駒子の備忘録

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虹は架かっているか~『アルカンシェル』マイ初日雑感

2024年02月14日 | 日記
 イケコ…などと愛称で呼ぶべきではもうないのでしょう。小池修一郎氏に関する疑惑の週刊誌報道があり、しかし劇団はスルーを決め込み、けれど集合日は遅れ、配役発表が遅れ、その後も初日直前まで人物相関図が出ず、座談会の掲載は次月号に回され、生徒はスカステや「歌劇」で演出家の名をほぼ口にせず…いったいどうなってんねん、という中での初日開幕だったと思います。
 そこで聞こえてくる評判も、初日はファンが観るものだから…というのを差し引いても、期待値の持ち方にもよるのでしょうがものすごくまちまちでした。「泣けた」「傑作」から「良く出来ている」「まあまあでは」、逆に「退団公演に名作なし、が今回も実証された」とか「ナチス礼賛で言語道断」とかとか…
 これは自分で観てみないとなんとも言えないな、と、初日の手配はつきませんでしたがここなら取り次いでもらえるだろうというド平日昼の回を頼んで、2月14日13時の回をシュッと日帰りしてきました。ちなみにバレンタイン・デーでしたが、アドリブなどは特に何もなかったかと思います。

 で、パリは燃えているか、虹は架かっているか、風は吹いていないか…とどぎまぎしつつ、まずはフラットに観よう、と席についたのですが…

 …なんか…別に…良くも悪くもフツーの出来、じゃなかったですか…?
 目新しさはなくて、こうなるんだろうなーというふうに展開して、でもベタの破壊力とかまではなくて、でもトンチキじゃないし破綻してもないし、まあまあそこそこちゃんとしてません…?ってのが、私の幕間の感想でした。そして終演後も、そんな感じの感想を持ちました。
 名作でも駄作でもない…ってのがどうなんだ、ってのはありますが…もはや貴重なオリジナル作でもありますし、ベテランの手練れ感が奏功した一作、なのではないでしょうか。バックステージもの、というほどではないけれど、ドイツ占領下のパリのレビュー小屋を舞台にして、劇中劇のようにレビュー場面を散りばめて…という構成もハマっていたと思います。
 ただなんか、セットがショボいというか、妙に低予算感がありましたけどね…(装置/松井るみ)お洒落さがない、というか。
 また、ドイツ軍の描写については確かになかなかヒヤヒヤしましたが、でもギリギリでアリだったと思います。ひとこフリードリッヒみたいな、ドイツ国防軍で、芸術に理解があって、エンタメに国境はないと信じて行動できるタイプの人間と、まゆぽんコンラートみたいなゴリゴリに凝り固まったナチスとは、ベタすぎるくらいにきっちり描き分けられていましたし、ナチスの脅威はきちんと脅威として描かれていて、カッコいいものみたいな表現ではまったくなかったと思います。専科で特出してくれているまゆぽんのための場面はあって、そのまゆぽんはもちろんカッコいいんだけれど、でもちゃんと怖いものとして描かれている。あかちゃんジョルジュの顛末といい、妄執や狂信は哀れで怖い、戦争は狂気だ、絶対ダメだ…というのはちゃんと打ち出されていると思いました。
 パリ解放後、連行されるドイツ兵を見送るパリ市民たちが、怨嗟の目を向けはしても石を投げたり手を出したりしなかったところも、いいなと思いました。暴力に暴力で応じたら泥試合で、戦いは新たな戦いを生むだけ、復讐は何も生まないのです。出て行ってくれればいい、そして友として再訪してくれるなら迎え入れる…星空ちゃんアネットでなくても、みんなそうする。そういうことだと思うのです。私はけっこう胸アツでした。
 劇場、ということでメタっぽいあたりはいかにもベタでしたが、これも悪くなかったと思いました。とにかく、フツーに考えたらフツーこうするだろう、というところを押さえているだけのようでもあり、でもそういうことをてんでできていない作品もこちとらたくさん観ているので、「なんか…ちゃんとしていて、いいじゃん?」とか思わされてしまうのが、なんかどうにもちょっと悔しいのでした。

