ローレル・K・ハミルトン『輝ける王女の帰還』『嘆きの女神の秘密』ともに上下巻(ヴィレッジブックス)
「妖精王女メリー・ジェントリー」というシリーズタイトルでもっとたくさん書かれているようなのですが、第二弾までで訳出が止まっているようです。おーい、続きは出ないの!? 人気がなかったので翻訳打ち切りなの…?(ToT)
でもわからないこともないです。私はおもしろく読んだのですが(^^;)。以下、その理由を例によってねちねち語らせていただきます。
舞台は現代のアメリカ・ロサンジェルスですが、現実とは違った歴史をたどった世界でのお話で、アメリカ合衆国第三代大統領トマス・ジェファーソンによってヨーロッパからの移住が認められた妖精族が、イリノイ州の遺跡の地下に妖精国を築いて人間と共存しながら暮らしている、という設定の世界です。
ヒロインのメリーは、超自然的な事件の魔力による解決を専門とする探偵事務所の女性探偵。しかしてその正体は、良い妖精の王を伯父に、悪い妖精の女王を伯母に持つ妖精王女、メレディス・ニクエススだったのです…!
というワケで、適度にファンタジックな設定もありつつミステリーの体裁も取りつつ、基本的にはロマンス小説なんでしょ、と思って読み始めたのですが、なかなかどうして、これがまた、という代物でした。
まず、ヒロインの一人称なのはいいとして、アバンというか最初のキャッチ―なエピソードを提示したくらいのところで、ある程度設定説明というか、実際の現実の世界とこの物語の世界との違いをうまく説明するくだりが欲しいところなのですが、それがないままに突き進み、あれよあれよと展開して謎また謎が続くので、脱落する読者がかなり出るだろうな、と思われます。なんせ純粋な人間のキャラクターがほぼいなくて、出てくるのはみんななんらかの妖精なので、その常識とか行動倫理とかが人間のものと違いすぎて理解しづらく感情移入もしづらいのです。
仮にもファンタジーを読もうという者、エルフとかドワーフとかくらいは知識として押さえているとは思いますが、しかしこのお話に出てくる妖精たちの設定って欧米の読者ならまず常識なんでしょうかね? そのあたりの定義とか説明もほぼないので、これまた混乱し脱落する読者が多数かと想像できます。
妖精、というのはそもそも何を指すのか?とかね。シーとは上級妖精のことなのかな? 良い妖精がシーリーで悪い妖精がアンシーリー、は説明があるからわかるとして、下級妖精のブラウニーってどんなもの?とかゴブリンってそもそも何?とか、小妖精デミ・フェイってティンカー・ベルみたいなああいうの?とかとか、よくわからないままに多数の種族が出てきてみんな反目し合っているのです。何ができて何ができないとされているのか、何が正しいとされているのかがわからないので、読んでいて立ち位置が定まらず不安になるんですね。これはつらい。
それでも目をつぶって読み進めれば、なんだかんだ言ってヒロインが総モテの逆ハーレム展開になるのでそこはロマンス小説の華、と思えるのですが、スリリングでセクシャルな展開が続くわりには肝心の濡れ場の描写が超あっさりで淡白で、これじゃ萌えないよ!となっちゃうんだと思います。
かつ、そのセクシャルさがけっこうエグいのです。たとえば日本のTLコミックとかBLには3Pって実はそんなに珍しいモチーフじゃないと思うんですけれど、こうした欧米のロマンス小説にはほぼ出てこないのはやはり、キリスト教的な何かがあるんでしょうかね? イヤ私もほとんどの女性は一夫一婦制というか一対一のおつきあいというかこの世にただひとつの恋みたいなものを理想としていると思っているのでそれはもちろんわかるのですが、でも恋愛ファンタジーって、妄想ってもっと自由なものだとも思ってるんですよ。でも、この作品はさらに自由すぎる気がしました(笑)。
