実家に電話をして「何か用事があるかい?」と訊くと、「ちょうど良かった買い物に行きたいんだよ」と母。
実家に車でついて「何を買いたいの?」と言うと「野菜の苗さ」とのこと。
もうちょっと歩いただけでも「こわいこわい(疲れてしんどい)」という母ですが、それでもまだ庭を空にしておくことは許されないのです。
「どこへ行く?」
「いやあ、もう午後だから近くのホームセンターじゃあいい苗がなくなっているわ」
「どうする?」
「花のとびつかならあるかもしれないけどね」
良く聞けば、なんと実家のすぐそばに「花のとびつか」という、北海道で一番大きな花の苗を売っているところがあるとのこと。
「じゃあそこに行こうよ、どうせ車なんだから」
母はまず近いところで用を足そうとしていたので、車でちょっと遠くへ行くという発想がなかったのです。
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「花のとびつか」は札幌と石狩市を結ぶ四番通り沿いにある大型のフラワーグリーンショップです。
舗装がされていない砂利敷きですが広い駐車スペースがあり、そこにこれまた大きな温室が広がっていて、花から野菜まで実にたくさんの苗が置かれています。
確かにこれはちょっとしたホームセンターとは比べ物にならないくらい大きな売り場面積です。
逆に言えば、苗を探すのが一苦労。
カートを支えにしながら歩くのがやっとの母には右から左まで歩くのはちょっとしんどそうでしたが、それでもトマトからキュウリ、ししとうなどの苗を数個買って思いは達せられたようです。
「苗なんか買ったらまた畑の面倒を見なくちゃならないでしょ」
「だってしょうがないじゃない」
確かに畑があるのに何も植えずにいているのは、日本人としては許されがたい行為だということに、歳を取ってくると気がついてきました。
収穫を得るというよりも、なにもせずに雑草を生やすことに対して罪悪感を感じるのでしょう。
そういう私も今年の菜園を賑やかにするために、キュウリ、ズッキーニ、ししとう、トマト、いちごなどの苗を買ってきました。
今日は朝からトマトをプランターに植えて、小さな庭にはキュウリやいちご、ズッキーニを植えました。
いずれ子供に「もう野菜を植えるのはよしたら?」と言われるかもしれませんが、そのときにはきっと「だってしょうがないじゃないか」と言い返すような気がします。
野菜を植えて今年も土に接する夏です。