駒子の備忘録

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宝塚歌劇雪組『Shall we ダンス?/CONGRATULATION宝塚!!』

2014年02月08日 | 観劇記/タイトルさ行
 宝塚大劇場、2013年11月17日マチネ。
 東京宝塚劇場、2014年1月15日ソワレ、1月28日ソワレ、2月5日マチネ。

 平凡な家庭に生まれ、平凡な学生生活を送り、平凡な就職をして、平凡な家庭を築き、誰もが羨む幸せを手にした男、ヘイリー・ハーツ(壮一帆)。だが彼はいつしか毎日の通勤時に駅のホームから見えるボールルームダンスの教室を見上げ、窓際に佇んでいるひとりの美しい女性をみつめるようになっていた…
 原作/周防正行、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/周防義和、藤間仁(Elements Garden)、手島恭子。1996年に公開され、2004年にはハリウッドでリメイクされた同名映画をミュージカル化。

 テレビで放送していたハリウッド版を久々に観て、オリジナル版は久しく観ていないので細かいニュアンスなどはあまり覚えていなくて、そんな状態で観に行ったのですが、意外と「まんま」な印象に驚きました。まあ小細工せず、ていねいに舞台変換した、という感じで、ヘタな冒険をするよりはよかったのかもしれません。ドラマチックな歴史悲恋もの、とかではない、地味ギリギリですが上品な佳作に仕上がったのではないでしょうか。
 それでももちろん微妙な変更はされていて、一番大きいのは、オリジナル版が「男性の男性による男性のためのファンタジー」だとしたら宝塚版はちゃんと「女性の女性による女性のためのファンタジー」になっていたと思いました。役所コウジは草刈民代に(役名で言えずすみません)明らかに助平心、下心があったわけですよ。でもえりたんのヘイリーさんは優しい紳士で、うっすら程度の恋心はあったかもしれないけれどなかったかもしれない程度で、明らかにエラ先生(早霧せいな)が寂しそうなことへの気遣いの方が大きかった。そしてヘイリーの妻ジョセリン(愛加あゆ)をトップ娘役がキュートでいじらしく演じ、夫婦仲を尊重した場面が設けられていたことなどもあって、不倫メロドラマ感が断然薄らいでいました。これはとてもよかったと思います。
 要するに女性にとって平凡な、つまり普通の男というものは、この程度に優しくて気が遣えて紳士的で、そう簡単に浮気なんかしない男なんだってことなのです。その変換が素晴らしいなと思いました。
 ドニー(夢乃聖夏)を巡るオフィス周りの台詞がなんだか妙だったことや、きっかけとなるエラのダンスがホールドが甘くてペアダンスのシャドウレッスンに見えずソロダンスにしか見えなかったこと、などは気になりましたが、まあ些細なことと言ってもいいかな。総じて楽しく観ました。プロローグもエンディングも素敵だと思いました。

 まっつの大劇場休演でポールを代役で演じたホタテの上手さには舌を巻きましたが、東京公演での本役・ナギショーのヘタなんだけどとにかくスターオーラはあるのでこういう役にはかえっていいのか、感もすごかったです。
 逆にナギショーのアルバートはまったくもってツラかった。エラに向かって説教(じゃないんだけど)するくだりとか本当に耐えがたかったです。ここはまっつの独壇場で、かつこのアルバートが「若きプリンス」でありエラより年下である、という役作りが効いていて素晴らしかったです。
 私はずっと以前から習いたいと考えていたソシアルダンス(ボールルーム・ダンス、とはなんか恥ずかしくて言えない)を始めて一年半ほどになりますが、週一回のグループレッスンを漫然と受けているだけなので楽しいですがちっとも上達なんかしやしません。そんな私の社交ダンスに関する知識は主に名香智子の傑作少女漫画『パートナー』から得たものなのですが、それによればリーダー(男声舞踊手)の方がテクニック的に難しいので(そしてパートナー、つまり女性舞踊主の方が一般に感性に優れていて完成が早いため)、カップルを組んだときにはリーダーの方がかなり年上、というケースが多いのだそうです。だからエラより年下なのにもかかわらず組んでくれと言われるアルバートはかなり優秀なのでしょうし、最終的にはアルバートがその申し出を受けるのであろうエラもまたかなり優秀な踊り手なのでしょう。より若く体力があるパートナーをアルバートはいくらでも選べるはずだから。それを押してなお踊る喜びを取り戻したエラは魅力的だったのでしょう。
 そういうあたりが見えて、東京公演はとても良かったです。まっつの出番自体は少ないんだけれどね、でも別格二番手ってこういう仕事をしていくべきだとも思いますしね。
 ともみかのルンバステップも慣れが出てきちゃってからはただのおもしろカクカク動きになっちゃっていたように見えたのは残念でしたが、でもみんな意外に不慣れな社交ダンスをちゃんととモノにしていてさすがだなと感心しました。うちの教室はクイックステップは個人レッスンでしか扱わないので、いつかトライしてみたいです。
 そうそう、「教室はダンスホールじゃありません」という台詞は私でもわかりづらく感じました。普通の人に「ダンスホール」と言われてイメージするものがないと思うんですよ、それくらい社交ダンスってマイナーなの。だからこの言葉の何をどうエラが嫌っているのかがさっぱりわからないんですよね。古いタイプのキャバレーを想起できる人も少ないと思いますし。
 ソシアルダンス、社交ダンス、ボールルーム・ダンス、まあ呼び方はなんでもいいんだけれど、現代の欧米人にはできて当然なのかどう習得するのか知りませんが、日本においてはこれはダンス教室で習うもの、というイメージでしょう。そしてそれを競技にして大会で争ったりしているのが競技ダンス。ダンスが踊れる人がダンスを楽しむ場所がダンスホール、それこそ社交目的、ダンス目的の場所。でも多分、これってほとんどの人にはぴんとこないと思うんです。私ですらダンスホールに行ったことがないんですもん。
 まあでも、タカラジェンヌの中にも個人的にハマって習い続けている人もいると聞くし、少しでも裾野が広がったらいいんじゃないかな、と思いました。カップル文化が未成熟な日本社会も少しは変わっていくかもしれません…

 ショー・ビッグモニュメントは作・演出/藤井大介。
 プロローグ、中詰め、中つめね中詰め、中詰め、そして中詰め、やっとフィナーレとパレード、というなんとも疲れる構成でした。まあ楽しいからいいんだけれどね。
 でもあの白衣にしか見えない白コートは二度も出すほどいいお衣装ではないと思う。
 SAGIRIの場面も、もうこのパターン100万回観た…とちょっと思っちゃいましたよね。
 あとプリンセスバッカスにちゃんとライト当ててよ拍手入れたいのに入れづらいじゃん!
 でもダルマの大たゃんが素敵だったから、ともみんのカンカンがハジけていたから許すわ。デュエダンのあゆっちが楽しそうだったからいいわ。100の人文字も私は好きです。あゆっちのエトワールも最高!
 あみちゃんご卒業おめでとうございます。痩せて綺麗になったし歌はいいし得がたい持ち味の女役さんだと思っていたので残念です。でも本人の選択だよね、いろいろ大変だったかもしれないけれど、お幸せにね。
 そしてダイスケ、ホントお休みもらって留学とかしてきた方がいいよ~、磨り減るよ~!






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