なんせわりと最初のセクシャル展開が触手だし(笑)。これが本命の相手役かな?と思われるキャラクターとのセックスのあとにはヒロインが「仔犬が産まれるかもしれないわね」とか言うし、小人みたいなものでペットみたいだったキャラクターとも結局やるこたやるし、最初こそプライバシーにこだわってふたりと同時になんて冗談じゃない絶対無理とか言っていたのにいつのまにか三人同衾全然OK、みたいになってるし…
これはけっこうついていけない、となる人が多いと思うんですよね。過激すぎるというか…もったいないし残念ですが、仕方ない気もします。
それでも私が何をおもしろがったかと言うと、なんかものすごく新時代のダイバーシティを感じたというか、リベラルな多様性故のカオスと新時代のロマンスの香りを嗅ぎ取ったからです。
ヒロインは様々な種族の混血で、妖精のように不死ではなく、純潔の人間より老化は遅いものの死すべき者であり、魔力も弱く、妖精の宮廷からは差別されて育っています。けれど女王の姪で宮廷の権力争いから暗殺の対象になったりしたので、幼少期に人間界に避難してそこで育ったという設定で、心ある父親から様々な種族の文化や常識や儀礼を学び、誰とでも対話ができるし交渉もできるスキルを持っている、という設定です。だから非力でも、反目し合う妖精たちの隙をぬって味方を作れたり助力を引き出せたり協力態勢が組めたりする。それで次期王座を争う女王の甥に対抗できるのです。
これってまんま、人間の民族とか文化とか宗教のことだよな、と思うのです。理解し尊重すれば友達になれる、知らないからぶつかる喧嘩になる戦争になる。このヒロインは新時代のヒロインたりえるな、と思ったのです。
そして恋人がたくさんいるんだけれど、実は全然恋愛していないのもおもしろい。なんせ次期王座を得るのは早く子をなした方、という争いをヒロインがライバルとしているので、妊娠するために恋人たちの中から毎夜相手を変えて順番にいたしているという状態で、彼らもヒロインになんとしても妊娠してもらいたいからお互い嫉妬するとかはない、というかそもそも妖精って多情で精力抜群だけど繁殖力が弱いとされているし嫉妬とか束縛とかがなくて…という、なんかあまりしんみりシリアスにならない世界でのお話なのです。だからロマンチックでないとも言えちゃうのですね。でもそれもまたおもしろいと私は思うのです。
でもなー、アンケート結果とかが悪かったのかなー、どうも続きが出てないようなんだよなー、それも含めて商売だからなー、残念です。こういうことがあるから、完結してから読もうってなるんだけど、でもそうやって売れないと途中で終わっちゃうんですよね…悲しい…
「妖精王女メリー・ジェントリー」というシリーズタイトルでもっとたくさん書かれているようなのですが、第二弾までで訳出が止まっているようです。おーい、続きは出ないの!? 人気がなかったので翻訳打ち切りなの…?(ToT)
でもわからないこともないです。私はおもしろく読んだのですが(^^;)。以下、その理由を例によってねちねち語らせていただきます。
舞台は現代のアメリカ・ロサンジェルスですが、現実とは違った歴史をたどった世界でのお話で、アメリカ合衆国第三代大統領トマス・ジェファーソンによってヨーロッパからの移住が認められた妖精族が、イリノイ州の遺跡の地下に妖精国を築いて人間と共存しながら暮らしている、という設定の世界です。
ヒロインのメリーは、超自然的な事件の魔力による解決を専門とする探偵事務所の女性探偵。しかしてその正体は、良い妖精の王を伯父に、悪い妖精の女王を伯母に持つ妖精王女、メレディス・ニクエススだったのです…!
