は考慮されてきてはいなかった。
そのことは、施設の価値を下げこそしていないものの、もう一工夫することでその価値をもっと高めることも出来るはずである。決して無駄遣いやコスト縮減という切り口とは別の有り様があるはずだ。
* * * *
かつて河川局長まで務められながら、河川から文明・文化を語り続けている竹村公太郎氏の著書「日本文明の謎を解く(清流出版、1800円+消費税)」のなかで、竹村さんはアメリカのフーバーダムを初めて見たときの衝撃を鮮やかに書き記している。
フーバーダムは公共事業を行う者にとっては聖地みたいなもので、1936年に完成したアメリカ最大のダムである。
アメリカ大恐慌の失業者対策の一環として始められたこのプロジェクトは、コロラド川の洪水反乱を防ぎ、水力発電、水道、灌漑用水の供給などを目的としている。
その貯水量は350億立方メートルで、日本中の貯水量を集めても200億立方メートルにしかならないというから、いかにこのダムが巨大化が分かるだろう。
竹村氏はこのダムを初めて見たときに、コンクリートアーチダムの三次元曲面という土木技術的には極めて難しいダムにあって、その頂上付近にダム構造や機能には全く関係ない張り出しテラスが作られていたのだ。
そのことはその難しさを知っている竹村氏にとっては「常軌を逸している」としか思えず、観光客を案内しているOB技術者をつかまえて、「なぜあんなテラスをわざわざ作ったのか?」と問いただしたのだという。
そしてその答えは優しく諭すような口調での「ダムの上から下を覗かせたやりたかったからだ。ここに来る皆を怖がらせてやりたかったからだ」というもので、その答えに竹村氏は「唖然とした」という。
氏はこう述べている。「この張り出しテラスという遊び心は、フーバーダムの価値を間違いなく高めている。この遊び心によって、文明の下部構造のフーバーダムは全米の人々から愛される国家的遺産となった」と。
まさに日常生活を下支えしている施設そのもののドラマ性が感動や喜びに変わる時代が近づいているし、そのドラマ性を呼び起こすことが我々の目的になりうる時代が近づいている。
* * * *
旭川の旭橋を見てご覧なさい。ごてごてした飾り付けではない、構造的・力学的必然から来る機能美こそ我々が胸を張って見せられる最高の芸術作品ではないか。
社会インフラ整備に新たなマインドの火をともそうではないか。
写真は観光社会資本として取り上げられた稚内北防波堤ドームです。
今日は、
■観光社会資本とはなにか? の1本です。
【観光社会資本とはなにか?】
観光社会資本についての事例集のとりまとめを本省が一月ほど前から始めた。「観光社会資本」とは観光資源となっている社会資本、社会インフラという意味で使っている。
要は我々が公共事業で作っている施設の中には観光振興に役立っているものが結構あるでしょ、ということのPRである。
「観光に役立つ」という言い方を今回は二つに定義付けして、
①社会資本の施設そのものが観光の対象になっている場合、
②社会資本を活用することで観光活動が行われている場合、
いうことの中で事例を集めてみたものである。
今回の集め方は、広く一般に公募したり、各地方の下部組織を使って積み上げてきたものではなく、あくまでも本省が「これは間違いなく観光社会資本だ」と思うものを本省内で収集・協議して了解したもので、全国で259例を数えそのうち北海道からは19例が登録されている。
北海道の代表的事例は、①として札幌を代表するシンボル空間「大通公園」、四季を通じて自然とのふれ合いを楽しめる「滝野すずらん丘陵公園」、紅葉映える豊平峡の「豊平峡ダム」などが挙げられている。
また②の例としては、北海道開発局が最近売り出し中の、「道」をキーワードとして地域が主体となって景観整備や活性化に取り組む「シーニックバイウェイ北海道」が挙げられている。
北海道からたったの19事例ということになると、「なぜ○○は採用されなかったのか?」といった問い合わせが来ることも予想されるが、今回はあくまでも最終決定ではなく事例集ということであり、これからも随時追加登録を認めているので、大いに声を上げてもらうのが良いだろう。
我々の作っている公共施設は間違いなく地域の観光振興に役立っているはずなのに、これまではそういうことを意識した作り方やデザインなどは、まともには予算執行上は考慮されてきてはいなかった。
そのことは、施設の価値を下げこそしていないものの、もう一工夫することでその価値をもっと高めることも出来るはずである。決して無駄遣いやコスト縮減という切り口とは別の有り様があるはずだ。
* * * *
かつて河川局長まで務められながら、河川から文明・文化を語り続けている竹村公太郎氏の著書「日本文明の謎を解く(清流出版、1800円+消費税)」のなかで、竹村さんはアメリカのフーバーダムを初めて見たときの衝撃を鮮やかに書き記している。
フーバーダムは公共事業を行う者にとっては聖地みたいなもので、1936年に完成したアメリカ最大のダムである。
アメリカ大恐慌の失業者対策の一環として始められたこのプロジェクトは、コロラド川の洪水反乱を防ぎ、水力発電、水道、灌漑用水の供給などを目的としている。
その貯水量は350億立方メートルで、日本中の貯水量を集めても200億立方メートルにしかならないというから、いかにこのダムが巨大化が分かるだろう。
竹村氏はこのダムを初めて見たときに、コンクリートアーチダムの三次元曲面という土木技術的には極めて難しいダムにあって、その頂上付近にダム構造や機能には全く関係ない張り出しテラスが作られていたのだ。
そのことはその難しさを知っている竹村氏にとっては「常軌を逸している」としか思えず、観光客を案内しているOB技術者をつかまえて、「なぜあんなテラスをわざわざ作ったのか?」と問いただしたのだという。
そしてその答えは優しく諭すような口調での「ダムの上から下を覗かせたやりたかったからだ。ここに来る皆を怖がらせてやりたかったからだ」というもので、その答えに竹村氏は「唖然とした」という。
氏はこう述べている。「この張り出しテラスという遊び心は、フーバーダムの価値を間違いなく高めている。この遊び心によって、文明の下部構造のフーバーダムは全米の人々から愛される国家的遺産となった」と。
まさに日常生活を下支えしている施設そのもののドラマ性が感動や喜びに変わる時代が近づいているし、そのドラマ性を呼び起こすことが我々の目的になりうる時代が近づいている。
* * * *
旭川の旭橋を見てご覧なさい。ごてごてした飾り付けではない、構造的・力学的必然から来る機能美こそ我々が胸を張って見せられる最高の芸術作品ではないか。
社会インフラ整備に新たなマインドの火をともそうではないか。
北海道の中で、観光関係の各団体が玉に磨きをかけてその価値をもっと増やしてあげるべき施設群ですね。
まずは一つ一つ、自分の目で見てみるところから始めたいと思います。
現代の合理的標準との差を見つけることでその分析ができるのではないかと考え始めています。「思い入れ価値の構造」を紐解けるとおもしろいですね。
それを貨幣価値に換算するなどというのは愚の骨頂かな。