 れいちゃんマルセルやまどかカトリーヌの設定にもちょっと一捻りあって、ただ脚本が追いついていない感じで、あまり描き込まれていないので中の人はまだ役をつかんでいないのではないか…という感じは、しなくもなかったです。役に愛嬌がなくて、あまりチャーミングに見えなかった気がします。ふたりの心が寄り添い出してからはラブのオーラでそれがカバーされるのでいいんですけど。まあこれは中の人たちがここからどうにかしてくるかな。
 対してフリードリッヒは儲け役とまでは言わないけれど、とてもいいお役で、次期トップスターのお役ということもありますし、もちろん華も実もあるひとこで上手い、楽しい! 星空ちゃんも、相変わらずペタンコの靴履いて足下が美しく見えないことだけがネックですが、芝居はホントいいんですよね。アネットがまたヘンに卑屈に弱気にならない、可愛いだけのふんにゃりしたお役になっていないのがすごくよかったです。これはホンからはどうとでも演じられるお役だと思うので、星空ちゃんがこういう役作りをしたんだと思うんですよね。私はホント顔が苦手というのだけを克服すれば次代も楽しく観られるはずなんだ…
 ほのかイブは額縁役で、現代の青年が曾祖父の時代を語るという構成になっている舞台です。曾祖父がヒロさん、祖父が湖春ひめ花ちゃん。舞台にはよくあるギミックで、狂言回しとしてやや便利に使われすぎな気もしましたが、ほのかちゃんはさすがいいバランスで舞台に存在していたと思いました。
 あかちゃんがこじらせ役で、ちょっとパターンすぎてこっぱずかしいくらいなんですけれど、きっちりやってくれています。これでご卒業のほってぃにはもう少し仕事が欲しいところでしたけど、まあこんなものかな。ダンサー兼レジスタンス・グループではらいとが年下役として台詞をもらっている感じ。ちょっと前のかりんちゃんですね。次は3番手なんだしもっと仕事させればできる人ですよ…(パレード、はなこはセンターでだいやはそうでないのにちょっと退きました。これまでもそうでした? てか劇団ははなこを大事にしすぎでは…次代はひとこほのからいとなんでしょ、その次はれいんくんとかまるちゃんとかもっと下へいくんでしょ。ぼちぼち、さあ…)
 娘役は、あわちゃんがポワント履いてダンサー役としての見せ場をもらっていましたが、あとは糸ちゃんみょんちゃんが歌うくらいで、他はほぼ仕事ナシ。みさこはホント大根だと思うのでもういいけど、みこたんには餞別にもっと仕事をくれよー、もったいないよー…
 てかフィナーレの娘役群舞でも、ふたりともいい位置に置きこそすれれいちゃんとのひと絡みも与えないのってナニ? 積んだお金が足りなかったってことですか??
 てか男役群舞も退団者ピックアップがなかったよね、ひどくない?? てか今回の群舞の振付、苦手だわ…それでいうとデュエダンももの足りなかったわ、大階段をもっと使うか、まどかはセンターからのセリ上がりだろう…! 最後はれいちゃんのソロダンスで締めるというなら、まどかはセリ下がりしてもよかったはずです。ちょっと扱いひどくなーい!?とは私はプンスカしました。
 あとパレードのお衣装、ドレスはデコレーションケーキみたいで可愛いんだけど、首のリボンはダサかないか…今すぐ取ってもええんやで…(ToT)

 まあでも総じて組ファンは楽しく通えるのでは…?と思いました。私も楽近くに友会が当たっているので、また行きます。東京公演は一次が外れたから、二次頼み、そしてお取り次ぎ頼みですね…
 てかまどかMSに行きたいんです、ツテある方がいらしたらどなたかそっとご連絡いただけませんか…(ToT)
 プレお披露目と裏の別箱も発表されて、花組のこの先も楽しみな限りです。お披露目は脳天気なラブコメとかでもいいですね。スターに当て書きオリジナル新作を用意できてこそ、ですよ劇団…! 引き続き、もろもろ注視していきたく思っています。






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