というワケで、適度にファンタジックな設定もありつつミステリーの体裁も取りつつ、基本的にはロマンス小説なんでしょ、と思って読み始めたのですが、なかなかどうして、これがまた、という代物でした。
まず、ヒロインの一人称なのはいいとして、アバンというか最初のキャッチ―なエピソードを提示したくらいのところで、ある程度設定説明というか、実際の現実の世界とこの物語の世界との違いをうまく説明するくだりが欲しいところなのですが、それがないままに突き進み、あれよあれよと展開して謎また謎が続くので、脱落する読者がかなり出るだろうな、と思われます。なんせ純粋な人間のキャラクターがほぼいなくて、出てくるのはみんななんらかの妖精なので、その常識とか行動倫理とかが人間のものと違いすぎて理解しづらく感情移入もしづらいのです。
仮にもファンタジーを読もうという者、エルフとかドワーフとかくらいは知識として押さえているとは思いますが、しかしこのお話に出てくる妖精たちの設定って欧米の読者ならまず常識なんでしょうかね? そのあたりの定義とか説明もほぼないので、これまた混乱し脱落する読者が多数かと想像できます。
妖精、というのはそもそも何を指すのか?とかね。シーとは上級妖精のことなのかな? 良い妖精がシーリーで悪い妖精がアンシーリー、は説明があるからわかるとして、下級妖精のブラウニーってどんなもの?とかゴブリンってそもそも何?とか、小妖精デミ・フェイってティンカー・ベルみたいなああいうの?とかとか、よくわからないままに多数の種族が出てきてみんな反目し合っているのです。何ができて何ができないとされているのか、何が正しいとされているのかがわからないので、読んでいて立ち位置が定まらず不安になるんですね。これはつらい。
それでも目をつぶって読み進めれば、なんだかんだ言ってヒロインが総モテの逆ハーレム展開になるのでそこはロマンス小説の華、と思えるのですが、スリリングでセクシャルな展開が続くわりには肝心の濡れ場の描写が超あっさりで淡白で、これじゃ萌えないよ!となっちゃうんだと思います。
かつ、そのセクシャルさがけっこうエグいのです。たとえば日本のTLコミックとかBLには3Pって実はそんなに珍しいモチーフじゃないと思うんですけれど、こうした欧米のロマンス小説にはほぼ出てこないのはやはり、キリスト教的な何かがあるんでしょうかね? イヤ私もほとんどの女性は一夫一婦制というか一対一のおつきあいというかこの世にただひとつの恋みたいなものを理想としていると思っているのでそれはもちろんわかるのですが、でも恋愛ファンタジーって、妄想ってもっと自由なものだとも思ってるんですよ。でも、この作品はさらに自由すぎる気がしました(笑)。
なんせわりと最初のセクシャル展開が触手だし(笑)。これが本命の相手役かな?と思われるキャラクターとのセックスのあとにはヒロインが「仔犬が産まれるかもしれないわね」とか言うし、小人みたいなものでペットみたいだったキャラクターとも結局やるこたやるし、最初こそプライバシーにこだわってふたりと同時になんて冗談じゃない絶対無理とか言っていたのにいつのまにか三人同衾全然OK、みたいになってるし…
これはけっこうついていけない、となる人が多いと思うんですよね。過激すぎるというか…もったいないし残念ですが、仕方ない気もします。
それでも私が何をおもしろがったかと言うと、なんかものすごく新時代のダイバーシティを感じたというか、リベラルな多様性故のカオスと新時代のロマンスの香りを嗅ぎ取ったからです。
ヒロインは様々な種族の混血で、妖精のように不死ではなく、純潔の人間より老化は遅いものの死すべき者であり、魔力も弱く、妖精の宮廷からは差別されて育っています。けれど女王の姪で宮廷の権力争いから暗殺の対象になったりしたので、幼少期に人間界に避難してそこで育ったという設定で、心ある父親から様々な種族の文化や常識や儀礼を学び、誰とでも対話ができるし交渉もできるスキルを持っている、という設定です。だから非力でも、反目し合う妖精たちの隙をぬって味方を作れたり助力を引き出せたり協力態勢が組めたりする。それで次期王座を争う女王の甥に対抗できるのです。
これってまんま、人間の民族とか文化とか宗教のことだよな、と思うのです。理解し尊重すれば友達になれる、知らないからぶつかる喧嘩になる戦争になる。このヒロインは新時代のヒロインたりえるな、と思ったのです。
そして恋人がたくさんいるんだけれど、実は全然恋愛していないのもおもしろい。なんせ次期王座を得るのは早く子をなした方、という争いをヒロインがライバルとしているので、妊娠するために恋人たちの中から毎夜相手を変えて順番にいたしているという状態で、彼らもヒロインになんとしても妊娠してもらいたいからお互い嫉妬するとかはない、というかそもそも妖精って多情で精力抜群だけど繁殖力が弱いとされているし嫉妬とか束縛とかがなくて…という、なんかあまりしんみりシリアスにならない世界でのお話なのです。だからロマンチックでないとも言えちゃうのですね。でもそれもまたおもしろいと私は思うのです。
でもなー、アンケート結果とかが悪かったのかなー、どうも続きが出てないようなんだよなー、それも含めて商売だからなー、残念です。こういうことがあるから、完結してから読もうってなるんだけど、でもそうやって売れないと途中で終わっちゃうんですよね…悲しい…
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