駒子の備忘録

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『fff/シルクロード』マイ初日雑感

2021年01月08日 | 日記
 世間では仕事始めかと思いますが、みんなが一斉に動き出す日に動いて感染拡大に寄与してどーする、とさくっと有休を取って、宝塚歌劇雪組『fff/シルクロード』宝塚大劇場公演1月5日のマチソワ日帰りダブル観劇で遠征始めをシュッとキメてきました。ひとり観劇ですから客席でのおしゃべりもしませんしね!
 行きののぞみはでっかいA、帰りは初のSかつ貯まっていたポイントでグリーン車始め、大休憩にはセルカに新しくできたと聞いて気になっていたZuCafeさんでステーキカレーのランチをし、帰路にはルマンのビーフカツサンドをテイクアウトしての、私なりの大豪遊でした(^o^)。
 観劇もマチネは2階前方列ほぼセンター、ソワレは1階中ほど列サブセンブロック席と、いずれも観やすくかつ見え方が変わって、楽しかったです。何より、これまで薄目で流し読みしていた感想ツイートをこれで心おきなく読める!と思うと嬉しいです。
 今月後半に花バウ合わせでB日程を再度観る予定ですが、東京公演はさすがにいろいろ厳しいかもしれませんよね。頼むよ友会…!
 最終的にはいつもの公演どおりマイ楽後に感想をまとめるつもりですが、以下、現時点での個人的所感を完全ネタバレで語らせていただきます。未見の方、ネタバレNGの方はご留意ください。

 さて、まずはやはりきぃちゃん扮する「謎の女」の正体について、ですが…さすがくーみん、要するにすべての答えはポスターにあったわけですね。実に正解です。
 私は、彼女の言動からすると、トートのようでもあり、死とか、絶望、不安、不幸、不慮の死や天寿をまっとうできなかったことによる無念…みたいなものの象徴、なのかな?などと推理しながら観ていました。ルートヴィヒは疫病神と呼び、また己が才能の化身であり恋人、心の友、もうひとりの自分みたいなものだとも捉えているようでした。謎の女自身は、戦場で死した兵士であり子供を失った母親、親に捨てられた子供、敵に犯された女だとのちに名乗ります。そうした者たちの不運、恨みや憎しみや哀しみが煮凝ったような存在だということなのでしょう。
 すべての人間につきまとい、その人生に暗い影を落とす彼女の存在を、人は意識しないではいられないのに、無視し目を背け嫌ってばかりいると、その人の人生は苦しみしかないものになる。しかし彼女を受け入れると、開く扉がある…そう、彼女の名は「運命」。ルートヴィヒが交響曲第5番に付けたタイトル、彼女に献呈すると言った曲です。私はズバリ正解を思いつかないままにこの解答タイムを迎えてしまったので、「ああ、なるほどね…!」と素直に感動してしまいました。まさに「やるならやってみろ、運命よ。」なのでした。
 「歌劇」を定期購読しているので年末に届いていて、座談会も先に読んでいたのですが、史実のベートーヴェンが生涯独身だったこともあり、また芸術家として本当に大家なので、普通のとおりいっペんのロマンスは似つかわしくない…とくーみんは考えたようですね。トップコンビの在り方としておもしろく、まただいきほらしくもあり、なかなかよかったのではないでしょうか。ピンクのお洋服になっちゃうところ、可愛かったなあ。あと言われるままにコーヒー出したり手紙を音読したりするのはいいとして、言われもしないのにちりとりと箒で床を掃き始めちゃうところもなんかめっちゃ可愛かったです。ピンクに気づいたルートヴィヒが妙に下世話なことを言い出すくだりも、妙にほのぼのと楽しかったです。男性キャラにこういう下世話な言動をさせるときに男性作家の脚本だともっとやり過ぎて下品になっちゃうことが多いと思いますが、女性作家は、ましてくーみんは絶妙な匙加減を熟知しているのが頼もしいです。ニヤニヤするけど、嫌な気持ちにはならない。情けないけど、微笑ましい。この塩梅が大事ですよね。それは男性キャラに自虐させるときも同じで、男性作家ならここもやり過ぎていたと思います。幻想の雪原(ザッツ・舞台で本当に名場面だと思う!)でナポレオン相手にうだうだ愚痴るルートヴィヒは、いじらしくもあってホントちょうどよかったと思います。あと、基本的に不幸キャラ続きだっただいもんに絶妙に似合ってしまっていた…(笑)
 そういう人間的な部分はちょいちょい描けているのですが、でも作品全体を見るとどうしても、歴史絵巻的になっちゃってるかな、というのと、テーマもちょっと観念的すぎるかもしれないな、と私は思いました。芸劇とかで観る外部ミュージカルなら諸手を挙げて絶賛していたかもしれませんが、私は宝塚歌劇にはわりとベタで下世話なラブロマンスを望むタイプの観客なので、うーんどうだろうこれだと私はちょっと萌えないかな…と感じてしまったのです。まあでも贔屓がいるなら、組ファンなら、楽しくリピートできるのではないでしょうか。浅薄な見方で申し訳ない…
 史実的なことは、学校の世界史で勉強した程度の知識と、『TRAFALGAR』『眠らない男』でナポレオンを観た程度の知識で十分理解できたと思います。ゲーテに関しては『春雷』の知識も別に要らないんじゃないかな。あとは『のだめカンタービレ』程度のクラシック音楽の知識…? まあベートーヴェンが「英雄」をナポレオン献呈したのにのちに裏切られてお怒りだった、とかはわりと有名なエピソードかと思います。音楽は数学に近い、とかそもそも神の真理に近づくためのもので…とかも『のだめ』にありましたよね。マイ初日は2階席から観たので、ここのフォーメーションは本当に素晴らしく、「ふおおぉ」とのだめ声が出そうになりましたよ…
 ただ、結局のところ今回の演目は、市民革命とか啓蒙思想、人民の幸福になる権利への目覚めなんかが生まれた時代に生きた人々の生き様…みたいなものを描いたものだったと思うので、ゲーテがルートヴィヒの音楽を「政治的すぎる」と評したことに習えば、私は「思想的すぎる」かな、と感じました。現代社会の問題点にも通じるような、いい台詞もいっぱいありましたしいちいち納得なのですが、再三言いますが私は宝塚歌劇にもっとベタな惚れた腫れたみたいなドラマを求めているので、言いたいことは理解できたと思うしその意見には基本的に賛成なんだけれど、でも私がここで観たかったものとはちょっと違ったな、と私は感じた、ということです。
 でも、その感覚を別にすれば、とてもよくできた作品だったとは思っています。
 各キャラもどうしても散発的な登場の仕方になりますがスターの出番としてもよく配慮されていたと思いますし、ラストの「アンコール!」や、バン!と暗転させて客席拍手のうちにスルスルと幕が下りる…という幕切れもお洒落だなと思いました。プロローグは好みじゃなかったけど…でも上手スッポンからナポレオン出して下手スッポンからゲーテ出して、満を持して銀橋センターからベートーヴェンどん!みたいなベタな始め方はワクテカでした。サインが出るのもいい。ポスターで大砲だったのが大きなラッパになっていたのもいい。盆やセリをガンガン使うのも楽しいし、だからこそ雪原とかラストとかの、すこーんと何もない舞台を生かした場面の美しさ、清々しさは絶品でした。
 そして歓喜の歌を組子全員で歌い上げて終わるので(「ありがとう!」にはちょっとエヴァの「おめでとう」を思い出さないこともなかったのはナイショです…)、そういう意味では確かに「喜劇」でしたし、基本的に人生の、生命の、幸福の喜びを歌い上げている作品に仕上がっているので、その点では全面的に賛同します。難聴始めさまざまな不遇、苦難に見舞われながらも創作を断念しなかった主人公の、明るく熱く強い生き方を素直に素晴らしいな、すごいなと思わせられました。
 「暴力の力、権力の力」というのは「力」という言葉がダブっていてちょっとアレなんですが、要するに戦争や政治ではなく音楽/芸術/エンタメこそが人々をより高く遠くに運び幸せにする…というのがテーマですよね。それに否やはもちろんありません。そしてこれはそれを訴えたくてこう作った作品なのだろうから、それはそれでいいんじゃないでしょうか、というのが私の感想です。なんかクサしているように聞こえたらすみません…贔屓がいる人が親身に観たらまた違うとは思うのです、すみません。観劇って個人的な行為だから、受け取るものが個々の立場で全然違うのは仕方ないと思うんですよね…ホントすみません。退団者のファンの方が楽しく通えているなら、それが一番だと思います。

