駒子の備忘録

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『ブックショップ』

2014年10月12日 | 観劇記/タイトルは行
 赤坂区民センター、2014年10月12日マチネ。
 ある古い本屋のオープンの日、新しいオーナーのジェーン(麻乃佳世)は子供の頃からの夢がかなって希望にあふれていた。しかしそこは怖い噂で評判の本屋だった。真夜中、突如ジェーンの前に現れたのは、この本屋のかつてのオーナーだと名乗る幽霊のヴィクター(あぜち守)だった…
 脚本/マリー=ジョゼ・バスティアン、翻訳/長谷川仰子、演出/フレデリック・デュボワ。2005年にカナダでフランス語版を初演、2006年英語版初演。日本では四演目。

 久々のヨシコ目当てで出かけたのですが…発売開始からかなりたってからネットで買ったチケットが何故か最前列で…さすがにそんなに近くで観るとちょっと歳月を感じて残念でした。引いて見たらもっと可愛かったと思うなあ、芝居はキラキラしていたので。
 ただ、脚本に若干の不備があるとは感じました。ジェーンが本が大好きな少女でそのまま成人したような子だというのはわかる。でも本屋の経営が夢だとか内気で人見知りだとかの情報は何もなかったので、ここが普通の書店なのか古本屋なのかもよくわからなかったし、本に囲まれていれば満足なのかお客に本を届ける仕事をしたいのかさっぱりわからなかったし、隣のチョコレート屋のサミュエル(溝呂木賢)ともどこでどう出会ってどこにどう惹かれたのか全然描かれないし、だから彼が本屋を訪ねてきたときにジェーンがなんだってあんなに大騒ぎをするのか皆目わかりませんでした。エキセントリックな女に見えちゃいましたよ。それじゃダメでしょ?
 夢を追って本屋を持って、でも内気すぎて人づきあいも商売も下手な女性のところにゴーストが現われて、ゴーストの後悔を癒しながらジェーンの成長と恋を見守る…これはそんなハートウォーミングな小品になるはずの話なんでしょ? だから前提をもっとていねいに演出して欲しかったです。
 でも四人のキャストで回す舞台はとてもチャーミングでした。ヴィクターの上手くいかなかった恋の相手ペトラを演じた旺なつきが絶品でした。こういう、過去・幻想・夢の女を演じさせたらOGの右に出る者はいません。ゴージャスで美しく、ゆめゆめしい、現実離れした女性っぷりが素晴らしかったです。ほぼ着たきり雀のジェーと違ってお衣装替えも何度かあるしね(^^;)。
 ただ芝居の仕事としてはあぜちさんが一番大変だったろうし肝だったろうと思います。初めて拝見する役者さんでしたが、ユーモラスで味があって声が良くて感心しました。
 せっかく何度も再演されているウェルメイドな舞台なんだから、ぜひあと少しだけ脚本に手を入れて、愛されていってほしいなと思います。


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