 ショーはシルクロード、盗賊と宝石、というコンセプトががっちりあるショーなので、私はとても観やすかったです。そして菅野メロディーがやはりとても印象的でした。そしてきぃちゃんにひらめ、りさみちるひまりに夢白ちゃん、さらに最近めっきり気になるきららうみちゃんを観たくて、もう目が足りませんでしたよ…!
 ところでシルクロードって東の終点は本当はどこなのかな? ダスカは南京かと思っていたら上海でしたね、そりゃそうだ、バンドネオン・セルフパロだもんね。そのあとの場面は文革の北京イメージ?とか思ったのですが…そこからむりやり日本の宝塚につなげて黒燕尾か?と想像していたら、また砂漠に戻りましたね(^^;)。まあ、あくまでもイメージの旅だから、いいのかな。
 本物のホープ・ダイヤモンドはダイヤなんだから無色透明なのかな? 宝石はブルー縛りでしたが、雪組なのでエメラルドみたいな組カラーの緑でも素敵だったかも…と思ったりもしました。でもそうすると薔薇の色にはなりづらいよね。でもトップスターが次期トップに薔薇を渡すならやはり赤が定番なのでは?とも思いました。まあでも色はなんでもこういうベタは大事です。トップコンビ最後のデュエダンが白のお衣装、とかね。大事! ちなみにこの曲は大空さんが退団後のライブだかDSだかで歌ったので、私の脳内では大空さんヴォイスで再生されます。
 ともあれ生田先生の書いた歌詞「君の最後を俺が奪おう/誰にも渡さない」がすべてだな、というレビュー・アラベスクでした。早くまた観てあちこちチェックしたい!

 首都圏一都三県に緊急事態宣言が出て、宝塚歌劇も夜公演の終演時間を早めるために開演時間の前倒しが発表されました。それだと行けなくなる人、というのも多いでしょうし、劇団は払い戻し対応をすると発表していますし、事務作業含め大変な労力を割くことになるでしょう。けれど政府は早仕舞いは要請だから、として補償しないつもりなんだろうな…ホント嫌になります…
 関西もどうなることやらという感じですが、私は、上演してくれる限りは、万難を排して観劇に出かけたいと思っています。うがて手洗いマスク手指消毒と万全の準備をし、連れがいてもお友達とバッタリしても、しゃべらず静かに、ただ舞台を見守って、さくっと帰宅するつもりです。
 どうかキャストもスタッフも観客も、みんなご安全に…祈ります!



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